第8話 魔法の基礎練習をします
町を見下ろす位置にあるいつもの丘に私とヴァーテルはいました。
「さて、今日は基本的な魔法を教える…。」
「基本的な魔法?」
「あぁ…時空魔術は神話級魔法だからな…それだけ難易度が高い…だから、下級魔法…10段階で言えばC-の一番簡単な魔法の習得とこの前やった時空魔術のイメージトレーニングをしていく…。」
10段階は、神話級、上級、中級、下級の4段階をより詳しく分けたもので、最高ランクはSSSで、最低ランクはC-だそうです。
なお、時空魔術は上から2番目のSSだとの事です。
「まずは、魔法の基礎の基礎、基本魔術の簡易物体移動だ…。」
「基本魔術?」
「あぁ…魔法の一番基礎の部分をまとめて基本魔術として分類されていてな…C-に分類されるのは基本魔術と応用魔術の二つのみだ…通常、一から魔法を学ぶときには、自分の魔法属性にあったイメージトレーニングをしながらこの基礎魔術を習得するんだ…それが終わったら自分のレベルにあった魔法を少しずつ習得していくものだ…。」
なるほど…時空魔術が使えるようになるまではまだまだ道のりは長そうです…
「まぁごちゃごちゃと説明するより見せた方が早いだろう…。」
そう言ってヴァーテルは水玉模様の小さな箱を少し離れた場所に置きました。
「とりあえずいったんやってみるから箱を見ていろ…。」
私は、ヴァーテルに言われた通りに箱を見ました。
「『基本魔術 簡易物体移動』」
ヴァーテルがそう言った数秒後、箱が少し上に上がり左の方に数十センチほど動きました。
「すごい…。」
私が思わず言葉を漏らしました。
「こんなもんで驚かれると逆に困るんだが…。」
そう言うヴァーテルの顔はまんざらでもないように見えます。
「これも大切なのはイメージだ…全ての魔法に共通することなんだが、魔法を発動するには魔法属性、魔法の名前を言ってからその魔法の発動をイメージする…まぁ基本魔術はほとんどが古代魔法だから、あまり色濃くイメージしなくても心の中で上とか右とか前とか、考えながらやるんだ…あと、基本魔術は大した魔法じゃないから、物を動かせる範囲は、その物を中心に半径1m以内だ…。」
私は、うなずいてから先ほどヴァーテルが立ってあたりまでやってくる。
「『基本魔術 簡易物体移動』」
えっと…上に動かして、それから左に…あれ?
ヴァーテルに言われた通りにしてみるのだが、箱は動く気配を見せない。
「おかしいな…。」
「まぁ最初からうまくいくはずないからな…練習あるのみだ。」
ヴァーテルが私の肩に手を置いて励ましてくれました。
「よし! もう一度挑戦だ!」
私は、うなづいてもう一度、箱を見据える。
「『基本魔術 簡易物体移動』」
私の特訓は日が暮れるまで続きました。
私は、宿に着くなり下の食堂で夕食を食べ始めました。
「…そう言えば、いつごろまでこの町にいるつもりなの?」
この町にずいぶんと長く滞在しているので気になって聞いてみました。
「そうだな…まぁお前がある程度…基本魔術の一つや二つ使えるようになったらこの町を発とうと思っている…多少魔法が使えないといろいろと大変だからな…。」
ヴァーテルの言う通りかもしれません…
この世界は、科学の代わりに魔法が大きく発達しています…
人々は、普段から下級魔法を使って生活しているそうです。
「まぁ無理しない程度にゆっくりとな…明日は、今日の続きをやって、明後日は時空魔術のイメージトレーニングをやるぞ。」
そう言い残してヴァーテルは部屋に戻って行った。
私は、部屋に戻るとさっそくヴァーテルにもらった本を開く。
『この本を手に取っていただきありがとうございます。この本では、時空魔術を基礎から学んで行くことを目的としています。なお、時空魔術はSSランクの神話級魔術です。この本を読む前に、ご自分の魔法属性をお調べになったうえで読んでください。 ルミナ』
「時空魔術の基本」と言うタイトルのこの本はこのような書き出しで始まっていた。
その内容は、私の常識を覆すようなもので、私は夢中で本をめくっていた。
読んでいただきありがとうございます。
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