第六十二話、フナデ
潜砂艦“アマテラス”が、帰国してから二年の月日が流れた。
真っ白な砂漠の結婚衣装を着た、フィッダがローズヒップの付き添いで前に進む。
二年の間にクルックは逞しく精悍に、フィッダは丸く女性らしくなっていた。
クルックにフイッダが受け渡された。
銀髪で赤い瞳がクルックを見つめる。
帰ってきてから二年。
二人は順調に愛を育み、18歳で成人してから結婚した。
今日が結婚式である。
ローズキャラバンの旗船である、巨大船の屋上である。
ローズキャラバンは順調に大きくなり、3隻の船を持つに至った。
三三九度の盃の後、一段下の飛行艇格納庫から“イザナミ”が飛び出した。
ウアアアア
歓声が響く。
イオリとファラクの乗る“イザナミ”のアクロバット飛行だ。
スモークで空中に絵を描く。
最後に、空中に大きくハートマークが描かれた。
歓声と拍手が起こる。
「フィッダ、幸せにするぞ」
「んっ、よろしくおねがいします」
大空に描かれたハートマークの下、二人は口付けをした。
◆
「結婚かあ」
イオリが、飛空艇を着船させながら呟いた。
格納庫の奥に“イザナギ”が見える。
「あら、わたし達も一年後、でしょ」
イオリの実家は、辺境伯。
ファラクはアールヴ王家だ。
婚約期間が必要だ。
さらに、レンマ王国とアールヴと国際結婚でもある。
「それよりも、行くんでしょう」
「ああ」
もう一度、深砂漠の調査にである。
ローズキャラバンの大型船が動き出した。
マストはない。
暗車が砂をかく音がする。
隣に潜砂艦“アマテラス”が緊急浮上。
八十八センチ砲を展開。
キイイイイイン
祝砲をあげた。
ワアアアアア
式場は盛り上がった。
これから二隻は、“竜砂帯”を超え、再度調査の為、“古アールヴ”に向かうのだ。
『新婚旅行にしては遠いよねえ」
「まあなあ」
しかもキャラバン船はクルックとフィッダの家でもある。
そのことを思いついたファラクがクスクスと笑った。
◆
ローズキャラバンのキャラバン船は、完全暗車航行の新型の大型船だ。
タタラバ造船所の、ドウタククラスをベースにしている。
大体、アマテラスの1.5倍の大きさだ。
アマテラスや、飛行艇の予備部品を満載にしていた。
居住スペースも兼ねている。
「ははは、砂漠の向こうかあ、楽しみだねえ」
今回は、ローズヒップもついてくる。
白い深砂に、二隻が到着した。
「今回は、前回より詳しく調べられるぞ」
マリア女史の前に、丸い円筒形の台がある。
「三次元立体ソナーだ」
「ほほう」
エルザードが顎に手を当てる。
「水晶のホログラフ機能を応用したよ」
「やってくれ」
ピイイイイン
ソナーを打つと、円形の台の上に地中の状態が、ホログラフとして映し出された。
「下に大きめの岩があるなあ」
うんうんとマリアがうなづいた。
◆
今回は、補給基地の役割もあるキャラバン船と一緒なので、前回よりも広く調べる。
キャラバン船から飛行艇“イザナギ”が飛び出した。
「ずいぶん軽くなったなあ」
「私もそう思う」
前部に装備されている垂直用のジェットが、”風水晶“に変えられている。
これは、水晶船の使われていたものだ。
「前回見つけたオアシスより東に行ってみよう」
クルックがフィッダに言う。
しばらく東に飛ぶ。
「あっ、オアシス」
「大きいな」
「こちら”イザナギ“、大きめのオアシスを発見」
「接近します」
余裕で、アマテラスを浮かべられるくらいの広さがある。
岸辺には、鎧を着たようなサンドボアの群れがいた。
「一匹くらい狩っておこうか?」
「んっ」
”イザナギ“のニードルスプレッド機関銃で、イノシシを狩った
すぐ血抜きをする。
安全のため、水の上に飛行艇を浮かべて夜を過ごす。
月明かりが美しい。
クルックとフィッダは、手を繋いで同じテントに入っていった。
次の日、追いついてきた皆とイノシシでバーベキューをした。
「この広さのオアシスなら、都市が作れるよお」
アル評価官が興奮していた。
後に、古アールヴとの貿易都市として発展することになる。




