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腐った世界で異世界生活(ライフ)  作者: たんぽぽ
閑話章 彼が彼になる前の話。
154/154

怖くて震えて助けてもらいたい話。


真っ暗な中に闇が蔓延る、冷たくて寒くて怖い所。

嘗ての私は光なんて無いその場所で、意味もなく『ごめんなさい』と呟き続けていたのを覚えている。


暗い部屋では時折、カラフルな景色が見える事があったんだ。

それを言うと、目の前に立つ大きくて白い人は、それを描けって――

怖い、怖い、怖い。……思い出せない。


思い出せない。何も分からない。

自分の名前が分からない。自分の事が分からない。

昔、誰かが自分を呼び、笑顔を向けてくる。懐かしい様な、もう会えないような。……ねぇ、この人達は誰?分からないよ。思い出せない。



――世界が赤くなったと思ったら、バチッて火花が散って。



暗い部屋に居たはずの私は、気付けば獣になっていた。



私、捨てられたの?体も変になっちゃった。

ごめんなさい、ごめんなさい。

ねぇお願い、許して。今後はちゃんと描くから!言う事聞くから。

ねぇ、捨てないで。元に戻して。誰か助けて!


謝れない。声が出ない。

『ごめんなさい』は咆哮になる。


怖くて怖くて怖くて怖くて怖くて……。




次第に変な体にも慣れた。

四つの足で歩き、長い尻尾で物を掴み、長い首で周囲を警戒する。

未だに他の獣に威嚇されるのが怖いんだ。

だから他の生物がいない事を確認しながらヒッソリと草を食み、住み着いた洞窟で息を潜めるようにして眠る毎日。


そんなある時、久しぶりにあの、カラフルな景色が見えたんだ。


いつもはどんよりとした水面を晒す湖が、珍しくキラキラと煌めく、そんなとある日。

獣である私が、村を荒していた。

崩れる建物、積み上がる瓦礫。

怒った人々、怯えた人々。

その後、村を去った私を追い掛けて来た人がいたんだ、青い人。



私は知った。

この人なら、私を助けてくれる。

この人に、会わなきゃいけない。

私は、そんな“未来を見た”んだ。



そして今日。

いつもは淀んだ湖が、珍しくキラキラ煌めいていたんだ。

それを見て、私はハッキリと確信した。今日が、あの時見た未来だと。



私は意を決して村に向かう。

……怖かった。嫌だった。行きたくなかった。

誰かを傷付けたくはない。


でも。


……行かなきゃ。やらなくちゃ。

じゃないと、あの人に見つけてもらえない。


私は、救われたい。

お願い、私を助けて!




「うわぁ!!化け物だ!」


村に向かえば、そんな悲鳴と共にみんなが逃げた。


ねぇ、なんで逃げるの?

私、本当はみんなと同じ『人間』なんだよ?


……嫌だよ、逃げないでよ。

待って、待って!置いていかないで?

私を一人にしないでよ!



――哀しくなって。苦しくなって。



『グルァァァアア!!』


(嫌だ、一人にしないでよぅ!!)


獣が吠える。

『私』が塗り潰されていく。



『グルァァァアア!!』


(うふふふふふふふ……。)


壊して、壊して、壊して、壊して!!

もっと、もっと、グチャグチャに。

もっと、もっと、メチャメチャに!


――理性を失った獣は止まらない。


知らない、知らない!

だって知らない!!

私を置いてった人達がどうなろうと知らない!

私を独りぼっちにした人達がどうなろうと知らない!

天罰だよ!

私は知らない!何も知らないっ!

全部、アンタらが悪いんだぁ!




「ヒィィィ!お、お助けを……。」


私を見上げる怯えた瞳。情けない悲鳴。恐怖の余り縮めた身体。


ふと、我に返る。

その弱々しい姿に、昔の自分が重なったんだ。


(……なさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……。)


背筋が凍る。

目の前が真っ暗になる。


『グルァァァアア!!』


(ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。)


……逃げた。私は逃げた。

怖いよ。怖い。

分かんない。

知らないうちに傷付けちゃった。壊しちゃった。

どうしよう、どうしよう。


ひたすら逃げて、逃げて。暴れて。




『―――よ。』


どのくらい時間が経ったのか。

ふと、優しい声が聞こえたんだ。

暖かくって、フワフワして、意識がトロトロになる。


エヘヘ。私の周りで、皆が笑ってる。私の名前を呼んでいる。

何故だか、とっても懐かしい。

幸せ。ふふふっ。


―――――

―――






『さて、始めようか。イシアさん。』


冷たい水を掛けられた様に、シャッキリと意識が覚醒した。

目の前には、あの夢の、青い人。


休止。

活動報告、2019年4月10日投稿記事参照。

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