表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/70

21 隣国の不思議な皇太子様

 私が神官になって、だいぶ経った。

 アクス様が軟禁されている状況は、相変わらずだ。

 ただ、王族側も、相手は元大神官代理とあって、酷い待遇で扱う事は無かったようである。

 

 ホッとした。


 私も神官としては、アクス様ほどではないけれども、皆から慕われるようになってきた。

 嬉しい。


 そんな時、私の国の隣にあるリンド皇国という所から、皇帝様と皇太子様がやってこられた。


 このように、他国の方も来られることが多い。

 前の国が、聖導会を目の敵にするひとつの理由でもあった。

 あくまで聖導会を守ると言う意味で、前の国は成り立っていた。

 だが、代々の王家の人で、意地の悪い方の中には、不可侵な聖導会を良く思わなくなっていたのだ。


 今回は、リンド皇国の重大な局面で判断を誤らぬために、神託を受けに来られたという。

 

 もちろん対応は、クロス様。

 慣れてきたとはいえ新米と変わらぬ私に尋ねてこられる事は、流石にない。

 というか、重いので嫌。


 リンド皇国皇帝様は、落ち着いた雰囲気で威厳があった。

 立ち振る舞いが、もう素敵。

 

 そして、そして、一緒について来たのが、恰幅(かっぷく)の良い警備の方。

 次に、強面(こわもて)の警備隊長さん。

 隊長さんよね?

 あれだけ偉そうだから。

 きっと、皇帝様と同じ御歳に違いない。

 貫禄あり過ぎですわ。

 名前は、ガルドと紹介された。

 フルネームは、ガルドイン・ラペリアルと言うそう。

 恰幅(かっぷく)の良い方が、警備隊長さんだった。


 そして、気になるのは皇太子様。

 お若いのに精悍(せいかん)な顔つきが、カッコよい。


 もうお子様もいらっしゃる模様。

 う――ん。

 御結婚されていたか。

 決して、残念なんかではありませんわ。

 

「クロス様。この度は、ご対応頂きありがとうございます」

 カッコよい皇太子様が、クロス様と若い神官の私にも丁寧な挨拶をして下さった。


「皇帝陛下。私は祭事の補助をさせて頂きますプレケス・アエデース・カテドラリース・ミーラクルムと申します。プレアとお呼び下さい。この度は、遠い所からおいで頂きありがとうございます。準備の方は整えてあります。どうぞ、こちらに」

 私は、大神殿へとご案内した。

 聖導会の神官達が立ち並び、深々とお辞儀をしながら、大神殿へ私達は向かって行く。


 クロス様を先頭に、リンド皇国皇帝。

 そして、皇太子様。

 その後ろに、あの隊長さんとガルドさん、私が続く。

 

(あれ? おじさんと思っていたのに、ガルドさんは若い気もする? 一体おいくつなんだろう? 最初、隊長さんかと思ったけれども。 だって、皇帝様の(そば)で警護をひとりで負かされる人が、一兵隊さんな訳ない。やっぱり隊長さんに違いない)


 その時私は、黒い騎士様の事を思い出した。


(この方も強そうだけれども、黒い騎士様とは、どっちが強いのだろう?)

 

 私は、歩きながら、ジ――っとお顔を眺めていた。

 少し露骨に見てしまっていたかもしれない。

 でも、そのガルドさんは、私の関心など気にもしておらず、ノッシノッシと歩いている。


(な、何よ。この人)

 何か無視されたようで、気分が悪い。


 前の国の近衛兵も、私達と一緒に付いて来る。

 そして、控えの()に一同は入っていく。


「リンド皇国皇帝様、皇太子様。こちらの御席でございます」

 案内役の神官が言った。

 リンド皇国皇帝様御一同は、席に座られた。

「ここでしばしお待ちください。最後の準備を整えております」

 

 すると、ずっと黙っていたガルドさんが立ち上がった。


「突然ですが、他の方の御人払いをお願いしたい。我が国の皇太子が、クロス様とプレア様の御二人と御話したいことがありますので」

 一緒に控えの間に居た神官と私は、ビックリ。

 ガルドさんは、その後黙ってしまう。


「え、えっと。あの――」

 戸惑う案内役の神官さん。


 まあ、そうよね。


「お待ちください。今回の御訪問は、神託を受ける事。この二人と話をすることは承っておりません」

 前の国の近衛兵の偉そうな人が言った。


(きっと、アクス様の件もあるから警戒しているのだわ。まったく)


 リンド皇国の皇太子は、クスッと笑った。

 私の様子を見ていたらしい。


(あれ? 顔に出てたかしら? 恥ずかしい)


「こちらに居られるお方は、リンド皇国皇帝第一王子。我が国の後継者の方である。控えられよ!」

 ガルドさんの声の圧が強い。


「う、で、ですが……」

 前の国の近衛兵の偉そうな人は、何か言いたげ。


 しかし、ガルドさんは、仏頂面(ぶっちょうずら)


「……。か、畏まり、ました」

 そう言うと、前の国の近衛兵達は、渋々退出していった。


「クロス様、私達も外でお待ちしております」

「はい。よろしくお願いいたします。心配はいりません。細かい事はプレアにさせます。終わりましたら、プレアを呼びに行かせます」

 クロス様に退室の挨拶をし、案内役の神官達も退出していった。


 控えの()には、リンド皇国皇帝、皇太子様、皇国の警備の偉い方、ガルドさん、クロス様。

 そして、私が残った。


「では、ご案内いたします」

 残った下っ端は私だけになったので、ご案内する為にドアを開けた。

 

 クロス様を先頭に。

 そして、リンド皇国皇帝。

 次に、皇太子様と警備隊長様。


 最後に、ガルドさんと私。


 先ほどの発言依頼、また黙ってしまうガルドさん。


「あの?」

 と私。

 どうしても気になって話しかけてしまう。


「……」

 答えないガルドさんに、私はムッとする。


「あの? ガルド様?」

「……。はい、何でございましょう?」

 やっと答えた。


「ガルド様は、皇国の剣士として一番強いお方なのでしょうか?」

 私は尋ねた。


「一番かどうかは存じません。ただ、サーフェイス殿下をお守りすることが出来るくらいは強かと思います」

 とぶっきら棒に答える。

 その答え方に、私は(むく)れた。


(サーフェイス殿下って、誰なの? 突然知らない方の名前を出されても困る)

 何の説明も無いので、誰か分からない。

 けれども、お偉い方ではあるのだろう。


 ふと視線が気になり、私は前を見た。


 警備隊長さんと皇太子様が、こちらを見ておられたようだ。

 ニッコリと笑っておられる。


 は、恥ずかしい。


 そして、皇太子様の視線は、クロス様の方へ向けられた。

 クロス様は、無表情で大神殿へと歩かれていた。

 そのクロス様の御姿を見られた皇太子様は、寂しそうなお顔をされた。


 大神殿の礼拝堂に到着した。

 そこからは、私が先に出て、祭壇前に移動して頂いたくよう案内をする。


 私は、クロス様に杖をお渡しした。

 後は、神託の義を進めるのみ。

 

 「リンド皇国皇帝様。お願いがございます」

 クロス様が、言う。

 神託の儀についての御説明をされるのだろと、次の御言葉を待った。


 「次の『大神官』は、このプレアが就任する事になっております。ですので、補助導師として祭事を伴わせたい。御許可を頂けませんでしょうか?」


 私は、耳を疑った。

 私が、次の『大神官』になるという話は、聖導会の一部の人しか知らされていない。

 それを、隣国の方に、簡単に話してしまわれた。


「かまいませぬ。では、プレア殿、お願いできますかな?」

 リンド皇国皇帝様は、表情ひとつ変えずに、これを了承して下さった。

 

(え、え――?)

 驚いたのは私。


 神官の資格は得たとはいえ、国の大事にまでは自信が無い。

 しかし、クロス様は、私もと言われた。

 そして、リンド皇国皇帝様も、これを了承された。


「まあ、緊張なさらずに。私からも、お願いします」

 皇太子様が声を掛けて下さる。


「はい。畏まりました。直ぐ準備をいたします」

 私は、着替え室に一旦戻り、補助導師としての衣装に着替え、クロス様の隣に並ぶ。


 その後は、滞りなく、神託を受ける祭事が行われていく。

 

 皇国の行く末を伝えるクロス様。

 その内容には、前の国と私。

 そして、皇国の関係が、世界の行く末の鍵となることが示されていた。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の☆☆☆☆☆評価欄↑をエイッと押して
★★★★★にしていただけると作者への応援となります!

執筆の励みになります。ぜひよろしくお願いします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ