第六十五話、サイクツ
アマテラスは、艦体を地底湖の岸につけた。
「サンプルを集めるよ」
色々な大きさの水晶を、アマテラスに乗せる。
乗せきれないものは、記録水晶にホログラフとして写していく。
飛行艇の格納庫が一杯になった。
「こんなに沢山の水晶は、初めて見ます」
サーラが驚いていた。
「一旦帰ろうか」
エルザードが、アマテラスに浮上の指示を出す。
シュパアアア
垂直方向の噴射に、地底湖の水面が波打つ。
なるべく、ドラゴンの邪魔をしないようにゆっくりと上昇した。
飛行艇二機もついてくる。
地上で、ローズヒップと合流した。
「こりゃあ、たくさん取ってきたねえ」
「こちらに移しておくかい」
水晶は、キャラバン船に移された。
王都“エンドラ”に報告しに帰った。
◆
王都に到着した。
『これはすごいですよっ』
担当官が興奮気味に大声を出した。
『まず、この国全体で取れる砂水晶の、約半年分あります』
キャラバン船の倉庫に積まれている水晶を、指さした。
『大きさもさることながら、傷がほとんどないですね』
別の担当官が、水晶を手に取った。
砂の中を流れてくるから、傷はどうしてもつくのだ。
『どうやって掘り出したのですか?』
『ひろった』
エルザードが気まずそうに言った。
『えっ』
周りの担当官が振り向く。
『おいっ、このホログラフを見てみろっ』
悲鳴が上がっていた。
『えーと』
ホログラフを見せていたマリアが、担当官に詰め寄られている
『こ、これっ、5メトラルくらいあるっ』
「5 メトル?」
『しかも、この透明度っ』
「???」
『砂上都市の“コアクリスタル”に使えるっ』
ちなみに現在、砂上都市は王都も含めて、五都市。
前回見つかったのは、ほぼ百年前である。
キャアアアア
絶叫だ。
次のホログラフに、同じくらいのものが、三つ写っていたのだ。
『ア〜ルク殿下〜』
王室に報告が入る。
国をあげての大騒動になった。
◆
「あ〜、いや、それはちょっと」
アル評価官は、困っていた。
「売って、ください、アマテラスを」
王国の重鎮が、頭を下げる。
丁寧に新アルヴ語だ。
現在、水晶を取りに行けるのは、アマテラスだけである。
「キャプテン〜」
資金や資材の管理は、主計課のアルの担当だ。
余りにひつこいので、エルザードが丸投げしてきたようだ。
エルザードと目が合う。
プッとエルザードが吹き出した。
「う、売っちゃいますよっ、アマテラスッ」
「冗談だよ、冗談っ」
エルザードが大笑いした。
結局、調査のたびに水晶を持ち帰ることと、資金も含めて、全面的な協力を取りつけた。
最終的には、レンマ王国から飛行船を買うことになるのだが、それは別の話だ。
◆
『こちらアマテラス、出港許可を』
『こちら、タルフィーヤ、出港どうぞ』
『気を付けて行ってきて下さい』
砂上都市“タルフィーヤ”は、“紅の砂漠”のすぐ近くまで移動していた。
協力の一つとして、砂上都市“タルフィーヤ”を専門に派遣してくれたのだ。
取れる水晶の利益は、計り知れないのだが。
「まず最初は、コアクリスタルを回収だな」
地底湖の安全を、確認しながらの作業だ。
「エンシェントドラゴンの住処なら、エサになる巨大生物がいるからな」
とりあえず、地底湖の岸にはいないようだ。
何度か往復し、コアクリスタルになれそうな水晶は、五つになった。
王国に記念日が作られた。
”五都市追加記念日“である。
◆
「う、うわあ」
ローズヒップは思わず声を出した。
バシバシ
パリパリ
船の外からすごい音がする。
キャラバン船は、竪穴に降りたアマテラスを待っていた。
”紅の砂漠“に”砂嵐“が来ている。
「お、恐ろしいい」
「絶対に窓やシャッターを開けるんじゃないよっ」
凄い勢いで、水晶のカケラが宙を舞っている。
砂嵐が去った。
「この切り口っ」
まるで鋭い刃物で切られたようだ。
仕舞い損ねた木のテーブルが、バラバラにされていた。
このことは、全隊員にホログラフ付きで、周知された。




