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【書籍化】異世界をフリマスキルで生き延びます。~いいね☆を集めてお手軽スキルゲット~  作者: 深見おしお@『伊勢崎さん』コミックス1巻9/27発売!


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76話 冒険者

 俺はキースとラウラと別れると、バットを腰のベルトに引っ掛けて、まっすぐ目的地へと歩いていく。


 いかにも助けに来ましたとばかりに走って向かうと、警戒されてしまう。修羅場へと向かう自分の心を落ち着けつつ、ゆっくりと歩いた。


 歩きながら言い争っている二人の声を聞いてみる。どうやら女性の方がなにか刃物を出したらしい。しかしその刃物は男に簡単に払われ、男がじりじりと迫ってきている。そんな状況のようだ。思わず走り出したくなる気持ちを抑えて、森の中を進む。


 やがて目的地にたどり着いた俺は、ガサガサと木々をかき分けて現場に足を踏み入れた。


 森の中にしては見通しのいい開けた場所。女性の両手を掴んで今まさに押し倒そうとしている男と、押し倒されそうな女性。二人が一斉にこちらに顔を向ける。


 男の方は無精髭を生やし、歳は三十歳前後だろうか。年季の入った革鎧を身にまとい、腰には長剣の鞘を帯びている。


 女性の方は二十代中頃と言ったところ。目つきがキリッと凛々しい美人。それから巨乳。


 眼鏡をかけており、長めの髪を後ろでくくった姿は理系女子といった印象を受けた。男が強引にことに及ぶ気持ちは理解できないが、ムラムラする気持ちだけはわからないでもない。


「こんにちは……。あ、あれ、どうかしましたか……?」


 俺は森の中で偶然出くわした狩人を装うことにした。そんな俺を見て、腕を掴まれたまま女性が大声を上げる。


「君っ! 急いで森を抜けて近くの村に報告してくれたまえ! この男の名前はドルフ! 冒険者でありながら、護衛の依頼を反故にした者だ!」


「うるせえ!」


「キャッ!」


 平手を打たれた女性はその場に倒れ込み、うずくまりながらもドルフをキッと睨みつける。そんな女性を一瞥した後、ドルフは俺に顔を向けると、鞘から長剣を引き抜いた。


「事情を知られたからには、お前も生かして返すわけにはいかねえなあ。……この辺の狩人か? お前には獣のエサにでもなってもらうぜ。これまでさんざ狩りをしてきたんだ、獣に恩返しをするいい機会だろ?」


「あわわ……。黙っているから許してえ……」


『ブフォッ、なんじゃその芝居。正直面白いんじゃが』


 ようやくグロショックから立ち直ったらしいヤクモからメッセージが届く。うるせえ、気弱な男を演じたほうが隙をつけるだろ。高校時代、三日だけ演劇部に入部した俺の演技力をくらえっ。

 

 俺は震えた声を漏らし、後ずさりながらバットを手に取った。そんな俺のバットをドルフが珍しそうに見つめる。


「ふん、奇妙な棒だな……村の工芸品か? 高く売れそうだし、後で俺がもらっといてやる」


「あ、あの、これは差し上げますう。ですから、命だけは助けてもらえませんかあ……」


「お前を殺して奪い取ればいいだけだ。こんな所にノコノコとやってきた自分の不運を恨むんだな」


「うわああ……許してくださあい~」


 俺は後ずさり、腰を引いたままバットを正面に構える。さぞみっともない格好に見えることだろう。


 その構えを見たドルフは、見くびるように口の端を吊り上げ、剣を右手にぶら下げたまま無警戒に近づいてきた――今だ。


「――フンッ!」


 俺は素早く距離を詰めるとバットをドルフに向けて振り下ろした。不意をつけたかと思ったが、ドルフはその一撃を左腕で受け止める。その痛みにドルフが顔を歪めながら後ずさった。


「ぐうっ……! お前、素人じゃねえな!?」


 手応えはあった。俺の中の【棒術】スキルが、今の一撃で骨が折れたと教えてくれている。


 本当は利き腕側の鎖骨の辺りを砕いて無力化させたかったのだが、三十歳前後のベテランゆえの経験か、ドルフの反応が早かったのだ。


「お姉さん、俺の背後に」


「あ、ああっ……!」


 俺の声に反応したお姉さんは、四つん這いになりながらバタバタと俺の背後へと駆け込む。人質に取られちゃやっかいだったからな。ドルフが突然の反撃と痛みに平静を失っている間にうまくやれた。


「ドルフさん、降参してくれれば、これ以上痛い思いをしないで済むけど……」


「てめぇ、なにを……勝ち誇ってやがるっ!」


 顔を真っ赤にして右手一本で剣を振り下ろすドルフ。だが、痛みの影響か、それとも片手だからなのか、剣に力が乗っていないようにみえる。


 俺はバットを構えると、ドルフの一撃を斜めに受け流した。剣はバットに刃を滑らせながら空を切る。


「――なっ!?」


 剣を流され驚愕の表情を浮かべるドルフ。俺はそのがら空きの胴にバットのフルスイングを放った。会心の一撃といっても過言ではない。まさにホームランだ。


「ぐはっ……!」


 ドルフは体をくの字に曲げ、口から胃液をこぼした。そこに追撃をかけるように、太ももの裏側に一本ずつ矢が突き刺さる。


 痛みに耐えきれず、ドルフはうめき声を上げながらその場に倒れ込んだ。どうやら勝負ありのようだ。


「キース、ラウラ、うまくいったな」


「うむ」

「うん」


 茂みをかき分けてキース兄妹が現れた。それを見てドルフが途切れ途切れに言葉を漏らす。


「なっ……なん、なんだ、お前ら……」


「ただの善良な狩人だよ。とりあえずふん縛るから静かにしてくれよな」


 ――ゴンッ


「あへぁ……」


 バットを頭に振り下ろすと、変な声を上げながらドルフはあっさりと気絶してくれた。これも【棒術】スキルのお陰だろう。よし、これにて一件落着だな。

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― 新着の感想 ―
[一言] 棒術スキルがあったら打率.286 20本くらい行けそう 投と走のスキルも覚えて異世界のオオタニサーンを目指そうぜ
[良い点] まあそこは棒術スキルってことでしょ
[良い点] いや頭は手加減むずいぞ 下手したら死ぬぞ [気になる点] まあころしても無罪っぽいけど
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