表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】異世界をフリマスキルで生き延びます。~いいね☆を集めてお手軽スキルゲット~  作者: 深見おしお@『伊勢崎さん』コミックス1巻9/27発売!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

115/292

115話 迎撃戦

 パンツ一丁のナッシュが前衛、弓を使う俺が後衛の隊列を組み、その場に踏みとどまりながらロックウルフを迎撃する。


 岩山の根本にぽっかりと空いた巣穴からはロックウルフが続々と出てくるが、ヤツらは群れるわりには連携攻撃なんかはやってこないようだ。俺はナッシュに守られながら、一匹一匹確実にロックウルフを仕留めていく。


 正面を向いて襲いかかるロックウルフの急所には当てにくい。だが走ってくるなら必ず首を上下させる。そのタイミングを見計らい上手く首元に矢を命中させるのだ。


 中にはそれを見て、首を守るように頭を下げて突っ込んでくる個体もいた。そういうヤツには、こちらも低い姿勢から地を這うような矢を撃ち込んでやる。


 これらはすべて【弓術】スキルと風を読む【聴覚感知】、距離を測る【空間感知】なんかの相乗効果だろう。我ながらすごい芸当だと思うよ。


 それでも数が数だけに、打ち漏らしたり仕留め損なったものもいた。それらはナッシュが見事な剣の腕前で倒していく。本気で振るったナッシュの剣の鋭さは模擬戦とは段違いだ。



 そうして気がつけば、俺たちの前方はロックウルフの死体だらけとなった。そういえば、これらもきっとツクモガミに出品できるはず。後でナッシュに分け前を要求しないとな――そんなことを考える余裕すら出てきた。


 そして最後の一匹を仕留めたところで、ついに巣穴からロックウルフが出てこなくなった。


 苦笑を浮かべながらナッシュが俺の方へと振り返る。


「ははっ、俺の出番はほとんどなかったな。まったく大したもんだよ」


「いやいや、ナッシュさんが前にいるお陰で、俺も安心して弓が撃てました。まあできればズボンは穿いてほしかったですけどね」


 パンツのゴムが緩かったのか、剣を振った後に半ケツになったりしてたからな。それを視界に入れながら、真剣に弓を構えていた俺の心中を察して欲しい。


「うぐっ……。それについてはすまなかったな。その詫びと言ってはなんだが、ロックウルフは俺の倒した分も含めて、お前が全部もらってくれないか?」


「えっ、いいんですか?」


「ああ、お前がいなければ、ロックウルフ相手にどうなっていたかわからないし、なんとか切り抜けたとしてもドルフを逃したことで、俺もアレサも罰を受けることは免れなかっただろう。手間をかけさせてしまった、本当にすまなかったな」


 そう言って、俺のような歳下に頭を下げるナッシュ。まったくこのイケメンは心もイケメンだね。俺は手をぶんぶんと左右に振った。


「いやいや、魔物が貰えるなら俺も得したし、気にしないでいいですって。それじゃちょっと待ってくださいね、死体を回収してく――」


 口をつぐんだ俺をナッシュが訝しげに見つめる。


「ん、どうしたイズミ? ……いや、これは……」


 俺の【気配感知】に引っかかった何かに、ナッシュも気がついたらしい。


 ナッシュは【気配感知】を持ってはいなかったが、それでもわかるくらいの濃厚な存在感。それをロックウルフの巣穴の方から強く感じるのだ。


「……ナッシュさん、なにか心当たりありますか?」


 俺が声を落としながら尋ねると、ナッシュがじっと巣穴を見据えて険しい顔で答えた。


「……巣穴を共有しているロックウルフは、外敵から身を守るためにお互い協力関係を築いている。……しかし、まれに一匹の強大なオスが複数のコミュを支配しているケースがあるんだが、まっ、まさか……!」


 ナッシュは目を見開くと、じりじりと後ろに下がりながら言葉を続ける。


「マズいぞ、イズミ。ロックウルフの支配者(ルーラー)は依頼ランクBだ。とても俺たちだけじゃ倒せない。今すぐ引き返して馬車で逃げるぞ!」


「いや、もう手遅れだと思います……」


 俺の空間感知が今まさに、穴ぐらから這い出ようとしている存在を感じている。今から背中を見せるのは、背後から襲ってくださいと言っているのと同義だろう。


 俺は一度息を吐くと、ナッシュとは逆に足を一歩前に進める。


「ナッシュさん、ちょっと下がってください」


「なっ、なにをする気だ、イズミ?」


 うろたえるナッシュを横目に、俺は矢筒からカーボンファイバー製の矢を掴み取った。


 それと同時に巣穴から、静かな怒りを内に込めたような赤黒い目をした、大型の魔獣がゆらりと顔を出し――


「先手必勝! イーグルショットオオオオオオオッ!!」


 問答無用で奥の手をぶっ放した。


 ちなみに名前を叫ぶのは、何度か練習した結果、名前を叫んだ方が魔力の()()がいいからだ。


 俺の魔力を存分に纏わせた緑の矢は、満を持して登場した濃灰色の魔獣の顔にぶち当たり――


 ドッゴオオオオオオオオオオオオオオンン!!


 周囲の岩山を巻き込みながら、まるで爆発したような轟音を響き渡らせた。


 砂煙が舞い、土砂がこちらまで降り掛かってきたが、俺は即座に【空間感知】と【気配感知】を全開にして周囲を探る。


 ロックウルフルーラーは……あそこか。土砂に埋まった巣穴の中に大型の魔物の存在を感じる。しかしその存在からは生きているような気配はまったく感じられない。


 よし、今の一撃で仕留めることができたようだ。


「は? え? なに、今の?」


 あんぐりと口を開けたナッシュが、俺と爆心地を交互に見ながら呟く。


「言ったでしょ? 弓のほうが得意だって」


 俺は少ししびれる手をぷらぷらと振りながらナッシュに答えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作『ご近所JK伊勢崎さんは異世界帰りの大聖女
~そして俺は彼女専用の魔力供給おじさんとして、突如目覚めた時空魔法で地球と異世界を駆け巡る~』

タイトルクリックで飛べます! ぜひ読んでくださいませ!

書籍「フリマスキル」発売中です!
ぜひぜひご購入をよろしくお願いします!

↓クリックで特集ページに飛びます。
i000000

作者Twitterはコチラ。更新情報なんかも流してます。お気軽にフォローしてくださいませ。
https://twitter.com/fukami040

「異世界で妹天使となにかする。」もよろしくお願いします!

i000000

i000000


ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
[気になる点] 射撃スキル…?
[一言] かっけぇぇぇぇぇぇ!
[一言] サイバイマンに少し梃子摺って見せてベジータ相手に開幕10倍界王拳かめはめ波撃つような所業
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ