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逃亡

眩い光が俺たちの周りからゆっくり収まって消えると辺りは真っ暗に。

目を凝らさなくても分かる、さっきまで見えていた巨大な城がない。

なくなっていた。

それだけじゃない。橋も消えているし――

というか周りの景色が一変している。

周りには特に何もなくて……ああ、なるほど。

兵士たちが消えたんじゃない。

俺たちがあの場から消えたのだとすぐに分かったが、分からないことだらけでもあった。


「とりあえずは一難去ったようね」


リンは隣に居て、そう言って自分で頷いていた。


「……ここは?」


俺はリンに聞いてみたが、彼女は首を横に振った。


「さあ?」


「さあって……っていうか、どういうこと!? さっきのは何!? 俺の右手、どうして!!?」


「質問は一度に一つにしてよね。私の口は一つだけなんだから」


そう言ってリンは握っていた俺の手を放し、お手上げのようなポーズを取る。

俺は聞きたい事が山積みだったが、まずは今の状況から確かめることにした。


「ここはどこなんだ!?」


「知らないって言ったでしょ」


「知らない……? でも今のも、魔法で飛んだんじゃないか?」


「そのとおり」


「じゃあどうして!?」


「私にだって、どこに飛ぶか分からないようにして飛んだから」


「はぁ? それってつまり、ランダムに飛んだってことか!?」


「ラン…ダム?」


意味が分からない、といった風にリンは首をかしげた。


「ああ、ええと、行く当てもなく適当に飛んだのかってことだ!」


「ああ、そういうこと。だったらその通りね」


リンは頷いた。

ってマジか!?

じゃあボードゲームに出てくるカードの効果みたいに飛んだっていうのかよ……!?

でもどうして!?


「もちろん、普通だったら転移魔法は行き先を定めて使用するものよ」


察しのいい彼女は俺が疑問を口出す前から先に答えを語り始めた。


「ならどうして? って顔をしているけど、当然そうする理由があったのよ。そしてそれが、ケイタの二つ目の質問の答えにもなるでしょうけど」


「どういうことだ……?」


「あの城での出来事……くそっ! 忌々しい奴ら!!」


リンは毒づくと、足元に石ころでもあれば蹴り飛ばしそうなぐらいに地面をにらみ付けた。


「お、おい、待ってくれよ。俺には全く話の筋が見えないというか……」


訳が分からない。


「全く話が見えてこない。そう言いたいのも分かるわ。でもそれ以上に――」


リンは俺の目の前に来ると、突然ビンタした。


「この馬鹿っ!」


「……え?」


「どうしてあの時、あいつらに特攻したのよ!?」


特攻って……。


「いや、俺は別に……」


「あんた、もしかしてこれが夢の出来事とでも思ってるんじゃないでしょうね!?」


「え……いや、それは……」


図星だった。

というか、これは夢じゃないのか?

でもあのときの痛みは――


「言っておくけどね、これはあんたの夢なんじゃないんだからね! いい? わかった!?」


「……はい」


「ったく、それにあんたが仮に他の世界から本当に来たのだとしても、その部外者が私たちの世界を虚構……いいえ、この世界をあなたが見ている夢とでも思っているのだとしたら、まったく何様のつもりよ!」


「…………」


何も言い返せなかった。

まだ混乱していたし、この右腕だって――


「そうだ! 俺の右腕! あのとき、確かに斬られて、それで――」


「びーびー泣き喚いていたわよね。まったく、情けないったらありゃしない」


「でも右手は戻ってて、気付いたら治ってた……」


どうしてなんだ? そう聞こうとしてリンを見れば服の中に手を入れており、もぞもぞと動かすこともなくすぐに服の中から手を出すと何かを握っていた。

俺の方にその手を伸ばして握りを解くと、その手の上にはあのときに見たもの、ビー玉のようなものが二個あった。


「私が今、あんたを引っ叩いた理由の二つ目がこれよ」


そう言って「はぁ~」と次には大きな溜息を見せた。


「これ、何か分かる?」


「……いや、分からん」


「でしょうねー。まあ、超貴重な代物だってことは言っておくわ」


「そうなのか?」


「ええ。小さな町なら、これ一つで買い取れるぐらいのね」


「は? ……えぇ!?」


俺は顔を上げてリンを見た。

その顔は笑ってない。


「……冗談だよな?」


「いいえ」


そう答えるときには満面の笑みなのだから、意図的なものを感じる。

彼女はフッと笑みを消すと、再び口を開いた。


「この球はね、少しだけ時間を巻き戻すことができるのよ。まぁ、正確にはちょっと違うけど――」


でも今はこの説明で十分でしょうね、そう言って彼女は口を閉じた。


「……じ、じゃあ、それを一つを使って、あのとき俺を救ってくれたのか?」


「そういうこと。町一つ分の価値がある希少なこれを使ってね」


「…………」


そんなむちゃくちゃなアイテムが存在するのか!?

なんていうことは当然疑問に思ったが、その存在を俺が実証してしまっているのだから否定のしようもなかった

それより、そんな貴重なアイテムをあのときに使ってくれていたのか!?

なんだか悪いなぁ……でもマジで助かった。

あの痛みは……実にリアルだった。

そう、本当の痛みのように……。

……もしかして、ここは本当に夢の中じゃないんじゃないか?

俺はそう思えてきていた。

実際、目が覚めないし。

だが急にこんな訳の分からない世界で目覚めて、ここが現実ですよーと何度言われたって信じ難いものがあるのも事実だった。


「ん」


んっ?

なんだと目の前に意識を戻せば、リンはまだ手を開いて二つの玉を見せてきていた。


「ん」


「いや、んって言われてもだな……」


「これ、あなたに預けるって言ってるのよ」


「うん……はぁっ!?」


「さあ受け取って」


「そ、それ、超貴重なものなんだろ!?」


「ええ。とてもね。でも、同じくらいあなたに死なれても困るのよ。だからこの前みたいなことになったら――」


「……そんなことにはさせないつもりだけどね」


「えっ? 何か言ったか?」


「ううん、なんでもない。とりあえずこれはあなたが持っていて、と言うか持て、持ちなさい。いい?」


どうやら拒否権はないらしいので俺は頷いた。

彼女の手からビー玉のようなもの二つを受け取ると……とりあえずポケットにしまう。


「前から思ってたけど、その格好じゃあ心許ないわね」


「あ、それには俺も同意見だ」


「さっきは急いでたから仕立て屋による暇もなかったけど……いいわ、次の町で揃えましょう」





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