第五十五話、リュウフクモン
潜砂艦“アマテラス”は、砂上都市、“タルフィーヤ”で補給を受け、北の王都を目指す。
『ここ”サラル砂漠”は、”岩礁地帯”で南北に分断されておる』
『北に行くには、”竜腹門”を抜けなければならない』
イグラットが言った。
ブリッジの地図の前だ。
西に”竜頭門”。
中央に”竜腹門”。
東に”竜尾門”。
三つの門を作っていた。
『昔から、砂漠の北と南で派閥争いをしておるのだ』
サラル砂漠の北には平原が広がっている。
その先には、フォレストドラゴンが住まう”竜樹海”があった。
『北は、平原で食料を、南は、砂漠と岩礁地帯で、”砂水晶”などの鉱物が取れる』
道すがら、イグラットがこの国の現状を言った。
『十年前の、アレクサンドラとアールクの行方不明で北の勢力が強くなった』
『ガート宰相は、北の派閥の筆頭だ』
イグラットが少しためる。
『十年前、二人がデザートワームに襲われて、行方不明になった事件は、北の派閥の仕業だと言われている』
行方不明になったすぐ後に、ガート宰相の娘”ソフィア”が王の側妃になっている。
十年前、南にアレクサンドラとアールクが、里帰りしていた時に襲われた。
『ティオナもそうだが、南はデザートワームは少ないのだ』
主な生息地は、中央の岩礁地帯だ。
デザートワームをおびき寄せたと考えられている。
◆
遠くの方に岩礁地帯と”竜腹門”が見えてきた。
通常なら開いている門が閉じられている。
”アマテラス”の半分くらいの大きさの、水晶艦が二艦、周りを警戒するように停泊している。
『様子がおかしいです』
『まるで、臨戦態勢ですよ』
サーラがイグラットに言う。
『……飛行艇……はばれるか、もう少し門に近づいてみましょうか?』
エルザードが言う。
『?、これ以上近づくと気づかれるぞ』
『大丈夫です』
「艦橋深度まで潜行」
エルザードが少し笑った。
潜砂艦”アマテラス”は、艦橋だけを砂上に残して、砂の中へ潜った。
『こっ、これは』
『しっ、沈んでますっ』
『凄いな』
『……』サーラは怖いのだろうかギュッと目を閉じる。
タルフィーヤ組だ。
「微速前進」
ぎりぎりまで近づいた。
『臨検してますね』
通過する船に、水晶艦から兵士が乗り込んでいる。
『すまない』
『アールクとこの艦が、ガート宰相にばれたようだ』
イグラットとサーラが頭を下げる。
サーラは、元将軍イグラットの諜報機関”ハッシシ”所属である。
『見つかると、アールク様の身柄は拘束され、最悪そのまま”行方不明”ですよ』
サーラだ。
「ふーむ」
「砂中用ソナー、打て」
ピイイイン
甲高い音がする。
「ソナー打ちました」
「門の下は、岩塊です。 潜ってくぐれそうにありません」
『今のは?』
『門の下は岩塊のようです。 くぐれませんね』
エルザードが説明した。
『そ、そんなことまで、わかるのか』
イグラットが、驚きの表情を見せた。
『凄いですね、おじい様』
ティオナだ。
『そうだな』
イグラットが腕を組んだ。
「微速後退」
どうやら門は通れそうにないようだ。
◆
『どうします』
会議室に皆が集まっている。
『岩礁地帯の下もくぐれないのかい』
マリア女史が聞く。
『岩山は、言わば”氷山”の様なものです』
『砂中の方が大きい』
ティオナが答える。
巨大な岩に塊が、砂の流れで真ん中に帯状に集まっているのだ。
『岩同士が動いてますので、砂上を普通に通ろうとすると挟まれてつぶされます』
『高さは?』
『? 高さですか?』
『大体、高くて5メトラル』
『この艦と同じくらいの高さですよ、姫様』
サーラが答えた。
『それなら』
マリアがエルザードを見る。
エルザードが黙ってうなずいた。
『ふふふ、……この艦はね、飛べるんですよ』
マリアは、悪戯っ子のような笑みを浮かべながら言った。




