38 戦いに備えて
さらに、悪い情報が報告されてきた。
「プレア様。ディコ様は、ご自分で『後の国』の『皇帝』と宣言されたそうです。そして、……」
報告に来た神官は、息を切らせながら話を続ける。
「そうですか。あの方的には、『前の国』は終わったという事なのですね。わかりました。他には?」
「それから、外部から兵を入れて軍を強化すると、おっしゃっているとのことです」
「外部から、兵を? どの国ですか? どこの組織ですか?」
「そこまでは、発表は無かったようです」
外部から兵を増強という気になる言葉。
もしかして、リンド皇国から?
私を支援する形で介入されるということかしら?
私は、どこからその兵を集めて来たのか気になった。
「あの、報告は以上です」
私が考え込んでいた為、報告に来た神官さんを待たせてしまった。
「あ、ごめんなさい。考え事をしていて。報告ありがとうございました」
「はい。では、失礼します」
「プレア様。少しよろしいでしょうか?」
モイラが、私の気持ちを察してか、声をかけてくれた。
「何、モイラ?」
「あの、先ほどの兵ですが、プレア様がお話下さった『人外』の事ではないでしょうか?」
あら、ほんわかモイラでもわかるのね。
「そうね。でも、経典にあるような姿なら、とても目立つはずだわ。今ごろ王都は、大騒ぎのはず。そうはなっていないし」
「王族派の貴族達に野心を抱かせるぐらいでないと、とても発表などできないと思いますが、違いましたかね?」
「いいえ、モイラ。その可能性はあるわ」
私は、その元を正さないといけないと感じた。
「う――ん、そうね。直ぐに来られる方だけで良いので、大神殿に神官の皆様を集めてください。その備えをしておきましょう。外出している残りの方は、戻り次第指導いたします」
「どうされるのですか?」
「大神官としての力の一部を皆に与えます。と言っても、結界を張る事ぐらいなのですが」
「良いのですか?」
「ええ。相手が人でないなら、それなりの対抗手段が必要でしょう。むしろ、そちらは私達の本分ですからね」
相手が経典にある『人外』ならば、こちらも対話などという手段を取っていられなくなる。
何しろ、相手は対話不能なのですから。
何としても、この国の領民を、生贄にさせて願いを叶えさせるようなことはさせたくない。
アクス様との約束でもある。
『私は、あなた達に未来を託します』
そう言われた時のことを、改めて思い出していた。
「ではプレア様、さっそく皆様に声をかけてきます」
「ええ、頼みますね」
投稿遅れました。
申し訳ありませんでした。




