第22話:『無』
最後の方で少し変わった表現に挑戦してみました…最後の言葉には様々な意味を含めています…
ズプ…ギャァ!
深々と刺さった刀を抜き振り返りながら刀を横に振る。
ブシュゥ!と赤ではなく黒に近い血が舞う…
ハァハァハァ…
と俺は息を切らしていた。
俺は力が使えないと分かってから、まず恵を逃がす事を優先させた。
理由は守り通せる自信が今はないからだ。
それに一人では限界がある為に汐紫と静に救援を頼む為だ。
その恵はさっきなんとか逃がし今は俺がグールを相手にしている。
とは言え…倒しても倒しても数が減る気が全くしない…
「これは…ハァハァ…グールだけじゃねぇな…影も混じってやがる…」
影とは言わば吸血鬼の分身…
影なので力は本体よりかなり劣るがカスほどの力で作ればほぼ無限に作る事が出来る。
「ったく…カスがグールと同じとは…ハァハァ…かなりの力だな…」
刀を前へ出しヒトガタに突き刺す。
そして、両手で刀を持ちそのヒトガタを蹴り刀を勢いよく抜き、そのまま刀を横に向け思いっきり刀を振る。
すると、ヒトガタの胴体が綺麗に二つに分かれ地面に落ちた。
そして、壊れたヒトガタはサラサラと砂に還っていった…
いくら壊しても砂に還る為に山になることもない…
そして、減る気配のないヒトガタ…
まるで俺が一人で空回りしている様な気分だった…
ハァハァハァハァ…
体が重い…
そう思ってしまった瞬間、グールが襲いかかってきた…
俺は『しまっ…!』と途中で壁まで一気に吹き飛ばされた。
ドォン…!
と爆発音に近い音を響かせ俺は全身を強く打ってしまい、一気に口に血が逆流してきた。
「うぐ…ゲホ…」
と俺は血を吐き出してしまい…
そして、体から力が抜けて行くのが分かった…
そんな俺の周りにグール達が集まってくる…俺はゆっくりと目を閉じ死を覚悟した。
その時、頭の中で声が聞こえた。
『全く、駄目弟子ね…
貴方にそんな無様な戦い方は教えてないわよ…
ほら、目を覚まして…
まだ、目の前に獲物がいるでしょう?』
その言葉を聞いた瞬間、昔の自分を思い出した。
心を無くし…
情を無くし…
潰し…
壊し…
殺し…
消せ…
その言葉が頭の中を巡っていく…
つぶせコワセ殺せケセ…
(止めろ!!)
ツブセ壊せコロセ消せ…
(止めろ!起こすな!)
俺は必死に反発してみるが意識は俺を徐々に蝕み闇に落ちて…堕ちていく…
そして…
潰
壊せ消
殺
四つの言葉が頭の中で完全に混ざり合い…
「ヤメロォぉォぉォォォォ!!」
俺は…
オ
チ
タ