第五十九話、ジョウリク
「”アマテラス”、浮上」
潜砂艦、”アマテラス”は、静かに砂の上に姿を現した。
王都”エンドラ”の前に、合計二十隻くらいの艦が集結している。
『第一艦隊と第二艦隊が集結しているか』
第二艦隊は、”中立”もしくはやや”王立派”だったな
「通信可能距離に入りました」
イグラットが、水晶通信機のマイクを取った。
『元将軍である、イグラットだ』
『南の砂漠を越えて来た、”アールヴ首長国連邦”の特使を案内してきた』
イグラットが、エルザードにマイクを渡す。
『アールヴ首長国連邦 の 特使 エルザードだ』
『王と、謁見を 希望する』
『……そちらの不審艦は、パトロール艦と一度戦闘が起きている』
『王を害しようとする不審人物が乗っている疑いがある』
『武装解除と、艦内の臨検をしないと通せない』
ガート宰相が通信機で言った。
『おいおい、そんなことしたら戦争が起きるぜ』
イーサ将軍だ。
『やはり、無理ですな』
イグラットだ。
『残念だ』
エルザードは、第一艦隊が戦闘状態に入るのを見ながら、
「イザナミ、イザナギ、発進」
二機の飛行艇が、スクランブル発進。
「発進後、急速潜航」
”アマテラス”は、砂の中に姿を消した。
◆
『不審艦、ロストッ、砂の中に潜りましたっ』
『なっ、何い』
砂に潜るというのは本当だったのか
ガートが空を見上げる。
『あの飛んでいるものを落とせ』
多分あれが不審艦の目の代わりだ。
『りょ、了解』
無数の”連射式火炎弾機関砲”から、オレンジ色の火炎弾が打ち出された。
「艦の半分くらいが撃ってきてないな」
クルックだ。
第二艦隊は発砲していない。
「んっ、そのよう」
フィッダが答える。
二機とも、”投下型方向指示水晶”を装備している。
”アマテラス”に浮上の場所を報せるためだ。
前回と同じように、フロントは”イザナミ”、カバーは”イザナギ”である。
「王都の港で空いているのはどこだ」
奇襲上陸するためだ。
イオリが言う。
「キャア」
近くを火炎弾が通る。
ファラクが驚きの声を上げた。
二機の飛行艇が、火炎弾の弾幕の中を飛んだ。
『ふーむ、飛んでるなあ』
イーサ将軍だ。
王都の見張り台から、二機の飛行艇を見ていた。
ふふ、そういうことか
ニヤリと笑う。
『港の近くを開けてやれ』
港の近くにいた、第二艦隊の艦が場所を開け始めた。
「あそこっ」
ファラクが指さす。
発砲していない艦が、港の周辺を空けている。
「投下する」
イオリが素早く、機体を翻す。
急降下。
「投下っ」
飛行艇のフロート部の横につけた、円筒形の指示器が落とされる。
後ろの部分が四枚、花のように開いて、クルクルと回りながら落ちて行った。
「投下完了」
イオリは、”アマテラス”に報せた。
『くっ、イーサめえ』
ガートが、第二艦隊の艦が港を空けるのを見た。
『港の周りに、私兵を向かわせろ』
『王都に入れるなっ』
艦を港に向かわせるように指示した。
◆
港に、武装したガートの私兵が集まって来る。
『何が起こってるんだ』
私兵の一人がつぶやいた。
何かわからないが鳥のようなものが空を飛んでいる。
不自然に空いている港が、目の前にあった。
『何だ?』
円筒状のものが、空いている港の真ん中くらいにある。
次の瞬間、
ザザザザザザア
砂が盛り上がった。
ドパアアアアン
艦首を斜め上に、巨大な艦が砂の中から飛び出した。
『うわあああああ』
大量の砂が頭の上から降ってくる。
『てっ、敵襲~~』
『な、なな何だあ~~』
『落ち着けえ~~』
港に接舷した、艦から複数の人が下りてきた。
◆
「上陸後、急速潜航」
「いつでも迎えに来れるようにしておいてくれ」
エルザードが手すりを持っている。
壁につけられた無線機に話した。
艦は、斜めに急速浮上中だ。
ドパアアアアン
艦の衝撃に必死に耐えた。
「上陸っ」
接舷用のハッチを開けた。
カーリーとエルウッド、海兵隊十人が飛び出してく。
その後ろを、剣を片手に構えたイグラット。
親書を持ったエルザード、アールク。
短冊と小筆を持ったティオナ、チャクラムを両手に持ったサーラが続いた。
『王の間はあっちだ』
カーリーが大声を出した。
『なるべく殺すなっ』
イグラットだ。
背後を、潜砂艦”アマテラス”が急速潜航していった。




