55 聖剣誕生
「プレア。お前は、その人外と戦った事があるのだな?」
「はい。戦うと言うか、守ったと言うか」
「守った?」
「えっと。う――ん。結界を張って、前の国に入れない様にしました」
「結界?」
「はい。見えない盾みたいな。城壁みたいな感じですね?」
「人間からも、身を守る事は出来たのか?」
「いいえ。それを行う事は出来ません。それで、身を守ればと言いたいのでしょうが」
「まあ、いい。少なくとも、その結界で人外を防いだのだな?」
「はい」
「それだけか?」
「後は、首謀者と見られる人外を見つけ、彼女の魂を浄化しました」
「彼女? 女だったのか?」
「はい。見極めるには、時間がかかりますが」
「それで、浄化とは?」
「えっと、本当は、浄化と言うよりは、人の魂を最初に戻すというか。その……」
「わかった。言いにくいのなら、聞かない。では、結界についてだが」
「はい」
「それの大きさには、制限があるのか?」
「いいえ。その気になれば、国ごと囲めます。と言っても、私以外は、無理でしょうが」
「……」
「あ、あの?」
シャランジェールは、自分の剣をマジマジと眺めていた。
何を考えているんだろう?
「その結界で、この剣を包むことは可能か? 永続的に?」
「え? 剣を? 永続的に?」
「そうだ。それと、その浄化と言うのもだ」
「え? 浄化の力も?」
「そうだ。それもだ」
ああ、この人は、人外と戦う方法を見つけようとしているのか?
私は、戦い方など知らない人間だった。
守る事。
許すこと。
癒すこと。
これしか、出来ないと思っていたし。
そうであった。
けれども、シャランジェールは、その力を組み合わせて、人でも戦えるようにとしているのかしら?
「はい。出来ると思います。イメージさえできれば」
「そうか? それは、よかった」
シャランジェールは、ニッコリと笑った。
「では、早速試そう」
シャランジェールは、剣を私の前に見せた。
「えっと。頑張ります」
「ははは。頑張るか? 頼むぞ」
剣を目の前に突き出されるのは、これで三回目かなと思った。
一回目は、ディコ様事黒い騎士様の時。
二回目は、ディコ様が後の国の皇帝となって表れた時。
「ん? どうした? やはり、無理か?」
「いいえ。御免なさい。目の前に剣を突き出されるのが、三度目なので」
「あ、すまんな。驚かせたか?」
「いいえ。では、さっそくイメージしてみますね」
「うむ。頼む」
私は、杖を片手に持ち、左手をシャランジェールの剣に添え、その剣を結界で永続的に包むことと、浄化の力も永遠に宿らせるイメージを思い浮かべた。
「大神官プレケス・アエデース・カテドラリース・ミーラクルムの名において命じる。この剣に、全ての物からの干渉を受けない結界と触れる者を浄化する力を宿らせよ。そして、それらを永続的に、この剣に」
私の周りに光の渦が、くるくると回り出した。
天から、細い光の筋が、この剣に降りてくる。
そして、周りの渦巻いていた光も、この剣に纏わりつき、剣を包み込む。
「我が聖なる力、我が命、我が想い。主なる神の光よ。この剣に宿り、この剣に聖なる力を与えたまえ。主なる神よ。我が想いに答えたまえ。我が命に代えた祈りに応えたまえ」
すると、傷だらけだった剣が、綺麗に修復されて行った。
私の全身が薄く光り輝き始めた。
その光が、シャランジェールの剣をも包んでいく。
そして、全身の光が、剣に集まり、そして剣の中へしみこむ様に入っていった。
美しく綺麗な剣に生まれ変わっていた。
「おおお。剣が、奇麗になったぞ! これは、凄い!」
子供の様に喜ぶシャランジェール。
「よかった。ですね」
私は、少し疲れた感じがしたので、近くの椅子に座った。
「あ、無理をさせたのか? すまなかった」
「いいえ。これで、あなたが戦えるようになるのなら」
よかった。
この人に出会わなかったら、逃げるばかりで終っていた。
嬉しそうに、剣を振るって見せるシャランジェール。
私は、その子供みたいな姿を見て、何だか心が癒されていた。




