妹のぬいぐるみが病気になった
毎朝ぼくをパンチやキックで起こしてくる、くまのぬいぐるみのベアが今日は起こしに来なかった。そのせいでぼくは寝坊をして、朝ごはんは全部食べられなかったし、顔をちゃんと洗えなかったから目ヤニがついてるよって大好きなサラちゃんに笑われて、その日1日はとてもイヤな気分だった。
「ベア!」
僕は学校から帰ってすぐに、ベアの入ったカゴをのぞくと、ベアがぐったりとしていた。
「ベア?」
よく見るとベアは少し痩せてしまったように見えた。
妹の唯も「どうしたの」とベアを抱っこする。ベアは少しだけ目をあけたけど、それもつらいのかすぐに目を閉じてしまう。
「……なぜか、体から綿が……なくなってたんだ。そのせいで……動けなくて」
話すのもつらそうにそれだけ言うと、ベアはまた眠ってしまった。
(あ!)
僕は思いだした。昨日もベアは眠っていた。糸がほつれてそこから綿がのぞいていたから、僕は中から綿をほじくりだして、クリスマスツリーの飾りにした。ほんの少しだし大丈夫だと思ったから。
(どうしよう)
とりあえずツリーに飾った綿を戻そうと考えたけど、僕は「その綿、どこにあったの」とお母さんに聞かれた時に、学校でサラちゃんからもらったと嘘をついたのを思い出した。
「どうしよう! ベアが死んじゃうよ!」
唯が涙を浮かべて僕にしがみついてきた。妹が産まれた時からいつも一緒にいたベアは、唯にとって大切な宝物だ。
「に……兄ちゃんが病気を治してやるから泣くな」
僕はお兄ちゃんだから、しっかりしなくちゃなんだ。このくらいなんてことない。
綿がないなら代わりになるものをいれたらいい。
僕はまずティッシュペーパーをつめてみた。ベアは治らない。
いらなくなった靴下を切ってつめてみた。やっぱり治らない。
折り紙、ビーズ、ビー玉、プチプチ、何をつめても治らない。
「ありがとう……もういいよ……」
ベアが僕の指に手をポンと置いて力なく笑った。僕はその顔を見たら、涙がでてきて、
「ごめん! 僕のせいなんだよ!」とベアに謝って、ベアが病気になった理由を話した。
ベアは「綿が役に立ったならいいよ」とまた笑った。
僕はそれからすぐにお母さんのところに行ってベアが病気だということ、その理由も全部話した。
お母さんは僕の嘘を知っても怒らなかった。ただ「何をすれば治ると思う?」と聞いた。
僕はいっぱいいっぱい考えて、やっと気がついた。
「いたっ」
「大丈夫?」
少し元気になったベアがぼくの手元を心配そうに見ている。僕は今、針と糸を使って、ベアの穴のあいたところを縫い合わせている。お母さんにやり方を聞いた。
あとベアがツリーの綿はそのままにしてほしいと言うから、減っていた分は新しい綿を買ってつめた。
「お兄ちゃんチクチクできるのすごいね!」
唯も嬉しそうに眺めている。僕が嘘をついたことをお母さんもベアも唯に言わなくていいと言った。でも僕は唯に話した。宝物を傷つけてごめんと。唯は「これからは大切にしてね」と僕の頭をポンポンとした。
僕の縫ったところは縫い目がガタガタでカッコ悪いけど、ベアは元気になって、ありがとうありがとうと喜んでくれた。
「起きろ起きろ遅刻するぞ!」
僕は今日もベアにキックされて起きる。
今年もありがとうございましたと活動報告で締めていましたが、思いついたので書いてしまいました(^_^;)




