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30 従者神官の務め

 とうとう、私は、アクス様に求められていた『大神官』なった。

 式典が終わり、儀式用の法衣を脱ぎ終えると、皆と急いでクロス様の御部屋に向かう。


「プレア様。さあ、こちらへ」

 神官の一人が、私をクロス様の元へと案内してくれる。

「モイラ。ご苦労様でした」

 ずっとクロス様の傍に居てくれたモイラに(ねぎらい)いの言葉を述べた。


「とんでもございません。どうぞ、こちらへ。プレア大神官様」

 モイラは立ち上がり、私をクロス様の近くへ来るように手を差し伸べてくれた。


 クロス様は、静かに眠っておられた。


「プレア大神官様。皆さま。皆さまが御部屋を外されてからのクロス様の御様子をお話いたします」

 モイラは、神官の皆様が部屋を退出された時から話し始めた。

 

「ここからは、プレア様御退出後になります」

 そして、ここから私も見ていないクロス様の御様子を話を始める。


「プレア様御退出後、クロス様は苦しそうにされていました。そして、私にこう命じました。『従者神官として、私が儀式の最後まで意識があった事をしっかりと伝えなさい。』と」

 恐らく王族側に付け入る隙を少なくする為だろう。

 後継者を決めずに亡くなられたら、その混乱に乗じて割り込んで来るかもしれないと懸念されていたのだろう。


「何度も、苦しそうにされておりました。その度に、御医者様が見て下さいました。あの状態では、御医者様にも出来る事は限られていましたが、クロス様は喜んでおられました」

 モイラは続ける。

「時折、大神殿から、経過を示すメモを頂きました。それを御指示してくれた方には、感謝いたします。クロス様も経過が分かり、感謝しておりました」

 そうなのね。

 気の利いたことを指示して下さった方は、誰なのでしょうか?

 

「そうして、式典が最後に近づいた時、勿体なくもクロス様は、私にも御礼を述べてくださいました。『人の死を看取るという大役を、良く果たしてくれましたね。ありがとう。これからは従者神官としての務めを、しっかりと行うように』と。そして、プレア様には、重い責任を、ひとり背負わせてしまいう事を悲しんでおられました。皆さまについては、これからプレア様を支え、乗り切って欲しい。この先が、どのようになろうとも。そして、悲しい事ばかりではありません。プレアにより、『大神官』の本来の力を見ることになるでしょうと仰っておられました」

「大神官の本来の力……、か?」

 一人の神官の方が呟かれた。


「はい。クロス様は、プレア様の宣誓が終わった知らせを聞いて「そうですか」と御返事されました。そして、しばらく後、眠るように御休みされました。とても、穏やかな御顔でした」

 モイラは、最後の様子を皆様に伝えた。


 一同が、皆静かに沈黙していた。


「では、プレア様が大神官になられたことを、王家の方々にも伝えないとな」

「そうですね。きっと反発されることでしょうな」

「いいや、人事権までは、あちらには無い。本来は、もっと早くに決めていても良かったはずだ。そこを王家のいざこざに巻き込まれてしまい。アクス様に酷い疑いと仕打ちを……」


 神官の方々が、それぞれ意見を述べ合い、これからの方針を話し合われていた。


「プレア大神官。王家への連絡や対処について、まとめましたらご報告に参ります。諸々対応は、我々にお任せください。今しばらくは、クロス様の傍にてお休みください」

「はい。ご配慮ありがとうございます。よろしくお願いいたします」

 私は、色々あり過ぎて、少し疲れていた。


「モイラ、プレア大神官様をお願いね」

「はい、かしこまりました」

「モイラも、休めるなら休むように。気を張っていて疲れているでしょうから。ね?」

「はい。ありがとうございます」

 モイラの事を、気遣って下さった。

「どなたか、私達(わたくしたち)の部屋に寄って頂けますでしょうか? 部屋で寝ている赤ちゃんとライラさんの様子を見て頂きたくて」

 モイラは、部屋で寝ている赤ちゃんとライラさんの事が気になっていたようだ。


 そして皆様は、お一人お一人、静かに眠られているクロス様に礼を述べ、退出されて行く。

 最後に、ずっと傍に居て下さった御医者様も、お帰りになった。


 部屋には、私とモイラだけになった。


「モイラ。あなたは隣の部屋で横になりなさい。明日は、クロス様の葬儀と忙しくなりますからね」

「はい。少し横にならせて頂きます。何かありましたら、お声掛けください」

 

 そして、部屋には、私とクロス様の二人きりになった。

 

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