第五十六話、テイム
「イザナミ、イザナギ、出動」
「空中で、”アマテラス”をエスコート」
二機が飛び立って行く。
「気嚢(風船部分)に、ヘリウムガス充填」
「姿勢制御用魔術式ジェット、起動」
潜砂艦”アマテラス”が少し浮く。
「ランダ、ワルダ、舞ってくれ」
「いいよ~」
「はいっ」
「姿勢制御術式、励起」
「補助翼、展開」
蛇腹状の翼が、艦の真ん中くらいから左右に広がる。
小さめだ。
「アマテラス、”アメノトリフネ”モード」
「高度をあげろ」
”イザナミ”とイザナギ”のエスコートの元、
ゆっくりと、”アマテラス”が空中を舞う。
◆
”アマテラス”は、岩礁地帯の上空を飛んでいる。
『うわわわ』
ティオナだ。
『姫様~』
サーラとティオナがお互いにしがみついている。
『これはっ』
カーリーは、円月輪を胸に抱いて臨戦態勢である。
『むうう』
イグラットはありったけの意地とプライドで、仁王立ちである。
ブリッジのガラス越しの眼下に、ゴロゴロと岩塊が見える。
所々岩同士がこすれあってギギギと音が聞こえてきそうだ。
「ふうむ、岩礁地帯を挟んで、南北の砂が同じ方向に動いてるねえ」
マリアだ。
真ん中に岩塊が集まる原因である。
「降下用意」
あと少しで、岩礁地帯を抜ける。
抜けた。
「降下、着地の衝撃に備えろ」
「んっ、待って」
「小型船?」
フィッダが、”イザナギの目”で見た。
アマテラスが、着地。
と同時に、周りに無数のデザートワームが立ち上がった。
小型船が逃げていく。
「不審な小型船を発見」
クルックが、報告する。
「デザートワームに襲われた」
「怪しい小型船をとめられるか?」
「やってみます」
クルックが”イザナミ”を垂直飛行状態にする。
空中にホバリングした。
「”イザナミ”はデザートワームを頼む」
「了解」
イオリが、”イザナミ”を急降下。
”アマテラス”に向かう。
「フィッダ、小型船を狙撃したい」
セレクタースイッチを、”魔術式機関砲、ホウセンカ”に変える。
ガコン
五発ある砲弾の一発が、薬室の装填された。
フィッダが、小型船を”イザナギの目”でズーム。
シートベルトを外して、前部座席に身を乗り出す。
フィッダは、両手でクルックを目隠しした。
「んっ、視界同期」
クルックは、”イザナギ”の目と同期。
レティクルの入った視界で、拡大された小型船を見る。
「発射」
引き金を引いた。
バカアアン
拡大された視界の中で、小型船の推進フィンがちぎれて空高く舞った。
その場で、小型船がくるくるとまわる。
「とめました」
クルックは、目隠ししていたフィッダの手に、自分の手を優しく重ねた。
◆
”アマテラス”は、無数のデザートワームに襲われている。
砂の中を自由に潜れる艦を、傷つけることは出来ない。
水晶船のように、フィンもない。
”イザナミ”の攻撃で追い払った。
『……びくともせんな』
イグラットがぼそりと言った。
『不審な小型船に向かいます』
”アマテラス”が前進した。
小型船には、三人の男が乗っていた。
取り合えず、拘束する。
『これは……』
小型船には、台座に乗った水晶があった。
『隷属の紋様?』
ティオナが調べる。
「魅了の魔紋っぽいね」
ファラクが言った。
「私もそう思う」
マリア女史がうなづいた。
捕まえた三人を尋問すると、この水晶でデザートワームを操って、襲わせていたことが分かった。
『ガート宰相の手のものだ』
イグラットが言う。
『じゃあ、この前のティオナ様が襲われたのも』
サーラがイグラットを見る。
『十年前もか』
カーリーだ。
『吐かせる』
三人を見ながら、鋭く言い放った。
十年前はともかく、ティオナや今回の襲撃は認めた。
『証拠になるか』
イグラットが腕を組む。
隷属の水晶を回収、捕まえた三人は”アマテラス”の牢屋に入れた。
『警戒した方がいいな』
警戒しながら、王都に向かうことにした。




