表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/292

1話 今日まで日常

「今日の仕事はおしまいっと」


 俺はパソコンをシャットダウンさせて椅子から立ち上がると、すでに帰り支度を始めていた後輩の田口に声をかけた。


「おーい、田口。久々に定時で帰れるんだし、俺がおごるからメシでも食いにいかね?」


「えっ! まじっすか、ごちっす! ……って言いたいところなんスけど、今日だけはダメなんスよ~」


「へえ、なんか用事でも入ってたのか? それともまさかお前、恋人ができたとか……?」


「実はそうなんです! ……って言えないところが悲しいところッスけど、今日は副業の予定が入っちゃいましてね」


「はあ? 副業?」


 ウチは申請さえすれば副業はOKだが、田口がやっているとは知らなかった。田口は照れくさそうにスマホを取り出すと、「フリマアプリっス」と言いながら俺に画面を見せてくれた。


 そこには青や白のビーズを銀色の糸でまとめた、なんともかわいいネックレスが写っていた。出品者と書かれた欄には『タグッチ』と記載されている。


「これって、もしかしてお前が?」


 ちなみにこいつの本名は田口晶(たぐちあきら)。やたら四角が多い名前である。


「そっス。コレ、自分が作ったんス。今まで言ってなかったッスけど、自分、実は趣味でアクセサリー作ってて、それをこのフリマアプリで売ってるんスよね。それでさっきアプリを見たら、同じのをもう一つ欲しいってコメントがきてて、勢いでハイって言っちゃったんスよ~。ってことで、これから家に戻って急いで作って、明日には送らないといけなくて。うへへ……」


 仕事が増えたってのに田口の顔は嬉しそうだ。収入が増えるのが嬉しいのか、それとも趣味で作ったアクセサリーを気に入ってもらえてうれしいのか……まあその両方だろう。


「そういうことなら仕方ないな。また今度飲みに行こうぜ」


「ッス! んじゃお先に失礼しまっス!」


 なぜか敬礼をした田口はくるっと後ろを向くと、さっさとオフィスから出ていった。


 アニメ漫画ゲームなんかが趣味なのは知ってたけど、まさか手芸にまで手を広げているとはな。多趣味なヤツだ。


 俺は田口を見送ると、部署の中を見回して他に飲みにいくようなヤツを探す……と言いたいところだが、いまどきは先輩から飲みに誘うのもハラスメントなんて言われる時代だ。


 誘うどころか、誘ってくださいとしつこいのは田口くらいで、他のヤツはあからさまに嫌な顔するんだよな。しゃーない、今夜は一人で飲むとするか。



 ◇◇◇



「はぁあ~。飲んだ飲んだ~っと」


 思わず上機嫌に独り言がこぼれるくらい、馴染みの居酒屋で独り酒を楽しんだ帰り道。


 今夜は店の大将が新しく仕入れたというお高い酒を、勧められるままに飲みまくったのだ。たしかにうまかったのだが、そのぶん財布の中身が軽くなってしまった。今月はもう飲みに行けないかもしれない。


 そんな懐事情のせいか、田口の言っていたアプリのことがふと気になった。


 ……フリマアプリか。ちょっと調べてみるかな。ウチにも使わなくなった服や小物はいくつかあるし、簡単に取引できるのなら売っぱらって、酒代の足しにでもなってくれればありがたい。


 俺はスマホを片手にアプリを検索。これまでフリマアプリに興味はなかったけれど、それでもこの時代、多種多様のフリマアプリやフリマサイトが世間にあふれていることくらいは知っている。


 そこでは自分が不要になった物や田口のように自作の小物を売ったりとか、もちろんそれらを買うことだってできる。


 さらにはスキルを売るということで、注文を受けたイラストや音楽の販売や、小説や漫画の添削の橋渡しをするサイトまであるらしい。


 田口が使ってるのはどんなアプリだったっけか。どうせなら同じのがいいよな、よく見ておけばよかった。そんなことを考えつつ、アプリストアでフリマアプリの検索画面結果を適当に流し読みしていると――


 突然目の前が真っ暗になり、足元から地面が無くなったような感覚に襲われた。


 俺はそのまま落ちて落ちて落ちて――何もできないまま、意識は闇の中へと沈んでいく。


 ……意識を失う寸前、暗闇の中で光り輝く白髪の老人と金髪の美女が言い争っている。そんな光景が見えたような気がした。

「異世界で妹天使となにかする。」に続き二作目となります。ぜひともブックマークをよろしくお願いします\(^o^)/

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作『ご近所JK伊勢崎さんは異世界帰りの大聖女
~そして俺は彼女専用の魔力供給おじさんとして、突如目覚めた時空魔法で地球と異世界を駆け巡る~』

タイトルクリックで飛べます! ぜひ読んでくださいませ!

書籍「フリマスキル」発売中です!
ぜひぜひご購入をよろしくお願いします!

↓クリックで特集ページに飛びます。
i000000

作者Twitterはコチラ。更新情報なんかも流してます。お気軽にフォローしてくださいませ。
https://twitter.com/fukami040

「異世界で妹天使となにかする。」もよろしくお願いします!

i000000

i000000


ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
[良い点] ラーニングのみで検索して遭遇。 総合ポイント4番目でした。 あらすじにある『いいね。』の使い方が特徴的なのかな。 どんなものが楽しみに拝読したいと思います。
[一言] いもてんからきました。 いもてんのふんわり感は好きなので、今作も期待してます
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ