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蘇芳  作者: 松矢ミシロ
3/4

椿

自宅から最寄りの駅まで歩いて10分。

駅から電車で30分、そこから巡回バスで15分。

これが、俺の母校…私立天戸学園までの所要時間。

中・高時代は、毎日毎日この通学時間を辟易しながら通ったものだったが、卒業して数年経って改めてこの場所に立ってみると、思ったよりも通学時間を不快に感じていない自分がいた。

俺が通学時間に辟易しながらも、中学からこの学校を選んだのには理由がある。

それは、新設校である事と新設校であるが故に生徒数が圧倒的に少ない事、そして学園の教育方針が笑えた為である。

何故、生徒数が少ない新設校を選んだのかは後々語るとして、入学までにはそれなりに大変な事もあった。(主に、叔父とか叔父とか叔父とか)



「颯、ほんっとうにこの学校に通うのかあ?お前の友達は全員神中に行くんだろう?」


今は亡き叔父が、当時の俺を心配して、何度も何度も同小の奴らと同じ中学に行ってはどうかと言ってきたが、俺は


「いい。ここに行く。ここがいい」


の一点張り。

それでも叔父は、友達の大切さや神中のいい所を色々調べてきては、俺を説得しようとした。

でも、俺はガンとして折れず、ストライキを起こして自室に引きこもり出したものだから、ついには叔父も諦めて(それでもかなり心配されたが)俺は晴れて天戸学園に入学を果たした。

入学してからの俺は、それなりに楽しく学生生活を満喫した。

天戸学園は本当に変わった学校で、不登校生徒や保健室登校の学生なども、何の躊躇もなく受け入れる様な学校だった。

だからか、生徒達も癖のある奴や変な奴らがうようよしていて、小さい頃から『人を信用出来ない、心に壁を作ってしまう』厄介な性格の俺でも、浮きもせず目立つ事すらなく、特に人とコミュニケーションを取らずにいても感じ悪いとか言われてハブにされる事もなく、穏やかに中・高の学生生活を終える事が出来たのである。

それもこれも、最終的に俺が天戸学園に入る事を許してくれた叔父のおかげだ。


「あの…教育実習の方ですか?」


感慨に耽っていると、不意に肩をトントンと叩かれた。

振り向くと、高等部の制服を着た茶髪にピアスの生徒が、ニコニコ笑いながらそこに立っていた。

明らかに校則違反だと思うのだが、天戸の校則なんてあってないようなものだ。

先生達も、


「あまり派手にすんなよー」


くらいの注意しかしないんだろう。(なんせ、自分の現役時代なんか、パーマやドレッドがいたくらいだ)


「違うんですか?」


不躾にその生徒をジロジロと見ていると、生徒はキョトンとした顔をして問うてきた。


「いいえ、違いませんよ。私、今日から教育実習で此方にお世話になる、鞍堂と言います」


第一印象は大切だろう。

なんせ三ヶ月間お世話になる学園だ。

出来るだけ目一杯の愛想笑いを浮かべつつ、その生徒に答えると、生徒は人好きのする笑顔でにぱりと笑った。


「鞍堂センセ!オレ、高等部二年の紫雲椿!ムー君か、ツバキって呼んでね!」


初対面であるはずにもかかわらず、やけになれなれし…親しげに、その生徒…紫雲椿は俺の腕にまとわりついた。

ん?何か、懐かれてる…?


そして、これが紫雲椿との出会いであり、始まりでもあった。


タイトルが椿の割には、本人は最後にちょろりとしか出ていません。

次の更新も、早目にできるといいな。

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