表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/15

北極星の魔女と騎士に挟まれた私 2


 ***


 それから北極星の魔女により、領地は荒廃していった。それでも、王国騎士団や辺境伯騎士団の活躍で、魔女は劣勢へと追い込まれていく。


 特に、一人の騎士の活躍はめざましく、英雄との呼び名が高くなっていた。


「あの。セイグル、その格好は?」


 なぜか執事セイグルは、遠征に臨む騎士の格好をしている。


「不肖の弟子が、己の全てを賭けて戦っているのです。力にならないわけには、参りませんので」

「えっと、現役を引退したのでは」

「少なくとも、現在の辺境伯騎士団長は、まだ私に敵いません」


 ……事実すぎて、止めるための言葉が、これ以上見つからない。


 執事として私のそばにいてくれたセイグルは、私が子どもの頃、辺境伯騎士団長をしていた。

 マスターの称号を持っていて、誰よりも強い騎士だった。


「……どうして」

「子どものように思っている、二人の未来が楽しみです。そのために、戦うのもまた一興でしょう」


 二人とセイグルは言った。


「……私にできることは、ないの?」

「信じなさい」

「……私は」


 その質問に対する答えはなかった。

 その代わり、私の頭をポンポンと2回やさしく叩いてセイグルは出陣した。


 不肖の弟子なんて、一人しかいない。

 それに、王立騎士団を現在率いているのは、アルベールだ。


「……なぜ、戻って来たの?」


 どこか、非現実的な毎日の中、アルベールの活躍だけは、毎日耳に入る。


 ある時は勇敢に、ある時は仲間を救って。


 庭に飛び出した私は、あの日アルベールが差し出してくれた、薔薇の垣根の前でしゃがみ込む。

 今は、もう薔薇の花は蕾すらつけていない。


 私は、なんの力もなくて、守られているばかりだ。


「アルベール」


 やっぱり、初夏の日差しに微笑んだように見えた笑顔は、本物だったんじゃないかと思う。

 それと同時に、やっぱり嫌われていたんじゃないかとも。


「……好き」


 その気持ちを心の奥底に押し込んで、私は立ち上がった。


「アルベールが、戦うなら」


 バサバサと、たくさんの本を積み上げる。

 私には、戦う力はないから。

 だから、この領地のために、できることを全部する。


「……アルベール」


 ただ、生きていてほしいと思った。

 私のこと、嫌いでもかまわない。

 

 それから三年。

 私とアルベールが、顔を合わせることは一度もないまま……。


 北極星の魔女は、倒されて、英雄は王都に帰還した。

 




 



最後まで、お付き合いいただきありがとうございます。下の☆を押しての評価やブクマいただけるとうれしいです(*^_^*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
いつも作品をご覧いただきありがとうございます。 たぶん、この作品が好きな方は、こちらもお好きだと思います。 ぜひ、↓のリンクから一読いただけると、うれしいです。 『飼い犬(?)を愛でたところ、塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。』
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ