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20 難航する交渉。そして、不穏

 その後も、アクス様軟禁と言う、ありえない状況を打開すべく力を合わせて、王族側と交渉を進めていった。


 そして、不穏な状況は、国中のあちらこちらで出始めていた。

 その不穏な状況も秘匿され、国民が知ることはなかった。

 それらの状況も、クロス様を苦しめていく。

 代理と言えども大神官の不在は、この国の安全装置が働かなくなることを、クロス様は知っておられるのだ。


 王族と聖導会の混乱は、極秘であったので国の内外で知る者はいなかった。

 だが、聖導会。

 特に、大神官の存在がどういう状況になるのかで、国が不安定になることが伝わってしまう。

 しかし、傲慢となった王族一同は、話を聞こうとしなかった。


 クロス様は、何度も会って話をしたが、「それは神話だ! 昔話だ!」と、取り合わなかったという。

 クロス様の御疲れの様子が、日に日に酷くなっているように見える。


 そんなある日。


 クロス様が、神官代理執務室で、真っ青な顔で椅子に座っておられた。


「クロス様? お体の具合でも割るのでしょうか?」

 私は心配になり、声を掛けた。


 すると、……。


「プレア! あなたは、私が一体どれほど苦労を重ねているか、わかっているのですか? まったく、あなたと言う子は!」

 クロス様が、鬼のようなお顔をされ、私を厳しく叱責される。

「!?」

 

 私は、あまりの突然の叱責で訳が分からず、その場に立ち尽くした。

 その後もクロス様は、あれやこれやと、激しくお怒りになられていた。

 

「ど、どうされたのですか?」

 慌てて、外から他の神官の方が入ってこられた。

 その間も、クロス様は、私への叱責が続く。


「クロス様! クロス様! どうか、落ち着いて下さい。 クロス様!」

 女性の神官の方が何名か入って来られ、私との間に入ってクロス様を(なだ)められた。


 それでも、止まらなかった。


「プレア。あなたは、こちらに来なさい。もう、大丈夫だから。ね?」

 私は、言われるまま、その方と一緒に執務室を退室した。


 クロス様は、顔を手でお隠しになり、椅子に座っていた。

 

「プレア。大丈夫よ。クロス様もお疲れが溜まっていたのでしょう。びっくりしたでしょう? 横になって少し落ち着いたら、聖務に戻りなさい」

「いえ。大丈夫です。いつも、クロス様の御叱りには慣れております。直ぐ聖務に戻ります。他にも、私にお手伝いできることがあれば、直ぐ参ります。その時は、お声を掛けてください」


 叱られるのには、実は慣れっ子なのです。

 あまり、自慢にはならないか?


「でも、クロス様に何があったのでしょう? あんなに御辛(おつら)いクロス様を見るのは初めてです」

「そうね、プレア。理不尽な理由でお叱りになることは、これまで一度もありませんでした。私も、理由が知りたいですが。でも、あの御様子では、話してくださらないでしょうけど。ですが、それほど深刻な状況のかもしれません」


 その神官の方との話を終えて、私は、いつもの聖務に戻った。


 会いに行きたい。

 アクス様に。


 しかし、会ったところで状況が好転することはなく、私が行くことで逆に状況が悪くなる。

 詳しく調べられれば、私も黒い騎士様と会っていたことが知れてしまうかもしれないからだ。

 

 前の様に勝手な事が、もう出来ない。


 そうして、月日(つきひ)が過ぎ去り、一年になろうとしていた。

 

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