第五十話、オアシス
クルック達と潜砂艦”アマテラス“が合流した。
今度はイオリとファラクと飛行艇”イザナミ“が飛び立つ。
「今度は北に真っすぐ飛んでくれ」
「了解」
イオリたちは”イザナミ“を、北にしばらく飛ばした。
「あっ、あれっ」
ファラクが声を出した。
指を刺した先には、小さな林の様なものが見える。
「うん、オアシスだね」
「こちら、イオリ、小さなオアシスを発見」
潜砂艦”アマテラス“に報告する。
「こちら”アマテラス“、まわりに危険な生物がいないか確認して待機。」
「そちらへ向かう」
”イザナミにも、指示水晶は載せている。
「了解」
イオリが、オアシスの上空を回る。
「大型の生き物はいないみたいね」
「確かに」
二度、三度、上空を飛んだ。
「安全そうだ、着水しよう」
イオリが機体の高度を下げた。
キャノピーを開ける。
「慎重にね」
ファラクが身を乗り出すように、水面を見た。
ザザアア
水面に白い線を引きながら、着水した。
ニ十センチくらいの砂漠魚が、逃げていく。
「ここで待とうか」
丁度、オアシスの真ん中くらいである。
水の中に、大きな生き物がいない場合、水の上の方が安全である。
「今、オアシスに着水しました」
「ここで、到着を待ちます」
イオリは、無線で報告した。
「了解、気を付けて」
到着まで、一日くらいはかかるだろう。
錨を下ろす。
野営の準備をした。
「釣りでもしようか?」
イオリがファラクを誘う。
「ふふ、良いわね」
現地調達用に、釣りの道具は載せている。
昼過ぎから釣り始めて、砂漠魚が三匹釣れた。
「魚の種類は、南とあまり変わらないな」
イオリが、調査用のノートに記録する。
「そうね~」
夕ご飯に、魚は焼いて食べた。
“イザナミ”にも同じように、翼にテントが装備されている。
夜も更けてきた。
月が水面に映って美しい。
オアシスの岸には、水を求めてか“砂漠ヤマアラシ”が来ていた。
月夜にきらりと瞳が光る。
「水浴びしたいから。こちら見ちゃ駄目よ~」
テントの中で、ゴソゴソと服を脱ぐ音がする。
「ファ、ファラクさん?」
イオリが大慌てで、反対側の自分のテントに飛び込んだ。
「ふふふ、少しは見てもいいのに」
ファラクは、小さくつぶやいた。
水着は着ているのだが。
しばらく、ちゃぷちゃぷと水音が響いた。
ファラクの魔紋が、月灯りの水面に銀色にきらめいた。
◆
潜砂艦“アマテラス”が、次の日の朝、オアシスに到着した。
しっかりと地図に記録する。
オアシス周りの調査や、補給のため滞在することになった。
流石に、“アマテラス”を浮かべるには狭いが、大きめの池くらいの広さはある。
「ここで明後日まで、休暇日とする」
エルザードが言った。
「夜は、月見でもするか」
おおおおお
クルーが盛り上がる。
夕食は、甲板で宴会することになった。
「早速、オアシスを発見しましたねっ」
主計課で、なおかつ、王国から派遣された“評価官”でもある“アル・サーベイ”だ。
砂漠でオアシスは、正に生命線である。
貴重な発見に自然と声が弾む。
「そうだなあ」
皿に盛られた、砂漠魚の造りを観察しながら、“マリア・マクレガー”が言った。
彼女は、砂漠の生物の研究もしているのだ。
昼間に、クルーがオアシスで釣った砂漠魚である。
「流石に、あまり変わらないなあ」
箸でつまんで、切り身を食べた。
アルがマリアの横に座った。
宴もたけなわだ。
ファラク、フィッダ、ワルダ、ランダ達、四人の踊り子が舞を舞っている。
青い月あかりの下、潜砂艦のシルエットが浮かび上がる。
舞い踊る、踊り子たちの幻想的な姿に、皆静かに見惚れた。
翌日は、一日休暇である。
艦の上に、日頃洗えない、シーツなどの洗濯物が翻った。
オアシスで泳いだり、釣りをしたりとそれぞれ過ごす。
マリアは、クルー数人を連れて、オアシス周りを調査に出ている。
“アマテラス”は、私椋船(海賊)なので、クル―は強面が多い。
実態は、アールヴの海兵隊員である。
「僕も行くよ」
アルがついて来た。
「オアシスの評価も僕に仕事だよ」
「そうか、じゃ一緒行こうか」
マリアが、すたすたと歩き出した。
護衛のクルー達が、二人を生暖かい目で見ていた。




