第3話 ようやく陸地が見えてきました
漂流8日目…そろそろ陸地へ着くもの絶望的と考え始めたその矢先にその奇跡は訪れたのです。
「陸地だ! 陸がみえる!」
私は、ヴァーテルの声で目が覚めました。
「陸地!? ほんと?」
私は、急いでヴァーテルの指差す方向を見つめます。
すると、遠くの方にうっすらと島影のようなものが見えました。
「ほんとに陸地だ…。」
私は思わず言葉を漏らしました。
「やっとだ…やっと…旅の続きができる…。」
日記に書いていませんでしたが、ヴァーテルは旅をしているそうです。
何でも、一人で旅をしていたところ足元の氷が割れて今に至るとかなんとか…
「お前はこれからどうするんだ?」
感慨にふけっていたヴァーテルが私の方を向いて尋ねました。
そう言えば陸地につくかどうか不安でそれどころじゃなかった気がします…
「異世界から来て当てがないだろう?」
私は首を縦に振りました。
「ものは提案なのだが…元の世界に帰る方法が見つかるまででもいいから一緒に旅をしないか?」
「えっ?」
突然の提案だったので私はおどろきました。
なにかの冗談かとも思ったのですが、ヴァーテルの顔は真顔だから、真剣に言っているのでしょう…
「その…ヴァーテルは…何で旅をしているの?」
私は、それが最大の疑問でした。
ヴァーテルが旅をしていることや魔法が使えることは聞いていましたが、こればっかりは聞けていなかったのです。
「そうだな…誘うからには話さなきゃいけないか…あれは…今から何年も前…俺がまだ子供だった頃の話だ…。」
ヴァーテルは静かに話し始めた。
「もう10年も前の事だ…俺は、いつものように近所の友達と遊んでいたんだが、その時、倒れている小さな女の子を見つけてな…なんというかこのあたりでは、全く見たことがない子だったんだがとにかくその子を家に連れて行ったんだ…。」
10年前…
ヴァーテルの家にあるベットで小さな少女が寝息を立てている。
「このあたりじゃ見かけない顔だけど…どこから来たのかしら…。」
黒色の髪の毛をした少女を見てヴァーテルの母が首をかしげる。
「さぁ…僕にもさっぱり…。」
それは、そうであろう。
友達とかくれんぼをしようとしていたところで偶然発見したのだ。
少女がどこから来たかなど知るはずもない。
「まぁおとなしく寝かしてあげましょう…。」
そう言ってヴァーテルの母は、部屋から出て行った。
そして、俺も女の子の顔をもう一度見てから部屋を出て行った。
「それからしばらく女の子は、家に住んでいたんだけど、しばらくしたら女の子がいなくなっていたんだ…なんだか、不思議な雰囲気のある子だった…どこに行っちゃったのかどうしても気になってね…その子を探す旅をしているんだよ…。」
「そうなんだ…。」
10年前の女の子を探すたびか…でも、これってもしかしたら…
「もしかして、それがヴァーテルの初恋だったりするの?」
「そっそんなわけない! ただ、どこに行って心配なだけで!」
ヴァーテルったら顔を真っ赤にして必死になって否定しているのだが、これまでとあからさまに態度が違うので図星なのだろう。
「何? ヴァーテル図星なの?」
私は、あえて聞くことにしました。
「違う! 断じて違う!」
ヴァーテルは必死に否定するのですが、その態度を見る限り図星だったのでしょう…。
「とにかく! 陸が見えたからと言って油断は禁物だぞ!」
そう言ってヴァーテルは流氷の向こうの方に…あっ海に落ちた。
それから何時間も経って私とヴァーテルはたまたま近くを通りかかった船に拾われて小さな港町についたのです…
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