追放シーンはループする ~タイムリープに目覚めた僕は、何が何でもパーティにしがみつきます~
指定された時間ピッタリに待ち合わせの酒場へと入ると、僕以外の三人はもう揃っていた。
「ごめん、レオ。遅れちゃったかな?」
「いやいい。俺たちが早く来ただけだ」
応えたのは僕らパーティのリーダーで、勇者のレオンハルト。幼なじみの僕は、昔からの癖で今でもレオって呼んでる。
レオは眉間にシワを寄せている。なぜかわからないけど、ここ最近ずっと機嫌が悪いみたいなんだ。
「ところで今日は何の集まりなの? 次のクエストについてかい?」
「……」
レオはなぜか黙ってしまった。
「ほらぁ、ハッキリ言ってあげなさいよ」
横から口を出してきたのが、女戦士のヴァレリア。黒魔術士であまり身体が強くない僕を、時々からかってきたりする。正直言ってちょっと苦手だ。
「……」
治癒術士のエリーネはずっと黙っている。まあ、彼女っていつもこうなんだけどさ。どんな声してたのかも思い出せないくらいだよ。
そして少しの沈黙の後、レオがようやく口を開いた。
「クロヴィス、お前にはこのパーティを外れてもらう」
「――えっ!?」
突然の宣告に、僕は声を失ってしまう。
そんな僕に、レオはさらに畳み掛けるように言葉を浴びせてくる。
「お前の攻撃魔法は確かに強力だ。しかしそのお前を守るために前衛の俺とヴァレリアは本来の力を発揮できていない。それでは本末転倒だろう」
確かに僕たち魔法使いは、レオの言うように前衛に守られる立場だ。だけどそんなのパーティ内での役割分担としては普通のことだし、どこのパーティだって同じじゃないか!
そんなことを反論したいが、うまく口に出せない。
僕は助けを求めるように、ヴァレリアとエリーネに視線を向ける。
「ま、そういうことだからァ。アンタがいないほうが私たちはのびのび戦えるってわけ」
「……」
なんてことだ、僕がいない間に三人の間でもう話はついていたんだ。
ヴァレリアは完全にレオの意見に同調してるみたいだし、何も言わないってことはエリーネも反対しているというわけではないのだろう。
「ま、待ってよ! どうしてそんな急に――!」
ようやく声を絞り出した僕に向かって、レオとヴァレリアが冷たく言い放つ。
「別に急な話じゃない。これまでも考えていたことを、ただ今日伝えたというだけだ」
「そうそう。ずうっと我慢してたのよねェ、私たち」
僕はまた何も言えなくなってしまう。
そんな、みんなが僕のことをそんなふうに思っていたなんて。
「これは餞別だ。こいつを持って早く出ていけ」
レオが僕の前に金貨袋を放り投げる。
僕が固まったまま動けずにいると、レオがさらに強い口調で促してきた。
「早く出て行けと言っている。今すぐに!」
こうして僕は酒場から、そして今まで一緒に戦ってきたパーティから追い出された。
あまりのショックに、その場で膝をついてしまう。
そこへさらに追い打ちをかけるように、大粒の雨までもが降り始める。
心の中と同じように、僕の服は雨と泥でグチャグチャだ。
あんなことを言われたら、普通はパーティに戻りたいなんて考えないかもしれない。でも僕はどうしてもレオたちのパーティにしがみつきたかった。
なぜなら僕は人見知りだから。
今のパーティは幼なじみのレオがいたからやっていけたけど、見ず知らずの人だけのパーティに今から入るなんて、考えただけで吐いちゃいそう。
「追放なんて、されたくないよ……」
僕は絶望のあまりうずくまる。
ああ、せめて酒場に入る前に戻ることができたなら。そうすればみんなを説得してパーティに残ることができたかもしれないのに。
すると突然、僕の身体がまばゆい光に包まれた。
気がつくと、僕は酒場の前に立っていた。
さっきの雨はもう止んだのかな? だけど僕の服は汚れていないし、地面も全く濡れてない。
ふと時計塔に目をやると、時刻はレオたちと待ち合わせた時間ピッタリ。
あれ? もしかしてみんなと会う前に戻ってる??
そういえば、レオから受け取ったはずの金貨袋も見当たらない。
僕は酒場の入口からおそるおそる中をのぞいてみた。
するとそれに気づいたレオが声を掛けてくる。
「クロヴィス、来たか」
――やっぱりみんなと会う前だ!
そうか、きっと変な幻術をかけられてしまっていたんだな。
レオが僕を追放するなんて、そんなことあるはずないもの。
「ごめん、レオ。遅れちゃったかな?」
「いやいい。俺たちが早く来ただけだ」
レオがさっきの幻覚と同じように応える。
やっぱり眉間にシワを寄せている――のはいつものことだよね。
「ところで今日は何の集まりなの? 次のクエストについてかい?」
「……」
レオはなぜか今回も黙ってしまった。
「ほらぁ、ハッキリ言ってあげなさいよ」
ヴァレリアのそれもさっき聞いた。
「……」
エリーネが喋らないのはいつも通り。
そして少しの沈黙の後、レオがようやく口を開いた。
「クロヴィス、お前にはこのパーティを外れてもらう」
「――えっ!?」
突然の宣告に、僕はまた声を失ってしまう。
だってさっきのは幻覚だったんでしょ? なんでまた同じこと言われるの??
そんな僕に、レオはさらに畳み掛けるように言葉を浴びせてくる。
「お前の攻撃魔法は確かに強力だ。しかしそのお前を守るために前衛の俺とヴァレリアは本来の力を発揮できていない。それでは本末転倒だろう」
だから僕たち魔法使いは、レオの言うように前衛に守られる立場だけどさ! そんなのパーティ内での役割分担としては普通のことだし、どこのパーティも同じなんだってば!
そんなことを反論したいが、やっぱりうまく口に出せない。
僕は一縷の望みをかけて、ヴァレリアとエリーネに視線を向ける。
「ま、そういうことだからァ。アンタがいないほうが私たちはのびのび戦えるってわけ」
「……」
なんてことだ、さっきと全く同じ展開じゃないか。
ヴァレリアが完全にレオの意見に同調してるのもそうだし、エリーネが何も言わないのもおんなじだ。
「ちょ、ちょっと! おかしいよこんなの――!」
さっきとは少し違う言葉を絞り出した僕に向かって、レオとヴァレリアが冷たく言い放つ。
「別におかしい話じゃない。理由は今説明しただろう」
「そうそう。ずうっと我慢してたのよねェ、私たち」
僕はまた何も言えなくなってしまう。
え? なにこれ? もしかしてまだ幻術にかかってる?
「これは餞別だ。こいつを持って早く出ていけ」
レオがまた僕の前に金貨袋を放り投げる。
このまま動かずにいたら、やっぱりレオが強い口調で促してくるのかな。
「早く出て行けと言っている。今すぐに!」
こうして僕は酒場から、そして今まで一緒に戦ってきたパーティからまたしても追い出された。
あまりのショックに、その場で膝をついてしまう。一度安心させられた分、心のダメージはより深刻だ。
そしてさっきと同じように、大粒の雨までもが降り始める。
僕の服は結局雨と泥でグチャグチャだ。
「追放なんて、されたくないよ……」
僕は絶望のあまりうずくまる。
ああ、本当に時が戻ってくれたらいいのに。
すると突然、僕の身体がまばゆい光に包まれた。
気がつくと、僕は酒場の前に立っていた。
雨は降っていない。僕の服は当然汚れていないし、地面も全く濡れてない。
時計塔に目をやると、時刻はレオたちと待ち合わせた時間ピッタリ。
――これって、もしかしてホントに時間が巻き戻ってる?
僕は酒場の入口からおそるおそる中をのぞいてみた。
するとそれに気づいたレオが声を掛けてくる。
「クロヴィス、来たか」
やっぱりみんなと会う前だ!
それも幻術なんかじゃなく、時間が巻き戻ってる!
「――ごめん、レオ。遅れちゃったかな?」
「いやいい。俺たちが早く来ただけだ」
レオがまた同じように応える。
僕はあえて彼に直球で尋ねてみた。
「ところで今日は何の集まりなの? ――もしかして僕をパーティから追放しようとか?」
「……!」
僕の言葉に、レオと他の二人は目を丸くする。
そして少しの沈黙の後、レオがようやく口を開いた。
「そうか、自分でもわかっていたようだな。それなら理由を説明する必要もあるまい」
「あ、やっぱりそうなんだ……」
予想していたこととはいえ、つらいものはつらい。
そんな僕のことを、ヴァレリアが煽ってくる。
「なぁに? 自覚あったわけぇ? アンタがいないほうが私たちはのびのび戦えるってさ」
「……」
僕が黙っていると、レオが懐から金貨袋を取り出す。
「これは餞別だ。こいつを持って早く出ていけ」
僕の前に放り投げられた金貨袋を受け取ると、僕はそそくさと酒場を出る。
このまま動かずにいたら、どうせレオに怒られるし。
こうして僕は酒場からまたしても追い出された。
多少早く酒場を出てきたせいだろう、雨はまだ降り出してはこない。
そして今回でわかったことがある。
それはやっぱり僕は時間を巻き戻っているということと、僕の態度によっては話の展開も変わってくるということだ。さっきは反論することもなかったから結末は同じだったけど、みんなを説得できれば本当にパーティに残ることもできるかもしれない。
そうと決まればもう一度巻き戻りだ! 時間よ戻れ!!
僕の身体がまばゆい光に包まれた。
僕は酒場の前に立っていた。
時計塔に目をやると、時刻はレオたちと待ち合わせた時間ピッタリ。
よしよし、やっぱりちゃんと戻れるみたいだぞ。
酒場に入るなり、僕は真っ直ぐレオたちのところへ向かう。
「ところで今日は何の話?」
「……」
前置きをすっ飛ばしてすぐに用件を聞いてみた。
でもレオは黙ってしまった。
「ほらぁ、ハッキリ言ってあげなさいよ」
そうだそうだ! ハッキリ言え!
そして少しの沈黙の後、レオがようやく口を開いた。
「クロヴィス、お前にはこのパーティを外れてもらう」
突然の宣告に、僕は声を失ってしまう――なんて思ったら大間違いだよ!
さすがにもう慣れちゃったからね!
レオはさらに畳み掛けるように言葉を浴びせてくる。
「お前の攻撃魔法は確かに強力だ。しかしそのお前を守るために前衛の俺とヴァレリアは本来の力を発揮できていない。それでは本末転倒だろう」
「確かに僕たち魔法使いは、レオの言うように前衛に守られる立場だ。だけどそんなのパーティ内での役割分担としては普通のことだし、どこのパーティだって同じじゃないか!」
やったっ! 言いたかったこと、ついに口に出して言えたぞ!
だけどレオは、僕に睨みつけるような視線を向けてくる。
「……だったら他のパーティに行けばいいだろう」
「そうよねェ。私たちはアンタがいないほうがのびのび戦えるんだもん」
あ、普通に論破された。
「ちょっと待って! えっと、その――」
「これは餞別だ。こいつを持って早く出ていけ」
はい、終了。また酒場の外に追い出されました。
うーむ、やっぱり追放を撤回させるのは簡単じゃないみたいだ。
これは長期戦になりそうだぞ。
とりあえず巻き戻しだ! そーれ!!
僕の身体がまばゆい光に包まれた。
気がつくと、僕は酒場の前に立っていた。これが12――いや、13回目だったかな?
あれから僕は色々と理屈をこねてレオを説得してみた。だけどいくらがんばっても追放を撤回させるどころか、ちょっとでも気持ちを揺るがせることさえできなかったよ。
というわけで、今回は作戦を変えてみようと思う。
「ごめん、レオ。遅れちゃったかな?」
「いやいい。俺たちが早く来ただけだ」
あえて一番初めと同じルートをたどる。
多分そのほうが、僕の作戦はうまくいくんじゃないかと思うんだ。
「ところで今日は何の集まりなの? 次のクエストについてかい?」
「……」
「ほらぁ、ハッキリ言ってあげなさいよ」
いつもの沈黙があった後、レオがようやく口を開いた。
「クロヴィス、お前にはこのパーティを外れてもらう」
「――えっ!?」
突然の宣告に、僕は声を失ってしまう――という演技をした。
そんなことには気づいてないみたいで、レオはさらに畳み掛けるように言葉を浴びせようとする。
「お前の攻撃魔法は――」
「どうしてだよっ! レオ! 僕たちは仲間じゃないか! どうしてそんな事言うんだよ!!」
「いや、だからな――」
「それに僕とレオは小さな頃からずっと一緒だっただろ!? それなのになんで……、なんでっ……!」
名付けて、『理屈がだめなら感情論で押し切ればいいじゃない』作戦っ!
レオがあーだこーだ言ってくる前に、とにかく情に訴えてしまうというわけさ。
そしてこの作戦、思った以上にこうかはばつぐんだ!
目に見えてわかるほど、明らかにレオは動揺しているぞ!
そして今までのループでわかっていることがある。
それはヴァレリアはレオに同意はしているけど、僕の追放にこだわってるわけじゃないってこと。
だからこのままレオさえ落としてしまえば、追放は白紙に戻るってわけ。
「――ひどい……、ひどいよ……! 僕はレオのことをずっと信用してたのにっ……!」
「ク、クロヴィス……」
僕の両目からは涙が流れていた。これは完全に演技ってわけじゃないよ。だって話しているうちに本当に悲しくなってきちゃったんだもん。
いずれにせよ、真に迫った僕の言葉でレオは陥落寸前だ。次でトドメを刺してあげるよ!
「僕たちは友達じゃないか! 子供の頃から、そしてこれからもずっと! そうだろう!? レオ!!」
「……!」
レオの表情が急に険しくなる。
あれ? 僕べつに変なこと言ってなかったよね??
「――すでにお前の追放は決定したことだ。それが覆ることはない」
「ま、待ってよ! どうしてそんな急に――!」
いやいや、ホントにどうしてだよ!? さっきまでいい感じに進んでたじゃん!
「これは餞別だ。こいつを持って早く出ていけ」
僕は酒場から追い出された。
うーん。最後にしくじった理由はよくわからなかったけど、今回は割といいところまでいけたんじゃないかな? とりあえずもう少しこの方向性で攻めてみることにしよう。
というわけで、巻き戻し!
僕の身体がまばゆい光に包まれた。
気がつくと、僕は酒場の前に立っていた。
10回以上試してみたけど、感情で攻める策もやっぱりなかなかうまくいかない。
こうなったら次の作戦だ!
僕は酒場に入るなり、三人のところへ駆け寄った。
「クロヴィス、来たか――」
「大変だよ! レオっ! 僕の母さんが病気で倒れたって!!」
名付けて、『もう追放の話自体うやむやにしちゃおう』作戦っ!
いったんここは時間を稼いでおいて、次に追放の話が出るまでにどうにかして僕の評価を上げるって算段さ! どうやって評価上げるかまでは考えてないけど。
「何だとっ! それは大変じゃないか!」
よしっ! かかったぞ! これは今度こそイケるかもしれない!
「うん……、だから僕がこのパーティで治療費を稼がないと――」
「馬鹿野郎っ! お前はパーティから外すに決まってるだろ! 今すぐおばさんのところに行くんだ!!」
あ、やっぱりダメかもしれない……。
「治療費にはコイツを使え。足りない分は後で俺がどうにかしてやる」
レオが僕の前に金貨袋を放り投げる。
そして問答無用で酒場から追い出された。
確かに今のは悪手だったかもしれないね、うん。
だけどきっと方向性としては間違ってないはず!
こうなったら数撃ちゃ当たるだ! 色んなパターンを試してやるぞ!
はい、巻き戻し!
僕の身体がまばゆい光に包まれた。
僕は酒場に入るなり、三人のところへ駆け寄った。
「大変だっ! 王国の砦がモンスターの軍団に襲われてるって!!」
「何だとっ! すぐに救援に行かなければ! だがお前はパーティから外す! 足手まといだ!」
僕は酒場から追い出された。
僕の身体がまばゆい光に包まれた。
僕は酒場に入るなり、三人のところへ駆け寄った。
「大変だっ! スーパーアイドルのミルルンがこの近くに来てるんだって!!」
「俺は興味ない。パーティから外してやるから、好きなだけ追いかけてこい」
僕は酒場から追い出された。
僕の身体がまばゆい光に包まれた。
僕は酒場に入るなり、三人のところへ駆け寄った。
「大変だっ! 僕は宇宙人を目撃してしまったんだ!!」
「クロヴィス、お前は疲れているんだ。パーティを抜けて、故郷でゆっくり休め」
僕は酒場から追い出された。
僕の身体がまばゆい光に包まれた。
僕は酒場に入るなり、三人のところへ駆け寄った。
「大変だっ! とにかく大変なんだ!!」
「そうかっ! なにかわからんがとりあえずお前は追放だ!」
僕は酒場から追い出された。
僕の身体がまばゆい光に包まれた。
僕は酒場に入るなり、三人のところへ駆け寄った。
僕は酒場から追い出された。
僕の身体がまばゆい光に包まれた。
僕は酒場に入るなり、三人のところへ駆け寄った。
僕は酒場から追い出された。
僕の身体がまばゆい光に包まれた。
僕は酒場に入るなり、三人のところへ駆け寄った。
僕は酒場から追い出された。
僕の身体がまばゆい光に――。
気がつくと、僕は酒場の前に立っていた。もう何回目だろうか。
僕はもう半分ヤケクソになっているのかもしれない。
僕は酒場に入るなり、三人のところへ駆け寄った。
「レオ! 僕はずっと、君の事が好きだったんだ!!」
「……!」
もう自分でも何を言ってるのかわからないや。
そして当然のことながら、みんなが目を丸くする。
「……ほら、ハッキリ言ってあげなさいよ」
あー、完全にいつものやつじゃん。パターン入ったわこれ。
そして例によって沈黙があった後、レオがようやく口を開いた。
「クロヴィス……。俺もお前のことが好きだっ!!」
「――えっ!?」
突然の告白に、僕は声を失ってしまう。
いやそりゃあもちろん先に告白したのは僕ってことになるんだとうけど、今回の場合はそういう問題ではなくてですね……。
そんな僕に、レオはさらに畳み掛けるように言葉を浴びせてくる。
「俺はずっと辛かったんだ! お前への気持ちを心の中だけで抱え続ける事が……! そしていつか戦いの中でお前を失ってしまうんじゃないか、そう考えると恐ろしくてしかたなかったんだっ……!」
「あ、あの――」
レオの言葉は止まらない。
「だから、いっそのことお前と距離を置こうと思っていた。無理矢理にでも理由をつけて、このパーティから追放しようって……。そんなことを考えていたんだっ……!」
唇を噛みしめているレオの肩に、ヴァレリアがポンと手を置く。
そして僕のほうに向き直って言った。
「私は前から相談されてたから、レオンハルトのつらい気持ちはずっと知ってたんだ。だから協力しようと思ったのさ。それがレオンハルトのためになるならって」
え? そうなの!? 君の態度はそういうことだったの!?
混乱する僕に向かって、レオは爽やかな笑顔を向ける。
「すまない、クロヴィス。俺は弱い男だった。だがお前のおかげでようやく目が覚めたよ。お前のことは絶対に俺が守護ってみせる! 何があろうと、誰が相手だろうと、絶対にだっ!!」
いや、確かに言われて悪い気はしないけどさ。さすがにこの展開は想定外というか、もうちょっと考える時間をくださいといいますか……。
「尊い、これはただひたすらに尊い。やはりレオ✕クロは攻守において最強。力の勇者と知恵の黒魔術士がその深い愛情を持って融合する様は、まさしく互いを補い合いさらには想い合うという至高のカップリング。さらには二人が幼少からの幼なじみであるというのがまた推せる。友情が知らず知らずのうちにやがて愛情に変わっていくその過程、それこそが崇高にして深遠なるエモをもたらす。加えてレオ✕クロのようにタチネコがはっきりしているカプの場合は、リバった時の破壊力も――」
エリーネがすごい早口でなんか言ってる! レオ✕クロってなんのこと!?
ていうか僕、途中から君の存在完璧に忘れちゃってたよ!!
「ふっ、よかったじゃないかレオンハルト。これでアンタもクロヴィスもやっと幸せになれる」
「ああ……。ありがとう、みんな! ありがとう、クロヴィス!!」
ああ、これはもうやっぱり今のナシとか完全に言えない雰囲気になっちゃってるね……。確かに追放は回避できたけど、さすがにこの展開はちょっとないかなぁ。
とにかくみんなの気持ちはわかったってことは収穫だよね。よし、次はもっと穏便なかたちでおさまるようにうまくコントロールしてみよう。
それじゃあもう一度、巻き戻しだっ!!
――。
巻き戻しだっ!!
――。
巻き戻しだってばっ!!
――。
あれ、発動しない……? もしかして、追放されずにすんだからってこと……?
僕の額から冷たい汗が流れ落ちる。
「さあ旅を続けよう! どれだけ強力なモンスターも、今の俺を止めることはできないぜ!!」
そう言って立ち上がったレオは、みんなと一緒に意気揚々と酒場を出ていってしまった。
僕はその後をあわてて追いかけながら、心のなかで叫ぶ。
こんなルートで確定しちゃうなんて、いくらなんでもありえないだろぉ~!!
その後、僕たちのパーティは快進撃を続けた。
特にレオの戦いぶりといったら、まるで秘められた力が覚醒でもしたみたいだった。
(あとついでにエリーネの回復魔法もなんだか効果が上がってた気がする)
そして僕たちはその勢いのまま魔王城へと突入。死闘の末についに魔王を討ち取った!
そしてさらに時は過ぎ――。
金色の鐘が高らかにその音色を響かせた。
教会の前に集まる大勢の人々は、歓喜と祝福の声であふれている。
「二人ともおめでとう! 本当によかったわね」
「ああ、神よ。この尊き二人の未来に、とこしえの祝福を……」
ヴァレリアとエリーネがお祝いの言葉をかけるのは、白いタキシードを纏ったレオ。
そして彼のたくましい腕に抱きかかえられた、ウェディングドレス姿のこの僕だ。
「ありがとう、二人とも! クロヴィス! 俺、お前のこと絶対に幸せにしてみせるぜ!」
「僕もだよ、レオ! 僕も君のことを幸せにするから!」
こうして追放ループから始まった僕の物語は、最高のハッピーエンドを迎えたのだった。