タイの女の子
渡月橋を二人で渡った。
ロシア人のマーシャと僕だ。
二人は手を繋いで渡ったんだ。
僕は
「渡月橋を手を繋いで渡るとそのカップルは別れるんだよ」
と言った。
マーシャは「そんな事誰に聞いたの?」
「ん?渡月橋を渡って別れたカップルさ」
「私達もそうなるかしら?」
「ならないよ」
「どうして?」
「どのみち君はロシアに帰ってしまうんじゃないか?」
「それって別れ?」
「モスクワまで飛行機で10時間かかるんだぜ。それってしょっちゅう会えなくなるって事じゃん」
しかし、口ではそんな事言っても二人はとても嬉しそうだ。
渡月橋を渡り切って、竹林の方に向かう、
人力車に乗ったカップルがとても楽しそうだ。
僕はそれを写真に写した。
「僕らも乗ろうか?」
マーシャは首を振った。
「いいわ。歩いてても楽しい」
彼女は竹林の写真を撮っている。
僕はJR山陰線の写真を撮った。
ここから田舎に進むんだよ!
と僕は心に思った。
「そろそろ、西芳寺に行こうか?」と僕。
「え、なんで?」と、マーシャ。
「今日、西芳寺で君の誕生日を祝うんだろう?」
「そう、そうなのよ」
「君はロシア人だ。ロシア正教だからキリスト教だろ?」
「だって、ロシアに仏教寺院は余りないのよ。この貴重な時間を
仏教のお寺で過ごしたいわ」
嵐山から西芳寺までタクシーで結構距離があった。20分ぐらいかかった。
西芳寺に着くと、流石に「苔寺」というだけはあって、
木の根っこは苔だらけだ、でも美しい。
僕らはお寺の中に入った。
参観料は3千円と少し高かった。
僕らは、左がマーシャ、そして僕、そしてタイ人の女の子と並んで座った。
そして般若心経を唱えた。
僕はマーシャのために般若心経のローマ字訳を渡したが、
まったく付いていっていない。
右隣りのタイの女の子も、まったくわからず仕舞いだ。
これから写経だ。
こんな調子でこの二人に写経するなんて無理だ。
すると、お坊さんが、日本語で
「ここに自分が切望する事を描いて下さい」
と、言った。
僕は彼女らにそれを英語訳して伝えた。
マーシャはロシア語で、タイ人の子はタイ語(と思われる)で書いた。
僕らはそれらを終え、西芳寺の庭園を歩いた。
マーシャと僕は記念写真を撮った。
しばらく歩いていると、さっきのタイ人の女の子に出会った。
「やあ」
「今日は一人なの?」
「はい、そうです」
「タイ語でありがとうはコップンクンって言うんでしょ?」
「そうですよ。よく知ってますね?」
「大丈夫、気にしてないはマイペンライですよね」
「なんで知ってるんですか?」
「なんで知ってるんですか?」
「ドラマで見たんですよ。タイ人の男の子が日本に留学するドラマ」
するとマーシャが
「ロシアではタイのドラマとかあんまりやりませんね」
僕「おなかすかない?」
マーシャ「そこのお茶屋さんで何か食べようか?」
三人は抹茶アイスがあるお茶屋さんに入った」
タイの女の子は自己紹介した。
「初めまして、モックといいます。よろしく」
「私はマーシャ、ロシア人ですよ」
「僕はケン、日本人です」
マ「モックさんは、ロシアに来たことある?」
モ「いいえ、一度もありません。寒いですか?」
マ「私寒がりなんです。だから厚着してるでしょ?」
「僕も、ロシアに行ったことないんです。隣国なのにね」
モ「じゃあ、お二人ともタイにいらしたことないんですか?」
「ありません」
モ「どんな印象がありますか?」
マ「穏やかで平和なイメージがある」
僕「行ってみたいな」
店のおばさんが、抹茶アイスを運んできた。
「さあ、抹茶アイスですよ。召し上がれ」
マ「何これ?」
僕「これは―グリーンティーアイスクリームだよ」
モ「いいですねえ。美味しそう」
マ「苔寺が緑、抹茶も緑。いい感じでフィットしてるわ」
僕「おばさん、次のバスは何時ですか?」
「二時半です」
マ「舞妓さんに間に合うかな?」
「間に合うとも」
モ「え、舞妓さんが見れるんですか?」
僕「そうですよ。祇園っていうところに本物の舞妓さんが見られます」
モ「私も行こうかしら?」
マ「行こう。一緒に行こう」
食事が終わるとバスが来た。
河原を抜けて祇園まで行った。
祇園には、舞妓さん見たさに外国人が集まっている。
すると、ある外国人女性が、走りだした。
舞妓さん見たさに、カメラを正面から構えて写そうというのだ。
でも、見た目は通行妨害だ。
僕は何となく腹立たしくなった。
「やめとけや!」
しかし、日本語では通じない。
「Don't do that!」
マーシャ「何怒ってんの?」
僕「舞妓さんは職業だぜ。あんな風に通行妨害するのは業務妨害だよ!」
モ「どうかしたんですか?」
僕「あんな風にカメラを構えるのはマナー違反ですよ」
モ「それはいけませんね」
マーシャ「私もカメラ撮りたいな」
僕「邪魔にならないようにね」
こんな風に考えるのは神経質すぎるかな?
でも、外国人の女も行儀悪いと思う。