第五十八話、オウト
水晶王宮、”エンドラ”。
ドゥアラ王が住まう砂上都市。
その中のイーサ将軍の執務室。
『これが第一艦隊の動向か?』
イーサ将軍が手元の資料を見る。
『派手に、艦隊を動かしてますね』
『何かに怯えてるみたいです』
第一艦隊は、ガート宰相の息のかかった艦隊だ。
参謀が答える。
『南の砂漠を越えてきた、外国の艦か』
『神出鬼没で、空を飛ぶというのは本当か?』
『水晶都市、”タルフィーヤ”から、”竜腹門”を通らず、北の砂漠に来たのは確かです』
机の地図には、パトロール艦との交戦位置がバツ印で、描かれていた。
『未確認ですが、重要な貴人が乗られているとのことです』
『イグラット元将軍閣下、以外でか』
カサンドラ王妃の行方不明から、王はやる気をなくしている。
元将軍は何を言っても聞かない王を諦め、引退して南に帰ったのだ。
『……貴人とはだれだ……』
ガート宰相が必死になる貴人。
イーサには思いつかなかった。
『第二艦隊を、王都に呼び寄せておけ』
何かがあるかもしれん。
イーサが顎の手を当てた。
『了解です』
参謀が答えた。
◆
『まだか、まだ見つからんのか』
60代の男性が大声を出した。
第一艦隊、旗艦”陽炎”の”中央作戦会議室”である。
机の上の地図には、パトロール艦と交戦した場所が記されている。
潜砂艦”アマテラス”を、完全に見失っていた。
『どうします、ガート宰相』
『船が空を飛んだとか、突然跡形も無く、砂の中に、姿を消したとか』
イグラットの諜報機関”ハッシシ”の欺瞞工作かっ
『時間的には、既に王都に着いていてもおかしくないな?』
『はっ』
『最低限の艦を残して、王都へ向かう」
『王都周辺で待ち伏せする』
――何としても奴と王を会わすわけにはいかん
第一艦隊、約十隻が王都に移動し始めた。
◆
『ガート宰相、第二艦隊が王都周辺に集結しています』
『むう』
ガートが腕を組む。
『不審艦の探索、ご苦労様だ』
イーサ将軍である。
『何故、第二艦隊がここに?』
ガートだ。
本来なら各地に分散している。
『なーに、船が空を飛んだとか、色々聞こえて来てな~』
『協力しようと思ってな』
王都周辺では、好き勝手させないぜ
イーサ将軍がにやりと笑った。
『……協力感謝する……』
ガートが苦々しげに言う。
第一、第二艦隊の約ニ十隻の水晶艦が、王都に集結した。
既にその下に、潜砂艦”アマテラス”は到着している。
◆
窓を完全に閉じた王の間。
うす暗い王の間の王座に、ドゥアラ王は静かに座っている。
『もう、王妃のことは良いではありませんか』
一人の女性が、王座の前に跪いた。
無理やり作った笑顔が、媚びた感じを隠せない。
ガート宰相の娘、”ソフィア”だ。
側妃として王の近くにいる。
”ソフィア”は、王の膝に手を置いた。
王は何も見えていないように、無反応である。
『くっっ』
しばらくして、ソフィアが悔しそうに王のもとを去った。
誰もいなくなり、静まり返る。
王は、懐から水晶を取り出した。
辺りが仄かに明るくなる。
王は、水晶で映し出されたホログラフを無言で見つめ続けた。
◆
潜砂艦”アマテラス”が、王都周辺に到着する少し前。
「これが、”投下型方向指示水晶”よ」
マリアが、イオリやクルック達に説明する。
目の前に2メトルくらいの筒上のものが置いてある。
「砂の中では”アマテラス”は視界ゼロでしょう」
「だから、これを地上に投下して、浮上場所を決めるのよ」
マリアが説明する。
「焼夷爆弾のように、飛行艇に搭載可能か」
クルックが聞いた。
「そう」
これを使って、水晶王宮、”エンドラ”を砂中から、奇襲するつもりである。
『アールクを見て、王が目を覚ましてくれればよいのだが』
イグラットが、つぶやいだ。




