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お転婆だった見習い神官プレア。終焉(しゅうえん)の大神官として呼ばれるけど、私は最後まで抵抗するわ  作者: 日向 たかのり
第七章 対立の大神官・・・終わる、前の国。敵対する、後の国の皇帝
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46 守護団の戦い

 私と守護団は、前の国の山奥に向かって移動を始めた。

 聖導会派の貴族の方々が、避難先にと用意してくれていたところだ。

 第三者を介して用意してもらっているので、万が一(まんがいち)聖導会の貴族の方が詰問(きつもん)されても、直ぐにはバレないように配慮されているという。


「プレア様。着きました。こちらに」

「ありがとうございます」

 守護団の騎士の方に手を引かれ、馬車を降りた。


「プレア様。しばらくは、こちらにて様子を見たいと思います。状況が変わらないか悪化すれば、他の場所に移動をするつもりです。荷物は、使う物だけ下ろして乗せたままにいたします」

「はい。お任せします」

 私に、戦闘や雲隠れの才能はない。

 だから、任せるしかない。

 転移の力を使って移動も考えた。

 しかし、それを使うと、手の内を見せてしまう事になると思って、敢えて馬車での移動にした。

 それに、守護団のみんなにも、転移の力を見せてはいない。


 隠れ場所に落ち着いて、ひと時が過ぎた。

 

「プレア様。王国側の情報が入ってきております」

「なんでしょう?」

「皇帝側の方も、プレア様が居なくなったことを確認したようです。それと、プレア様は病で倒れられ、治す為の祈祷を行う必要があるとの理由で、大神殿の周りを立ち入り禁止にしたそうです」

「そうですか。私が病に。どんな病なんでしょうね?」

「それと、暗殺者らしき人達が、王宮に集められていたとのこと。その後、一斉に各地へ散って行ったそうです」

「他の神官達への影響は?」

「はい。正確に確認は出来ておりませんが、追手を出したり、国内に引き戻す等はしていないようです」

 それを聞いて、ホッとした。

 そして、いよいよ、始まるらしい。


「プレア様。別の場所へ移動の準備を始めましょう」

「……。はい」

 私は、少し間をおいて返事をした。

 いったい、いつまで、何処まで逃げ切れるのだろう。

 こうした戦いの素人の私に、ただのお転婆で、アチコチ散策してただけの見習い神官だった私に。

「あの、隠れ場所のリストの様なものはありますか?」

「あ、はい。こちらに。お見せするだけで、お渡しは出来ませんが」

「ありがとうございます」

 隠れ場所には、自分が転移で行った場所も含まれていた。

 景色が綺麗だからと、モイラと行った場所もあった。

 

「出発するぞ!」

 私達は、次の隠れ場所への移動を開始した。


 移動の際も、聖導会派の貴族の皆様が、皇帝側との折衝を続けてくれていた。

 人外の恐怖で影から支配されている皇帝側は、大神官による正当な王位継承を求めて来ているので、話は平行線だったと聞いた。

 聖導会派の貴族の中にも、認めてしまえば良いではないかと言う者も現れて、意見が統一出来ていない。

 下手をすれば、私が突き出されることも、考えておかねばならないだろう。


 ただ、不思議なことを聞いた。

 後の国の皇帝と謁見(えっけん)した者が、誰もいないと言う。

 

 私は、黒い騎士様、後の国の皇帝であるデュコ・アウローラ・ステルラ様の身を案じた。

 人外と取引をして、無事でいられるものだろうか?

 取り込まれて、人格が崩壊していないだろうか?


 最初に出会った頃の姿が忘れられない。


 赤い髪、赤い瞳、鋭い表情。


 アクス様が心を砕き、守ろうとされた方。

 

「今夜は、こちらにいたしましょう」

 次の隠れ家に到着した。


「プレア様。お手を」

 守護団の騎士様が、いつものように手を差し出して手伝おうとしてくれた。

 しかし、私は足を引っかけて躓いてしまった。

「あっ!」

「プレア様!」

 馬車の上から落ちそうになった私を、騎士様が支えようとしてくださった、その時……。


「ぐっ!」

 突然の騎士様の呻き声。

「あ、あの? あっ!」

 私と騎士様は、一緒に馬車から雪崩落ちた。


「あ、プレア様。おい、お前どうした?」

 騎士様は、私を庇うように抱えて、一緒に地面へ雪崩落ちた。

「騎士様。大丈夫で……?」

 私は、庇って下さった騎士様を案じて、声を掛けようとしたが、騎士様の目は白目を向き、口から泡を吹いていた。


「!」

(し、死んでる)


 言葉が出なかった。

 怖かったからではない。

 私の身代わりになってしまったことが、ショックだった。

 

「プレア様!ご無事ですか? おい! 周りを囲め。賊がいるぞ!」

 鎧の隙間に棘の様なものが刺さっていた。


「これは、毒矢か何かか?」

 警護の騎士様が、亡くなった騎士様の遺体に刺さっているのを確認する。

 

「直ぐ馬車にお戻りください。直ぐに移動します」

「はい」

 私は、立ち上がった。

「あ、あの、この騎士様も、一緒に乗せて頂けませんか?」

「え? え? もう、こいつは死んでます。遺体は、このまま捨て置きます」

「駄目です。乗せてください」

「わ、わかりました。おい!」

 私は、身代わりに亡くなられた騎士様と一緒に馬車へ乗り込んだ。


 周りを警戒する守護団の皆様。

 しばらくの静寂が続く。


 守護団が出て来いと威嚇するも、姿をあらわす様子が無い。


「このままいても仕方があるまい。移動するぞ。その途中で追ってくる者を確認する他あるまい」

「そうだな。では、移動するか?」

 確かに、そうかもしれない。

 しかし、単に移動だけでは、隠れて後を付けられるだけだと、私にもわかる。


「待ってください。私に提案があります」

「何でしょうか、プレア様? 今は、一刻も早く移動しなければ」

 騎士の方は焦っておられた。


「大神官としての力を使います。皆様を、次の隠れ場所へ転移させます。これならば、追手も振り切れます」

 そうだ、転移の力を使おう。

「え? 何ですか? 大神官の力? 転移?」

「はい。転移の力を使います。任せて頂けませんでしょうか?」


 初めて聞いた様子の騎士様は、戸惑っていた。


「そう言えば、プレア様は、数百年ぶりの大神官と聞いております。大神官のお力があり、それを使おうとなさっておられるのですか?」

「はい。この人数なら可能かと。祈る間の時間だけを作って頂ければ」

「……。わかりました。お任せします」

「はい。ありがとうございます。では、皆様を、馬車の近くに」

「了解いたしました。おい、皆、下ろした荷物を纏めて、馬車の近くに集まれ」

 話を聞いていない守護団の方々は、何が始まるんだろうという顔をしながら集まって来た。

 

「あの、窓は締めてください。毒矢で、狙われるかもしれません」

 

 本当は、外でやりたいのだけれども、この状態では仕方がない。

 降りた時の周りの人達をイメージに捉え、次の隠れ場所もイメージする。

 かなりの荷物と人数。

 結界と違って、無事に移動させなければならない。


(あの場所にしよう)


 いつもの様に、光と風が織り交ざり、守護団のみんなを包み込んでいく。

 馬車の中にも、その光と風が渦巻いている。


「おお。何だこれは?」

 皆、一様に驚いている。


 降りる時に見た範囲の人と荷物、これが十分に囲まれた事をイメージした。

 そして、杖を、馬車の床にトンと付いた。


「こ、ここは? 移動したのか?」

 外の様子はわからないが、転移は無事に終わった。

「き、奇跡だ!」

「凄いぞ! 何だこれは?」

「おい、喜んでいる場合ではないぞ! 周りに賊がいないか調べろ! 駄目なら、また移動しなければならないんだぞ!」


 安全確保の為の、周りの探索が始まった。

 私は、亡くなられた騎士様の両手を胸の上に合わせて、冥福を祈っていた。

 

「プレア様。安全が確認できました。ここで、休みましょう」

「はい」

「凄いものですね。これが、大神官様の御力ですか? あれが、転移の力ですか?」

「ええ」


 流石に、奇想天外な方法で移動したためか、夜になっても周りに追手(おって)の気配はしなかったらしい。

 その日は、人外との戦いを始めてから、久しぶりにゆっくりと休むことが出来た。

 

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