第5話 どうやら私にも魔法が使えるようです
私とヴァーテルは昼間にはぐれてしまったあたりまで来ていました。
「宿ってどこに取ったの?」
あたりはすっかりと暗くなりヴァーテルが持っているロウソクの灯りと左右の建物から漏れる光のみが照らしている道をヴァーテルにくっついて歩いているといった状況です。
「ここだ。」
ヴァーテルはある建物の前に立ち止まった。
そこは、ちょうど昼間に私がヴァーテルを見失った場所から数メートルしか離れていなかったのです…
「なるほど…ヴァーテルが宿に入ったから見失ったのね…。」
私は、ようやくあの時の状況がどうなっていたのか理解することができた。
逆に素直に宿に入れたとしてもやることがなかった気もしますが…
宿の入り口を入ってすぐにある階段を上った先にある部屋が私が泊まる部屋であった。
部屋の中はいたってシンプルで石造りの壁にぽっかりと窓が開いていて左側の壁にベットと小さな机…その上に申し訳程度に花瓶とロウソクが置いてある。
ここまでずっと寒かったからかフードをかぶっていたヴァーテルの素顔を拝むことになるのです…
どことなく外国の貴族を思わせるような顔立ちをしていている彼は私の中ではイケメンの部類に入りました。
「さてと…まずは、お前の魔法属性を調べさせてもらう…。」
「魔法属性?」
私が、彼の顔を見ていると、ヴァーテルは、カバンの中から理科の実験などで使うフラスコのようなものを取り出しました。
「えっと…なんですか? それ…。」
「さっきも言ったがこれが魔法属性を調べる道具だ…。」
「それって…どう見てもフラス…」
「フラスコじゃない!」
いきなり言われても…やはり、どう見てもフラスコにしか見えません…それに、フラスコじゃなかったら正式名称はなんでなんでしょうか?
「私に魔法が使えるの?」
そっちの方が疑問でした。
これまで魔法なんて使ったことありませんし…
「もちろんだ…この世界の人間は、何かしら魔法が使える…だが、練習すればすべての魔法が使えるというわけではない…そこで、魔法属性を調べるのがこの道具だ…。」
そもそも、異世界から来た私にその常識が通用するのでしょうか…
まぁ深くは考えずにやるだけやってみましょう…
「これの使い方わかるか?」
わかるわけないでしょうが…
私は、首を横に振りました。
「そうだな…じゃあ俺が使って見せよう…。」
そう言うとヴァーテルはフラスコを持って立ち上がる。
「まずは、このフラスコの口のところを持つ」
今、完全にフラスコって言いましたね…
「5秒間待てば結果が出るんだ…。」
そう言っている間にもなんだかフラスコが光りだした。
「こうして中に現れるもので魔法属性がわかるんだ。」
光が消えたフラスコの中には水がなみなみと入っていました。
「なるほど…つまりはその中に入っているもので調べるわけですか…。」
「そう言う事だ…岩なら岩、風なら風、火なら火、草なら草…一部例外もあるがな…。」
「例外?」
「魔法属性の組み合わせは何万通りとあるからな…俺みたいに水単体の奴もいれば二つ以上の属性が組み合わさっている奴もいるからな…。」
ヴァーテルがさっさとやれと言わんばかりに私にフラスコを渡す。
私は、意を決してフラスコの口に触れました。
これで、妙なものが出なければいいのですが…
フラスコがまばゆいばかりに光り始める。
5秒ほどたって目を開けてみると…
中には時計が入っていたのですが、その時計がフラスコの中で見えたり消えたりを繰り返しています。
「ほう…時間旅行者か…。」
「時間旅行者?」
「あぁ…古代魔法の時渡りと近代魔法の瞬間移動を組み合わせた比較的新しい魔法で魔法属性で言うと時空魔術…すなわち時間と空間の間を好きなように行き来できるわけだ…。」
どうやら私は、とんでもない魔法属性を持っていたようです…。
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