第1話 気づいたら流されていました
ここは、ひだまり公園。
公園の真ん中にちょっとした広場があり、その周りに滑り台やシーソー、鉄棒、砂場と言った物があるどこにでもあるようなごく普通の公園である。
この公園の近くに住んでいる私、北上牡丹がいつものように公園に行くと見慣れない男性がいたのですが、横に置いてある自転車と紙芝居を見てその男性がどのような職業であるか大体予想がつきました。
「さーて今から紙芝居を始めるよ!」
「はーい!」
容姿に似合わぬ明るい声で男性が告げると前に座っていた小学生と中学生1名が元気よく手をあげていて、その中学生の幼馴染が呆れた表情で頭に手を当てている。
おそらく少女はあまりにも子供っぽすぎる幼馴染の態度に対してではなくなぜ自分が紙芝居を…なんて思っているのであろう…と言うかそうあってほしい。
「それじゃあ始めるとタイトルは『ひだまりの国』…始まり始まり…。」
男性がそう告げるとあたりが突然まぶしい光に包まれた。
「…ですか? 起きてください! こんなところで寝て死ぬつもりですか?」
男性の声が入ってくる。
どうやら声からして知り合いでもさっきの男性でもないようだ…
「…いったいどうなって…。」
私はゆっくりと目を開ける。
すると、視界に入ってきたのは自分の顔を覗き込んでいる男の顔なのだが、男の人は、フードを頭の上までかぶっており顔がよく見えない、だが、フードの端から見えている金色の髪と宝石のエメラルドを思わせるような美しい瞳からして日本人ではなさそうだ。
しかし、そんなことはどうでもよかった。
視界が晴れてきたころには自分がどんな状況下にいたのか理解するに至ったのである。
「なんなのよこれー!」
理由はわからないが私は、なぜか漂流している流氷の上にいた。
流氷が流れているだけあって極寒の地にいるのであろうか…それ以前になぜ流氷の上にいるのだろうか? 北海道には毎年流氷が流れ着くらしいのでせめてそこのあたりであってほしい。
それ以前に流氷って乗るものではないと思う…。
「あの…ここはどこですか?」
「何を寝ぼけたことを言っている…まぁ偶然迷い込んだのかもしれんし教えてやる…ここは、流氷の上だ。」
そんなことは言われなくてもわかっています…
それにしてもワンピースで流氷の上って…しかも寝てたって…確かに死んでもおかしくない状況である…
私は、自分の体に目線を落とす。
だが、彼女の視界に入ってきたのは白色のワンピースではなく見慣れないデザインの防寒具に代わっていた。
どうりで寒くないわけだ…まぁ流氷が流れているようところでワンピースなど着てきたらとっくの昔に凍死しているのだろうが…
「あの…気が付いたらここにいて…状況がよくつかめないんですが…。」
先ほど出会ったばかりの知らない人に聞くのもどうかと思ったのですが、他に人がいるか探すのはとても無意味に思えるため思い切って聞いてみました。
「はぁ…本当に何も知らねーんだな…まぁ生きて陸地に付けたらじっくりと状況を説明してやるよ…俺たちが乗っている氷もどんどん溶けてるしな…。」
男の人が流氷の端の方に目をやる。
男性の視線の先にはこの流氷が割れたかけらとみられる氷がいくつも浮かんでいました。
「さっきまであっちにいたんだが、ひびが入った時に向こう側から飛び移って偶然お前を見つけたんだ…。」
「えっと…一応お尋ねしますが陸地まで生きてたどり着く可能性は?」
「そうだな…神のみぞ知るってところかな…。」
つまりは神頼みをするぐらい絶望的と言うことなのだろうか…
男性の声が聞こえてから数秒後、私は、はこれまでの人生で一番のピンチに直面してしまっていることに気づいてしまったのだ。
「どうしよう…。」
私の声はどこまでも続く海に吸い込まれていった。
(これから私はどうなるのだろうか…。)
いつの間にか流氷の上で知らない男性と二人きりと言う状況で私はただただ不安のみを感じていました…。
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