第五十一話、リュウサタイ
潜砂艦“アマテラス”は、オアシスからさらに北上した。
かなり砂漠の深いところまで進んでいる。
「クルック、あれを見て」
フィッダが指さす。
巨大な白い砂の柱が見えた。
「大きい」
クルックが答える。
「一旦、着陸するぞ」
クルックは、飛行艇“イザナギ”の高度を下げた。
ザザザザア
砂の上に着地させる。
二人は、開いた翼の上に立った。
ビュウウウ
風が吹いて来た。
クルックは、バラの花の徽章が入ったフライトジャケットの前を合わせた。
フィッダも同じものを羽織っている。
双眼鏡を覗く。
「竜がいる」
巨大な白い砂の柱の中だ。
巨大なエンシェントドラゴンが三匹、螺旋を描きながら空に上がっていく。
「竜嵐よ」
「あれが、話に聞いていた、竜嵐か」
巨大な柱の一部が離れ、一つの砂嵐となってこちらにむかって来る。
砂嵐の誕生の瞬間であった。
「……いま砂嵐が産まれたのね……」
「ああ、凄いな」
フィッダがクルックの手を握る。
壮大な景色に、二人はしばらく見とれた。
「こちら、クルック、竜嵐を発見」
「それから離れた砂嵐が近づいてきている」
「こちら“アマテラス‘、了解した」
「回収は間に合いそうにはないので、”イザナギ“の潜砂モードで乗り切ってくれ」
”イザナギ“は、砂に埋まっても大丈夫なように作られている。
「分かった」
話をしている間にも、砂嵐は近づいてきていた。
「フィッダ、砂にもぐってやり過ごすよ」
「うん、分かった」
二人は、コックピットの戻り、キャノピーを閉じた。
可変翼を完全に閉じる。
ジェットの、空気吸入口と噴射口を閉鎖。
錨を下ろした。
「与圧の魔紋と送風の魔紋を励起」
シャラララン
これで機内の空気の心配はなくなった。
砂嵐が来た。
「真っ白ね」
「ああ」
「コーヒーとサンドイッチ食べる?」
フィッダが、籠と水筒を取り出した。
「一緒にたべようか?」
クルックが受け取る。
「うん」
「美味しいな」
「ありがとう」
フィッダの手作りだった。
二人は、シートをリクライニングにしてゆったりと座っている。
ゴオオオオウ
もう半ば、機体は砂の中に埋まっていた。
5時間くらいで、砂嵐は通り過ぎた。
◆
砂嵐は過ぎていった。
潜砂艦”アマテラス“も追いついてきた。
クルックたちを回収する。
「あの先です」
「あの辺りから、砂の流れが速くなっています」
アールクが、”アマテラス“のブリッジで言った。
アールクは約十年前、砂漠のむこうから流れついてきている。
竜嵐にあったことを、微かに覚えていた。
エルザードたちは、ここから先に進むか、戻るかを相談していた。
ここから先は砂の流れがはやく、強い風で白い砂の壁のようになっていた。
「まるでベルトのようね」
と言うマリア女史の言葉から、
”竜砂帯“と名付けられ、地図に記載される。
「じゃあ、“竜砂帯”の向こうにあるんだな」
「砂の上を移動する都市が」
エルザードが聞いた。
「はい、あの白い砂の壁の向こうから来ました」
アールクが頷いた。
まだ水も食料も十分にある。
クルーの意見を聞いた結果、先に進むことになった。
◆
潜砂艦“アマテラス”は、”竜砂帯“に入った。
強い風に、荒れ狂う白い砂。
流石に飛行艇は飛ばせない。
「ぶつかることはないいだろうけど、砂の中の竜に気をつけろ」
砂漠用ソナーが作動中である。
砂の中に大まかに、何かがあるかわかるくらいだ。
砂に潜らず、慎重に航行中だ。
ザザアアン
砂の波に打ち付けられ大きく揺れる。
ブリッジのガラスにも白い砂が、当たって来た。
「前方に大波だ」
「両舷全速」
「ヨーソロー」
”アマテラス“は大波を越えた。
格納庫の裸電球が大きく揺れる。
ギシギシと艦がきしんだ。
「すごい砂の波ね」
ファラクが、丸い窓の外を見た。
「揺れるなあ」
イオリが”イザナミ“の機体のメンテナンスハッチを閉じた。
少し離れた所でクルックとフィッダもいた。
非常事態のときのために待機中だ。
三時間くらい時間が過ぎた。
「ん、だいぶ波が収まってきた」
フィッダが窓の外を見る。
「越えたかな、”竜砂帯“を」
クルックが答えた。
“アマテラス”の周りに青空が広がる。
「キャプテン、前方に」
「船がいますっ」
双胴の美しい船がいた。
白い流線型の船体。
その四方の横と後部についている、フィンが開く。
中から、淡い光を放った。
「……水晶船だ……」
アールクが船を見て言った。




