北極星の魔女と騎士に挟まれた私 2
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それから北極星の魔女により、領地は荒廃していった。それでも、王国騎士団や辺境伯騎士団の活躍で、魔女は劣勢へと追い込まれていく。
特に、一人の騎士の活躍はめざましく、英雄との呼び名が高くなっていた。
「あの。セイグル、その格好は?」
なぜか執事セイグルは、遠征に臨む騎士の格好をしている。
「不肖の弟子が、己の全てを賭けて戦っているのです。力にならないわけには、参りませんので」
「えっと、現役を引退したのでは」
「少なくとも、現在の辺境伯騎士団長は、まだ私に敵いません」
……事実すぎて、止めるための言葉が、これ以上見つからない。
執事として私のそばにいてくれたセイグルは、私が子どもの頃、辺境伯騎士団長をしていた。
マスターの称号を持っていて、誰よりも強い騎士だった。
「……どうして」
「子どものように思っている、二人の未来が楽しみです。そのために、戦うのもまた一興でしょう」
二人とセイグルは言った。
「……私にできることは、ないの?」
「信じなさい」
「……私は」
その質問に対する答えはなかった。
その代わり、私の頭をポンポンと2回やさしく叩いてセイグルは出陣した。
不肖の弟子なんて、一人しかいない。
それに、王立騎士団を現在率いているのは、アルベールだ。
「……なぜ、戻って来たの?」
どこか、非現実的な毎日の中、アルベールの活躍だけは、毎日耳に入る。
ある時は勇敢に、ある時は仲間を救って。
庭に飛び出した私は、あの日アルベールが差し出してくれた、薔薇の垣根の前でしゃがみ込む。
今は、もう薔薇の花は蕾すらつけていない。
私は、なんの力もなくて、守られているばかりだ。
「アルベール」
やっぱり、初夏の日差しに微笑んだように見えた笑顔は、本物だったんじゃないかと思う。
それと同時に、やっぱり嫌われていたんじゃないかとも。
「……好き」
その気持ちを心の奥底に押し込んで、私は立ち上がった。
「アルベールが、戦うなら」
バサバサと、たくさんの本を積み上げる。
私には、戦う力はないから。
だから、この領地のために、できることを全部する。
「……アルベール」
ただ、生きていてほしいと思った。
私のこと、嫌いでもかまわない。
それから三年。
私とアルベールが、顔を合わせることは一度もないまま……。
北極星の魔女は、倒されて、英雄は王都に帰還した。
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