第八話、ネコジャラシ
本格的な、機種変換訓練が始まる。
訓練に使われる機体は、”ゲッカビジン”とは別のものが用意された。
飛行艇”ネコジャラシ”である。
”シラフル湖”のほとりに、”イザナミ”の試作量産機になる”ネコジャラシ”が、二機浮かんでいる。
”魔紋”が機体に描かれていない以外、ほぼ同じ機体である。
「ほとんど(イザナミとネコジャラシの)形は変わらないものね~」
にっこり
イオリが少し赤くなった顔をそらした。
「ほほう! これが新型機かっ」
クルックが言った。
イオリとクルックは、小さな風防のついた、オープンコックピットに乗り込む。
いざというときにすぐ出れるように、オープンコックピットになっていた。
機体も、明るいオレンジ色である。(←エマージェンシーカラー、MA-1の裏地と同じ)
「今日は、初飛行だ~」
「可変翼は最大まで広げろ~」
「とりあえず、少し上げるだけでいい~」
無線から、メルル―テ教導隊隊長の声がした。
上空には、”ラクシャ級飛行艦”が浮かんでいる。
「「了解」」
「行ってらっしゃ~い」
ファラクが手を振りながら桟橋から離れた。
桟橋に機体を繋いでいるもやい(ロープ)を外した。
「魔術式ジェット始動」
カチリ
搭乗者の魔力を強制徴収。
シュ、シュコオオオオウ
ジェットが始動した。
イオリはオープンコックピットから、腕だけ出して、ハンドサインで「行ってくる」とファラクに送る。
ゴーグルを着けた。
今、可変翼は全閉状態だ。
二機がゆっくりと、桟橋の前まで移動する。
「離水の時は、可変翼は全開だよ~」
コックピットの壁につけられた、円形のハンドルを持ち、クルクルと回す。
コックピットの真ん中に、上から見下ろした機体の絵。
その絵の翼が連動して開いていく。
手ごたえは軽い。
6回転で全開だ。
(ソビエトのMIGー23フロッガーの可変翼は手動だ。Fー14トムキャットはコンピューター制御になっている)
「180度っと」
イオリが両翼を目視で確かめる。
「遅いぜ~」
クルックがスロットルを上げ始めている。
「垂直尾翼がないから、ヨーイング出来ないよ~」
機首を左右に振れない。
機体の向きを変えるには、左右に傾けてロールさせる。
「イオリ機、離水させる」
慎重に離水させた。
5メトルくらい上げて、すぐ着水させる。
これを繰り返した。
「この~、いうことを聞け~」
クルック機が、バッチャン、バッチャンと離水と着水を繰り替えしていた。
◆
「”ネコジャラシ”の初飛行は、どうだった~」
”キサラギ”の会議室で、ブリーフィングだ。
「想像以上に、じゃじゃ馬ですね」
イオリはチラリとファラクを見た。
?
な~に?
ファラクが、笑いながら小首をかしげる。
「まともに飛ばんぞ、ありゃ~」
クルックだ。
最後の方は、強引に乗りこなしていた。
「今度から、少しづつ高度を上げてくれ」
「ちょっとずつ、直していこう」
イナバ整備長だ。
今日は、ラクシュ級の操艦をしていた。
「バラしてきます」
特に、荒く使われたクルック機。
イオリが席を立つ。
「明日までに直せるの~」
それも二機。
良い笑顔で親指を上げる。
まかせろーー
ファラクが、イオリの良い笑顔に、顔を赤く染めた。




