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飛行艇を愛でていたら、砂漠の踊り子さんに愛でられることになったのです。熱砂の潜砂艦物語  作者: トウフキヌゴシ
第二章、砂漠を越えて

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第五十四話、サイカイ

 潜砂艦”アマテラス”は、水晶船”月影つきかげを曳航している。


『あちらです』

 しばらく砂漠を走る。

 ティオナの誘導により、砂上都市、”タルフィーヤ”が見えてきた。


 巨大な円形の土台の上に、城塞都市があった。

 近くに、オアシス都市が見える。


『領内のオアシス都市を巡回しているのです』

 ティオナが説明する。


 都市が近づいて来た。

 ティオナが、十センチくらいの砂水晶を取り出した。

 水晶に指で紋章をかき、耳に当てる。


 ”紋章式水晶通信機”だ。


『こちら、ティオナです』


『こちら、”砂上都市、タルフィーヤ”入港管理部です』

『姫様、御無事でしたか』


『こちらの方々に助けてもらいました』


『立派な船ですね、話は聞いてます』

『正面、三番港に入港お願いします』


『”アマテラス”微速前進』

『三番港へ入港するぞ』

 

 ”アマテラス”が余裕で入港できる大きさだった。



 エルザードたちは、太守の館の応接室へ通された。 

 しばらく待つと、三十代後半の男性と、六十代の男性が部屋に入って来る。


『砂上都市”タルフィーヤ”の太守、”マルク・タルフィーヤ”です』

 三十代の男性だ。


『前太守、”イグラット”だ』

 六十代の男性である。 


『アールヴ首長国連邦、特使、 ”エルザード・シャラーム・アールヴ” です』

 エルザードが椅子から立ちながら言った。


『まずは娘の”ティオナ”を助けていただき、ありがとうございます』

 マルクが頭を下げた。

 ちなみに、アレクサンドラの兄に当たる。

『南の砂漠を越えてこられたとか』


『孫娘を、助けてくれてありがとう』

『通信で、話は聞いておる』

 イグラットが、エルザードたちを見回した。

 アールクを見つけた。


『……アールクか?』

 アールクの祖父だ。

 十年前に膝の上にのせたこともある。


『……はい……』

 アールクは微かに覚えていた。


『アレクサンドラは?』


『南の国に流れ着いてすぐ……』

 アールクが下を向く。


『そうか』

『良く生きていてくれた』 

 イグラットは、ギュッとアールクを抱きしめた。



『とりあえず、この国の王と謁見したいのですが』 

 エルザードが言う。

 今、武装艦で無断入国している状態だ。


『ふーむ』

『少し、事情がありましてな』

『十年前、ドゥアラ王は、アレクサンドラとアールクを目に入れても痛くないくらい、溺愛してましてな』

『二人が行方不明になってから、魂が抜けたようになっておるのだ』


『今、王はガート宰相の傀儡になっておる』


 イグラットが、アールクを見る。


『しかし、最愛の息子であるアールクが戻ってきたら』

『目を覚ましてくれるかもしれん』


『曲者っ』

 後ろに控えていた、召使のサーラだ。

 大声と共に、チャクラムを天井に投げる。

 誰かがいたようだ。

 人が、逃げる音がした。


『御館様』

 サーラが、イグラットに声を掛ける。


『ガートの手のものだろうな』

『見苦しい所をお見せした』


『父上、アールクのことがばれたのでは』

マルクが言った。


『ふーむ、エルザード殿』

『貴方の船は王都まで行かれますな?』


『そのつもりです』


『では、私も乗せて言ってくれませんかな』

『アールクと元将軍である私が、説得すれば王も目を覚ましてくれるかもしれない』

 イグラットが頭を下げる。


『……わかりました、案内人として乗艦してください』

 エルザードが許可した。


 イグラットと、アールクの付き人として、ティオナ、カーリー、サーラが乗艦することになった。



「これが、”紋章式水晶通信機”かい」

 マリアが、ブリッジに新たに設置された装置を、見ながら言った。

 これで、こちらの船と通信が可能だ。


「魔紋、いえ、紋章をつかったものだそうですよ」

 イオリが、答える。


「砂水晶もすごいね」

 装置の中身を確認する。


「お、砂水晶」

 三十センチくらいのものだ。


「大きいですねえ」


 カチャカチャ


『あのっ』

 通信機を持って来た現地の人だ。


「?」


『あの、大丈夫なんですか』

 半ば、ばらばらに分解された通信機を見ながら言った。


『あっ』

 マリア女史が気まずそうな顔をする。


『あー、うん、大丈夫だと思うよ』

 目をそらしながら言った。


 イオリが黙って親指をあげた。



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