第1話*トイレの加藤さん*
それは中2の二学期後半。
俺達の世界は、一瞬にして、一変した。
感想は、超最高。
「……なぁ、夏津倭」
「何、秋嘉。」
「健全な中学生男子二人が、放課後部活もしねぇで図書室整理ってどうよ?」
「超だるい。マジやってらんねぇし。帰りてぇ。」
夏津倭と秋嘉。
二人は怨静中学の2年生。
縁起の悪い校名の通り、怪奇現象が起こりまくる学校として有名だ。
三階トイレで小花さんがリリアンしてるとか二階の西階段の隣の部屋には銀司郎さんが居座っているとかあり得ないような現実的な噂が盛りだくさんある。
ちなみに、開かずのトイレとゆう、怪奇現象もあった。何故かいつも閉まっている3階の2番目男子トイレ。しかも、たまに、うめき声が聞こえるのだ。嗚呼、恐ろしい。
その怪奇トイレの謎を解くため、夏津倭と秋嘉は
例のトイレに向かい…
「マジで、幽霊いんのかな?」
「なに?夏津倭?ビビってる?」
「いやいや、ビビってねぇし」
「でもさ〜足、震えてる」
「あ?これ?貧乏揺すりだよ」
どんな貧乏揺すりなのだろうか?
秋嘉は悪魔のような笑顔で、2番目のトイレを蹴った。
「ぬ、ぬおぉぉう」
やはり、うめき声は聞こえた。
もう夏津倭は死にそうだ。自称貧乏揺すりの速さも、マッハになってるよ。
「開けるぞ?」
秋嘉は、再び強い蹴りで、トイレのドアを蹴った。
そこにいたのは………
「ぬおぉぉう!ぬふぉっ!」
個室全体に漂う悪臭。あ、夏津倭いま、気ぃ失いかけた。
「………用務の……加藤さん?なにしてんすか?トイレで……」
秋嘉も、悪臭によって生と死の間をさ迷っている。
怪奇トイレの謎の正体は、用務の加藤さんであった。
「いや、ちょっとね。最近食べた刺し身に当たってね。トイレがね、たいへ……ぬおぉぉぉぉぉ!大腸がぁぁぁ!!悪玉菌があぁあぁあぁぁ!!ふんばれ俺ぇぇ!!」
「死ね」
秋嘉は頭に血がのぼり、加藤の腹を思いきり殴った。いや、あれは、一週間分の排出量になると思うよ? あんまりリアルにはなすと、ほら、食事できないじゃん。 ってか、こんな回想してる場合ではない。早く本題に入ろう。
ともかく、そんな悪い噂のせいでこの学校は地元でも自慢の恐怖スポットとなっている。
不意に其を思い出した夏津倭が震えだした。
「…夏津倭、顔青いよ。」
「うっさい。」
そして、それのお陰で良くも悪くもやんちゃ盛りの12才男子には人気が高い。
稀に女子も含み。
そして、そんな怨静中学校のモットーは『見ないふり、気付かないふり、知らないふり。干渉しないで平和な生活。』だ。
意味深過ぎて、誰もが一度は息を飲む。
宮藤 秋嘉もそんな好奇心に駆られて入学してきた一人だった。
秋嘉は元々地元人。オカルト、グロ系大好きで、結構自己中心的なB型。
入学したときから夏津倭にベッタリでよく連れ回す。
何でかって…面白いから。
と、色んな意味で便利だから。
夏津倭は春休みに親のいきなりの転勤で、全力で嫌がっているのも聞いて貰えず不幸にも学校から100mしか離れていない家に引っ越してしまった霊感少年。
『ほら、夏津倭。学校が見えてきたわよ?』
『…嫌、絶対嫌だ!!!!校門のとこに変な女立ってるじゃん!!!何かこっち見て南海のしずちゃん並にキモい顔で笑ってるじゃん!!!』
『…よしよし、大丈夫だよ父さんにも見えてるから。』
『いい?夏っちゃん。どんなに嫌な所でも…』
『『住めば都っていうでしょ?』だろ?』
『や、………嫌だァあぁ嗚呼あぁぁ!!!!!!』
こんな感じで。
何時もはそれなりの事には冷静に対応できるのに、幽霊には強くない毒舌家。
霊感があることがバレて秋嘉に捕まった不幸人。
そんな二人が図書室で本整理なんてしている理由。
…教頭のズラを放送で全校にバラし、証拠写真をばらまいたからだ。
部活停止で一週間学校の雑用をさせられている。
それにしても、あの教頭のキレた顔はウケた。最高だよあれ。シャメにとっといてよかった。