第五十七話、パトロール
「発見された」
「監視を強化しているな」
前方には、二隻の水晶艦がいる。
潜砂艦“アマテラス”の三分の一くらいの大きさだ。
『私が呼び掛けてみよう』
イグラットは元将軍である。
すんなり通してくれるといいのだが。
『こちら、タルフィーヤ前太守、イグラットだ』
『外国の特使を、王の元へ案内している』
イグラットが、水晶通信機に言う。
『こちら、パトロール艦だ』
『竜腹門の臨検をうけず、侵入した不審な船がいると聞いた』
『臨検及び、武装解除を命令する』
『これは、ガート宰相の厳命だ』
『そうか』
『……すまない、交渉は決裂した』
イグラットが、エルザードに振り向いた。
『こちら、アールヴ首長国連邦、 特使、 エルザードだ』
『臨検 と 武装解除は 受け入れられない』
当然である。
相手に通信する。
『実力で 通らせて もらう』
「全艦戦闘準備っ」
「飛行艇、飛ばせっ」
ブリッジが、赤色灯で赤く染まった。
◆
シュパアアア
飛行艇”イザナミ”とイザナギが、スクランブル発進。
イオリとファラクが乗る”イザナミ”が、丸く砂煙をあげながら、低空を飛行する。
その後ろを、クルックとフィッダの乗る、”イザナギ”が少し高度を上げてついていく。
「一旦、上空をフライパスする」
イオリだ。
「了解、フォローする」
クルックが答える。
”イザナミ”が可変翼を閉じながら加速。
二艦の上空を飛びこえようとし。
バウウウウウウウ
二艦から、オレンジ色のミシン目の様な、”火炎弾”が連射された。
◆
水晶艦の前部甲板に、機関砲が設置されている。
『と、飛んでるっ』
『近づいてくるぞっ』
『落ち着けっ、”連射式火炎弾機関砲”用意っ』
細長い銃身が空を向く。
『火炎弾符、装填』
機関銃に横についた、箱型のマガジンに、短冊の束を入れる。
『早いですっ』
『発射っ』
短冊が横に送られ、スタンプで起動の紋章が入れられる。
水晶の前の送られ、”火炎弾”が砲身から飛び出した。
バウウウウウウウ
短冊は灰となって、反対側に舞った。
「イオリッ、距離を取れっ」
クルックが叫ぶ。
「分かった」
さらに加速して直進。
”イザナギ”は高度を取る。
「測距、頼む」
「んっ、出来た」
クルックが”アマテラス”に伝える。
「測距、きました」
「威嚇射撃だ、二艦の真ん中に落とせっ」
キイイイイイン
ズドオオオン
二艦の真ん中に、赤い炎の柱が立った。
水晶艦は、ホバークラフトである。
二艦は、爆風に吹き飛ばされ、横転し砂に埋まった。
『”王の元に必ず行く”と宰相に伝えろ』
イグラットが、二艦に言った。
”アマテラス”は、横転した二艦の間を通り過ぎた。
◆
王都に近づくにつれ、警戒は厳しくなった。
昼の内は潜航してその場にとどまり、夜間に移動する。
昼間だ。
艦橋深度で停泊している。
隊員たちが、格納庫に白いマットをひいて、格闘訓練中である。
”アマテラス”の乗組員は、海兵隊所属である。
カーゴパンツにタンクトップの海兵隊員が十人くらいいた。
『私も、参加していいかい?』
戦巫女である、カーリーだ。
『おお、 いいぜ』
180センチ近い大柄な隊員が、古代アルヴ語でたどたどしく言う。
エルウッド隊長だ。
『使っていいかい?』
円月輪の根元から外した、紅い紐を取り出した。
小さな丸い分銅がついている。
当たってもケガをしないようになっていた。
カーリーと、エルウッドが白いマットに上がった。
”組み手”だ。
お互い礼をする。
エルウッドが拳を構える。
ビュウウウン
カーリーの分銅が弧をかいて飛んだ。
エルウッドが、前にかがんで避けながら前進する。
『いい踏み込みだっ』
カーリーが紐をたゆませ、エルウッドの腕に絡みつかせた。
エルウッドが、逆に紐を掴み、カーリーを引き寄せる。
「はっ」
気合の声と共に、カーリーの腕をつかみ、投げた。
カーリーがクルリと回りながら立った。
ビュン
手元に分銅を戻す。
「やるねえ」
『やるじゃないか』
ふっ
二人は、身体の力を抜いて、握手した。
オオオオオ
周りの人が、盛り上がった。
『王宮で、王の謁見の間に行くまでに、ガートの私兵と戦闘になるだろう』
イグラットは、カーリーに海兵隊との連携訓練を指示していた。




