木と花
目が覚めると、視界に視界に入るのは、木、木、木。
ん?どこだここ?
周りを見渡すと、木がたくさん。
そりゃそうだ。ほとんど木しか見えないんだから。
その、たくさんの木のうちの一つからこちらを見ている子。
恥ずかしがっているようにも、怖がっているようにも見える。
……あいつ、何やってんだ?
そして、右の方には周りの木とは比べものにならないくらいの大きな木。
でかすぎて、幹しか見えない…。
それもう一つ。
学校のオレの机といす。そして机の横にかかっている鞄。
と、あいつの机、いす、鞄。
なんでこんなものまで…。
とりあえず、ずっとこっちと見られているのも、居心地が悪い。
「雛菊さん。何してるんですか?」
「………。」
「こっち来ませんか?ずっと見られてるのも、居心地悪いので...。」
「……ん…さい…。」
「ん?ごめん。もう一回言ってくれない?」
雛菊は、恐る恐るといった感じでこちらへ近づいてきて、
「ごめんなさい。」
と、小さな声で言った。
「えっと…何が?…何が『ごめんなさい』?」
「……えっと…その……ずっと見てて……。」
「あぁ。うん、いいよ。」
…不思議なやつだ。
そして、少しの沈黙。
その沈黙を彼女は会話の終了を受け取ったのか、さっきいた木まで、のそのそと戻っていく。
「あの……なんで戻るんですか?」
彼女は返事をするためにUターンをして、こっちに戻ってきた。
「…えっと……な、なんか…き、緊張…する…から……。」
「ふうん。」
「………。」
「………。」
「…やっぱ………こっち………にいく……。」
そういって彼女は、近くに置いてある自分の机の陰に隠れた。