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お転婆だった見習い神官プレア。終焉(しゅうえん)の大神官として呼ばれるけど、私は最後まで抵抗するわ  作者: 日向 たかのり
第七章 対立の大神官・・・終わる、前の国。敵対する、後の国の皇帝
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37 対立の始まり

 デュコ様とは、王位継承の承認で対立することになってしまった。

 おんぼろ街で、初めて出会った黒い騎士様は、そこには無かった。

 

 デュコ様の思惑。

 やろうとされていることが、決して受け入れられないこと。

 であるならば、王位継承を受け入れられずはずもない。


 捕らえられて拷問(ごうもん)脅迫(きょうはく)されても、私は「承認します」と言えるはずがない。

 私が、言ったとしたら前の国は終わってしまう。

 

 デュコ様が追い詰められていば、話は違ってくるかも知れないけれども。


 デュコ様は、王族派の貴族達を味方につけていったらしい。

 その貴族達の屋敷には、フードを被った得体の知れない者達が訪れていたという話もある。


「プレア大神官様。反王族派の貴族の何人かの方々が、『大神官が認めないのならデュコ様には、王位継承を断念してもらい、遠縁の者に立ってもらうしかない』と仰っているようです」

「そうですか。その件に付きましては、もう一度デュコ様と話し合う時間を取るつもりです。早計に判断なされないよう、お伝え願えますか?」

「はい。しかし、デュコ様は、王族派を力で把握し、かなり強硬に動かれているようです。反対派の貴族の方々は、かなりストレスが溜まっておられる様子です。正面からの対立も辞さないと言われている方もいらっしゃるようです」

 と、報告に来た神官の方は言う。


「『フードを被った得体の知れない者達』は、反王族派の諸侯に来たという話はないのですか?」

 王族派を恐怖で従わせたのならば、同じようにしてもおかしくない。

「いえ。そのような話は上がってきておりません。それに、『フードを被った得体の知れない者達』も噂なので、王族派の貴族様方に尋ねても、怯えた表情で『知らない』と門前払いされるそうです」

「……。その件は、引き続き確認をお願いします。そして、諸侯には早まった行動はされないよう、お願いをしておいてください」

「はい。大神官様、畏まりました」

 報告に来た神官さんは、深々とお辞儀をして、大神官室を出て行った。

 

「プレア様。なぜ、わざわざ分裂するようなやり方をされるのでしょうか? 取り込むのなら、全員でないと大変かと思います」

 と、モイラが言う。

「そうね、モイラ。それに、あれ以来私達にも圧力を掛けてくる様子もない。だけど、諦めた様子もないですし。もしかしたら、……」

「もしかしたら?」

「噂の『フードを被った得体の知れない者達』も、そんなに沢山はいないのかも知れませんね。王族派を釘付けにするぐらいしかいないのかも」

「その者達が、こちらに来ることはないのでしょうか?」

 モイラが心配している。

「そうね。けれども、その『フードを被った得体の知れない者達』が、私の予想している者達だったら、こちらには来ないと思いますよ」

「そうなのですか?」

「ええ。なり立てですが、これでも私は大神官ですからね?」

「?」

 モイラは、頭に疑問符が出ていそうな顔をする。

「あら? わからない? 浄化してしまうからですよ。聖導会の神官なら誰でもできることですよ?」

「あの浄化の祈りでしょうか? そんなに強力なお祈りだったのですか? デュコ様とお会いになった時に話された『人外』も通用するのですね?」

「ええ、同じですよ。モイラ」


 モイラが、少し驚いた顔をしている。


「そんな、凄かったんですね。私達は」

 目を丸くして驚く、モイラの顔。

「正確に言うと、大神官が誕生したことで、聖導会の神官の皆様の力は強まっています」

「まぁ」

 驚くモイラ。

 もしかして、言ってなかったかしら?

「でも、それだけでも無いような気がします」

 と、モイラ。

「どうして?」

「デュコ様は。……。もしかしたら、プレア様の事を、……」

 と言いかけて、モイラは少し考えこんだ風にした。

 そして、私と視線が合うと、恥ずかしそうにスッと視線をそらした。

 

「いいえ。これは、モイラの思い違いかもしれないので。では、『人外』達に対する対処法を皆様にお伝えしておいた方が良いのではないかと」

「そうね。この事を聖導会の皆にも伝えてください。急いでお願い」

「はい、プレア様。ただいま」

 そう言って、気になる一言を残しつつ、プレアも大神官室を退出した。


 ディコ様は、混乱するように手を打っているのだろうか?

 

 大神官が次の後継者として承認し、その王が領民を(にえ)として『人外』達に捧げるのは阻止しなくてはならない。

 しかし、武力で戦う力のない聖導会では、ディコ様を抑える方法がない。


 頼みの反王族派の貴族達も、こちらに回せるほどの戦力は持っていない。

 王が不在の状態では、反対する者達を亡き者にしようと兵を差し向けてくるかもしないのだ。

 

 まだ、前の国は平穏を装って入るけれども、状況は悪いままだった。

 

「そうか。貴族同士が仲たがいし、内戦にでもなれば、それを口実に一気に攻めるつもりなのかもしれない。その戦力として『人外』をあてにしているのかもしれないわね。アクス様、クロス様。プレアの考えは合っていますでしょうか?」

 わたしは、一人自問自答した。

 

 代理や代行のアクス様、クロス様なら、敵ではなかったのでしょう。

 しかし、私が、大神官になってしまった。

 『人外』達は、困ったことになったのだろう。


 それも、ディコ様や『人外』達を焦らせている原因なのかもしれない。

 そうであるなら、急いで私を大神官にさせたクロス様には、感謝しかない。

 

 

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