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飛行艇を愛でていたら、砂漠の踊り子さんに愛でられることになったのです。熱砂の潜砂艦物語  作者: トウフキヌゴシ
第一章、イザナミ

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第七話、ゲッカビジン

戦闘艇の採用試験なら、クルック君が正解。

「ファラクを後ろに乗せて飛べ~」

 メルル―テが、命令を出した。


”イザナミ”のパイロット選考が始まった。


 ファラクは、”イザナミ”の船巫女である。

 当然、副操縦席に乗ることになる。

 だが彼女はまだまだ、飛行には慣れていなかった。 


 ”シラフル”湖のほとりに、二機の”ゲッカビジン”が並んで浮かんでいる。

 一機は、イオリ、もう一機は、クルックが使う。


「俺が先だ~、とっとと乗れー」

 クルックがコックピットに向かう。


「ちょっと~、大丈夫なの~」

 飛行服を着たファラクが、不安気について行った。


「俺の後ろに乗れるのを光栄に思えっ」

  

「はああ?」

 ファラクが後席に乗り込む。


 ドオオオオン


 クルックは、急発進、急加速、急上昇、激しい空中戦闘機動(ACM)までした。

 

「これでどうだっ」

 俺の腕をみろー


「あいつはアフォなのか?」

 イナバがメルル―テに振り返った。


 ”イザナミ”という機体名までファラクが決めた。

 砂漠に古くから伝わる女神の名前らしい。


「選ぶのは、ファラクなのにね~」

 メルル―テが小首をかしげた。


「”ゲッカビジン”のフライ・バイ・ワイヤーは繊細なんだぞおお」

「乙女の柔肌やわはだを触るように、慎重に、丁寧ていねいに操縦しろおお」

 イオリだ。


 そこは、ファラクの心配をしようよ~(しろよお)

 メルル―テとイナバは、心の中で盛大に突っ込んだ。



 降りてきたファラクはそのままトイレに駆け込んだ。

 機内で吐くという、乙女の尊厳は何とか守ったようだ。


「大丈夫~」

 メルル―テがファラクを気づかった。

 顔色が青い。


「な、何とか大丈夫」


「無理しちゃだめよ~」


「……いけるのか?」  

 イオリが声をかける。


「い、きます」


「……そうか……」

 イオリは、手を出してファラクが乗り込むのを手伝った。


「まあっ」

 

 飛行艇を介すると、限りなく紳士になるイオリである。


 操縦はクルックと対照的だった。



 緩やかな発進に、穏やかな加速、優しい上昇。

 ロイヤルサル~ンという感じだ。



「あら~、イオリも隅に置けないわね~」

 メルル―テが空を見上げている。


「う~ん、クルックもイオリも飛行艇に乗ったら、性格が変わりすぎないか?」

 特に、イオリ

 

「はっ、女々しい操縦だなっ」

 クルックが、ふんぞり返っていた。



 ”シラフル湖”は最近、観光地化している。

 イオリは、シラフル湖の岸辺をくるりと回った。

 領都”シルン”の上空や、北東の湿原地帯。

 湖面ギリギリを飛んで、水面に白い線を描いたりした。



「すごい、すごい」

「きれいね~~」

 ファラクは、吐いたことを忘れて、はしゃいでいる。



 大きく円を描いた緩やかなループ(宙返り)。



「わああああああ」


「どうだ、飛行艇は最高だろうっ」

 イオリがファラクに振り返る。


「うんっっ」

 イオリは満足気に笑った。

 彼は、ファラクの飛行艇のひどい記憶を塗りかえた。

 彼なりの意地を見せたのだ。


 当然、この試験はイオリの圧勝だった。


「な、なぜだっっ」

 クルックが愕然がくぜんとしている。


「あ~、少し反省した方がいいんじゃないかな?」

 イナバが言いにくそうにしていた。



 ファラクは、クルックの粗い操縦のせいとはいえ、吐いてしまったことを反省していた。

 飛行艇のパイロットの訓練をすることにした。


 朝の六時だ。


「おはようっ。 イオリっ」


「…ああ…」

 朝の走り込みだ。

 イオリは、毎日走っている。

 格納庫のこもっていても、訓練の時だけは出て来ていた。


「行こうっ」


 二人で走り始める。

 色々なことを話しながら走った。

 ファラクが一方的に話している場合が多かったが。

 

 走り終わった後、朝食を一緒に取った。


「……早朝デートか……」

 周りから暖かい目で見られていることを、二人は気づいていない。



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