第十八話:『暗闇』
俺は依頼を済ませた日は何故かいつも寝る事ができなかった…
それは罪悪感からなのか、それともグロテスクなあの光景が残っているからなのかは分からない…
俺はベッドとタンスしかない質素な部屋の隅で壁に持たれながら足を片方伸ばし、もう片方を腕で抱き抱えていた…
部屋は夜更けという事もあり暗闇に包まれている。暗い部屋…
何もない部屋…
そして今の自分…
空っぽの…自分…
昔と変わらない…
言われた事をただ忠実に行う人形…
その為に感情なんて物はなかった…
小さい頃から殺しの技術を教え込まれてきた…
今でこそ相談所で働いているが昔は人間狩りをしていた…
人間狩り…悪事を尽くし魂が汚れ黒くなった者を運命という名の絶対存在に逆らい人間を裏で狩る事…
それは神に逆らう行為…
しかし、それを招くは人の業…
人の業は深く醜い…
人と人は繋がって生きている…
しかし、その繋がりを断つのも人…
子は親を裏切り、親は子を裏切る時代…
幸せで笑い合う家庭…
しかし、壁一枚を隔て隣では親の愛を知らず虐待に耐える子供がいても気がつかない…
昔は人と人の繋がりが多く壁は破る為にあった…
しかし、現代では約10cmの壁があれば何が起きているか分からない…
厚く…破れない人が作りし壁…
そして業は積もり人を殺す…
俺は狩る度に人は何故こんなにも業が深いのか分からなかった…
汚れた血で染まりった自分の手…
落ちる事ない赤い…紅い血…
そして、ふと目を開くと自分の手が血まみれに見えた…
ピチャン…
ピチャン…
と血が滴り落ちる音がする…
気が付けば周りには死体が転がり地面は血で赤く染まる…
俺は怖くなりその場から走り出した…
走っても走っても周りは赤い…
紅い…
アカイ…
いつしか俺は幼くなっておりただ泣いていた…
暗闇の中、血だらけの地面…
ただ泣くしか出来ない自分…
その時、どこからか白い手が現れ俺を抱きしめてくれた…
「もう大丈夫だよ」
その声を聞き俺はとても安心した…
そして…暗闇から光が溢れだした…
「起きて…もう朝だよ…」
と声がした。
いつの間にか眠っていたらしく目を開くとそこには恵がいた。
朝日が差し込み恵が少しだけ綺麗に見えた。
「おはよう。
今日もいい天気だよ」
と屈託のない笑顔で言った…
俺も起き上がり
「あぁ…そうだな」
と表情を変えずに返事を返した。