第六十六話、ハクブツカン
潜砂艦“アマテラス”は休暇の為、砂上都市“タルフィーヤ”に帰港している。
二日間の予定だ。
「イ〜オリ、今日はここに行かない?」
ファラクが、チラシを見せた。
「タルフィーヤ自然史博物館?」
イオリがチラシを見た。
「古アールヴの歴史とか、水晶船の展示もあるみたいよ〜」
ファラクもイオリとは、付き合いが長い。
基本、イオリは飛行艇の整備で、休みを使うはずだ。
「へええ」
水晶船のしくみかあ
「行こうか」
イオリが、いそいそと腰を上げた。
「ふふふふ〜ん」
オッケ〜〜
ファラクが、勝ち誇ったように笑った。
◆
“タルフィーヤ自然史博物館”は、都市の中央にあった。
入館料を払い入館する。
正面のガラス越しに、巨大な“クリスタル”が浮かんでいるのが見えた。
5メトルくらいの”オベリスク“のように見える。
床の金色の魔術陣が、時折キラリと輝く。
「”コアクリスタル“だ」
イオリが、見上げた。
「凄いなあ」
”都市の浮遊“と”給水“を担っていると、説明文に書かれている。
「都市の地下は、ほぼ全てが貯水槽って書いてあるわ」
砂漠出身のファラクだ。
水の大切さは、身に染みている。
博物館は、”コアクリスタル“を中心に、螺旋状なっている。
常にガラス越しに、コアクリスタルが見える。
コアクリスタルを背中に、緩やかに上がりながら、展示を見ていくことになる。
最初の展示は、砂漠にいた古代の生物だ。
「へええ、魚やワニの化石?」
「昔、ここいらは豊かな海だったみたいだよ」
イオリが、アンモナイトの化石を、指差しながら言った。
「うひゃあ」
ファラクが、可愛い声をあげる。
巨大な古代ザメ、”メガロドン“の複製模型だ。
「ギドラ種?」
さらに大きい、三つ首のメガロドンの模型があった。
緩やかに坂を上がる。
人類史の展示に入った。
「人類が、この世界に、喚ばれたのが、一万年くらい前みたいね」
竜の女神に、大量に召喚されてだ。
◆
この世界は竜の世界。
全ての人類は、異世界転移者の子孫である。
この世界は竜の女神が創造したり、召喚したもので出来ている。
しかし、“魔術“や”魔族”は違う。
“竜の女神”を一方的に執着している“魔の神”が、この世界に勝手に送ってきているのだ。
魔は、世界(女神)を侵す。
ゆえに強力な力になるのだ。
砂水晶は、“魔術”を抑え込む力が強い。
“魔”をコントロール出来るということである。
◆
「アールヴの民の一部が、“竜砂帯”を越えたのは千年くらい前か」
砂漠を渡る民の絵がある。
「砂水晶に魔紋を入れる様になるのは、この後ね」
ファラクは、自分に身体の魔紋を見た。
「凄いなあ」
砂水晶の展示に入った。
三十センチくらいの砂水晶で、船が浮く。
「い・き・ま・しょ・う」
ファラクは、イオリを、水晶船の展示から引っぺがすのに大変苦労した。
博物館を登り切った。
コアクリスタルの上部が見える。
展望台になっていた。
眼下には、複雑な城塞都市の街並み。
茶色い砂漠。
透明な“紅の砂漠”。
微かに洞穴も見える。
イオリとファラクは、並んで見渡した。
指を絡めて手を繋ぐ。
「あっ」
「あっ」
ふと、横を見ると同じように手を繋いだ、アル評価官とマリア女史がいた。
「け、研究のために来ているのだ」
マリアが、大慌てで手を離しながら言った。
二人とも顔が真っ赤だった。




