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お転婆だった見習い神官プレア。終焉(しゅうえん)の大神官として呼ばれるけど、私は最後まで抵抗するわ  作者: 日向 たかのり
第七章 対立の大神官・・・終わる、前の国。敵対する、後の国の皇帝
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41  戦闘開始。終焉(しゅうえん)の大神官の戦い

「大神殿の周りの警備は、仮のものです。強引に侵入してくるようなことがあっても、抵抗せずに案内してください」

「はい、モイラ様」

 聖導会大神殿に残った神官達へ、モイラが指示を出す。


「兵を使って攻めてくることは無いはずです。それをすると大ごとになり、皆に気づかれてしまうからです。気づかれて、国外に逃げられたりすれば、意味がないでしょうから」

 私は、モイラの指示をフォローする。

 

 しばらく、静寂な時が過ぎていく。

 礼拝堂の中は、静かだ。

 各地の神殿の神官達からも、周りが騒がしいなどの報告がない。

 ディコ様は、外出を制限でもさせているのだろうか?

 祝いのための準備と称して。

 その知らせも、特に来てはいない。

 

 このまま、杞憂(きゆう)であれば、どれだけ良いか。

 

 それは薄い希望だった。


 白い霧のようなものが、大神殿の礼拝堂の中を包みだす。

 おそらく、この国全体を包み込もうとしているだろう。

 前の国の領民に気づかれないようにと。


「プ、プレア様。神殿の周りが白い霧で覆われています。そして、それを誰も気が付いていないようです。まるで、周り一帯が眠っているようです」

 

「始まりましたか。覚悟していたとはいえ、本当に国ごと引きずり込むとは。『人外』に、そこまでの知恵があるものがいたのか? それとも、あの方の入れ知恵なのか?」

 そして、私は、次の指示を出した。

「主導師の方、結界の力を展開する祈りを初めてください」

「はい、プレア様」


 国ごと引きずり込まれたという事は、これに勝たない限り、前の国の領民は生きて帰れない。

 彼らに合わせ、私も杖を握り、結界の力を展開すべく、祈り始めた。

 すると、……。


「ゴンッ――!」

 私が祈り始めると同時に、白い(とけ)の様なものが私を目掛(めが)けて突き立てて来た!

 甲高い音が、大神殿の礼拝堂に鳴り響く。

 まるで、鐘の音のよう。

「?」

「プ、プレア様?」

「プレア様、何がありました?」

 皆、白い針の様な棘が、私の前で激しい音を立てて止まっているのを見て驚いている。

 この棘は、私の周りの結界を(つらぬ)こうとしたのだ。


「ゴンッ――!」

「ゴンッ――!」

 何度も、その鋭い(とげ)は、私めがけて突いてくる。


 祈りを始めるのが一瞬遅かったら、危なかった。


「プレア様! 何の音でしょうか? そちらは、大丈夫なのでしょうか? 誰か? 誰か、返事をしてください!」

「皆様、落ち着いてください。プレア様も、私達も無事です。そのまま結界の維持に専念をお願いします」

 モイラが、答える。

 

 この白い針のような棘は、恐らく人外の(つめ)のようなものだろう。

 直接私を狙って来たのは、私がいる限り、事の成就が出来ないのを良く理解しているからだろう。

 私を、先に潰しにきたのだ。


 私達のいる礼拝堂の入り口は、白い靄のようになっていた。

 そこに、次第に黒い穴が出来始める。

 それが徐々に広がっていく。


 黒い黒い、漆黒の闇。

 吸い込まれそうな。

 光あるものを全て吸い込む、黒い深い穴が。


「ガチャ、ガチャ、ガチャ、カチャ!」

 骸骨(がいこつ)やら、ゲジゲジのように足の生えた人外が、(わきだ)きだしてきた。

 

「う、うぁっ!」

「キャ――!」

 導師の周りを囲っている神官達が驚き、悲鳴を上げる。


「こ、これが『人外』! アクス様やクロス様を、ずっと苦しめ続けてきた奴ら?」


 そう、クロス様などは、碌な対抗手段もなく、これと対峙し、恐怖に打ち勝ちながら聖導会を導いてこられた。


「そうです。こうして正体を現してきたということは、彼らにも余裕が無くなっている証拠です。私達が有利に状況を進めておりますよ」

 私は、皆を安心させた。


「プレア様、こちらにも現れました。ただ、結界の外からは入って来られないようです。鋭い牙で、かみ砕こうとしているようですが」

 ガキガキと鋭い音が、アチコチから聞こえて来る。


「これ、国境全部に出てきているのか?」

「その様ですね。皆様は、そのまま結界の維持を。(らち)が明かないと分かれば次の動きをして来るはずです」

 全員を国境付近に展開させておいて良かった。


「プレア様は、無詠唱(むえいしょう)でも大丈夫なのですか?」

 モイラが驚いている。

「ええ、大丈夫ですよ。これくらいの規模の結界が、この国に必要。そう願ってイメージすれば、それが実現します。それだけの事ですから」

 大神官の力の一部を託された神官達は、恐怖に打ち勝ちながら唱えて維持している。

 集中するために、周りを守ってもらわねばならない。

 私の場合は、彼ら彼女らとは異なり、祈りの仕方が選択できるのだ。

 同時にいくつもの祈りを唱えることも出来る。

 

「大神官となれる者は、それが出来る。だからこそ、彼らは焦っているのでしょう。人外達からすれば、アクス様、クロス様の時に仕掛けたかった事でしょうね。しかし、お二人が、こうならないように守って下さっていた。黒い騎士とも言われたディコ様が、後の国の皇帝とならないように説得し続けていてくれたからこそ、時間が稼げたのです。私が、大神官として目覚めるまでの時間を」

 

 人外達は、鋭い牙や、爪を、私が展開した結界に、何度も何度も突き立て来る。


 その度に、「ゴン、ゴン!」と衝撃音がなり、時折「ゴンッ――!」と鐘のような音がする。

 

 こうした膠着状態は少しの間続いた。

 彼らも、無駄とわかってきたのだろう。

 私の前に居る人外達が左右に退き、私の前に道を作り出した。


「あなたとはいつも、こんな形の出会い方ばかりでしたね。黒い騎士様」

 その一筋の道には、見覚えのある姿が、何体かの人外達を伴って現れた。


 

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