第6話 イメージトレーニングは大切なようです
朝日が窓から入ってくる。
「朝か…。」
目が覚めてもやっぱり目の前にあるのは石造りの壁のみである。
「…久しぶりに朝日で目覚めた…。」
この世界に飛ばされて早2週間…よく考えてみれば晴れの日などは2日しかなかった。
この町に来て初めての朝なのですが、さっそく今日から魔法の練習をするとかで1ヶ月はこの町に滞在することになりそうです…
「ヴァーテルを起こしに行かなきゃ…。」
ヴァーテルが来ないところを見るとヴァーテルはまだ起きていない可能性が高い。
「ヴァーテル! 起きてますか?」
私は、ヴァーテルの部屋の扉を思い切りたたく。
「起きてる…とりあえず下に行っててくれ…。」
「それじゃあ下に行ってますよ!」
そう答えてから私は急な階段を下りて行くのでした。
私が、下で朝食をいただいているとヴァーテルが下りてきました。
「おはよう…。」
「あぁ…。」
私はさわやかにあいさつしたつもりですが、ヴァーテルは疲れているのか目の下に隈を作っていました。
「ヴァーテル…ずいぶんお疲れのようですね?」
「あぁ…時空魔術となるとかなりややこしいからな…。」
なるほど…そう言う事ですか…
「ところで時間旅行者の力を確実にするにはどうするのですか?」
「そうだな…自分の思った時間と場所に行けるようになれば完璧なんだが…まずはイメージトレーニングだな…。」
イメージトレーニング…やっぱりどのような世界においててもそう言うものは大切なんでしょうか?
「イメージトレーニングですか…。」
「あぁ…悪いけど俺は少し用事があるから昨日の丘の上で自分が別の次元に行く事をイメージしていてくれ…。」
そう言うとヴァーテルは皿の上のパンを持って出て行った。
「…どうしたのかしら?」
ヴァーテルがあわただしく出て行くのに対して少々疑問があったのですが、とりあえずヴァーテルの行った通りの場所でイメージトレーニングをするために昨日の丘へ向かいました。
「イメージか…。」
ヴァーテルは自分が別次元の行くことをイメージしろと言っていましたが…別次元など…
「あっ」
あったじゃん…私から見てここは異世界だけど、逆に言えば私がもともといた世界はこちらからいえば異世界になる…と言う事は…。
「私が家に帰るイメージをすればいいんだ!」
私は、家に帰るイメージをすることにした…
目をつぶって自分の家をイメージする。
「ただいま!」
私が勢いよく扉を開けると
「おかえり!」
と母が笑顔で出迎える。
「今日ね! 新しいお友達ができたの!」
「そうなの? どんな子?」
「えっとねぇ…。」
幼き日の私が母と会話を交わす。
誰かに体をゆすられてゆっくりと瞼を開ける。
どうやらイメージトレーニングをしようとしているうちに寝ていたようだ…。
「はぁ…まさかこんなところで寝てるとは…時空魔術について説明する。」
そう言うとヴァーテルはその場に座った。
「いいか…よく聞け…まずは時空魔術の基礎からだ…ただ、俺はあまりそう言うものに詳しくないから文献から得た情報のみだが…。」
そう前置きしてヴァーテルは話し始める。
「まず、時空魔術の代表的なものは時間旅行だ。古来魔法である時渡りに空間を移動する瞬間移動組み合わせたもので、これを習得したものを時間旅行者と言う…ここまでは昨日言ったはずだ…。」
昨日行っていたことと若干違う気がしますが、私は、とりあえず首を縦に振る。
「まぁ時間旅行以外にも時渡りや瞬間移動も使えるらしいが、メインはそっちだ…俺の調べた限りでは、時空魔術に分類されているのは、時間旅行だけだ…ただし…どうやら時間旅行には大きな弱点があるようでな…。」
「弱点?」
それはぜひとも聞いておきたい情報です。
メリットもそうですけれどもデメリットがあるのならばしっかり知っておかねばならないからです。
「時間旅行の弱点…と言うか欠点だな…それは…」
その時、風が町の方へ吹いて長い草を揺らした。
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