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飛行艇を愛でていたら、砂漠の踊り子さんに愛でられることになったのです。熱砂の潜砂艦物語  作者: トウフキヌゴシ
第二章、砂漠を越えて

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第四十九話、シンサ

月読ツクヨミ様、行ってきます」

 アールクは、神社の前で手を合わせた。

 褐色の肌と青い目、170センチくらいの身長だ。

 胸元に、水晶の首飾りが見えた。

 ”熱砂“のほとりで助けられて、10年の月日が流れていた。

 

「もう行くのかい」

 神社の神職の服を着た男性が、声を掛けた。

 10年前、救出された時アールクは、神社の祝詞のような”古代アールヴ語“しか使えなかった。

 翻訳がてら、神職と話している内に神社の養子として迎え入れたのだ。

 今や、親子同然になっている。


「本当のお母さまにも挨拶していくんだよ」

 男性と同じくらいの女性が声を掛ける。

 神職の妻だ。


「はい、母上」

 アールクは、本当の母親のお墓を参った。

 彼は、六歳の時、砂漠の向こうから来た。

 かすかに砂漠の向こうの光景を覚えている。


「体に気を付けるんだよ」  

 親代わりの二人は、墓参りを終え出て行こうとするアールクに声を掛ける。


「はい」

「父上、母上、行ってきます」

 アールクが手を振った。 


 潜砂艦”アマテラス“の深砂漠調査に参加するために、王都”サーハリ“に向かった。



 モント沖海戦から、約一年経っていた。

 色々と改修を終えた潜砂艦”アマテラス“は、王都”サーハリ“に来ていた。

 

「お久しぶりです」

 クルックとフィッダが、エルザードの前に並んでいる。

 アマテラスのブリッジだ。


「あら、クルックだわ」


「フィッダです、お姉さま」


 ワルダとランダだ。

 エルザードの膝の上に座っている。  


「一年ぶりか?」

 エルザードだ。


「はい」

 クルックが、ブリッジの真ん中に新たに設置された、”三次元方向指示器“を見た。

 二本の円形のフレームに支えられた矢印が、360度回るようになっている。


「イザナミとイザナギの”指示水晶“を預かってきました」

 指示水晶の方を矢印が向くのだ。


 潜砂艦”アマテラス“は、王都”サーハリ“で、アールクを乗せた後、”熱砂“に向かった。



 潜砂艦”アマテラス“は、”熱砂“のほとりの都市”サギリ“についた。

 ここが、最後の補給地になる。

 水や物資を補給した。

 これから先は、白い砂が広がっている。


「熱砂って、こういうものよ」

 ファラクが、白い砂にジャンプした。

 ズボッという感じで膝まで埋まる。

「人によっては、”水砂“と呼ぶ人もいるわ」

「ゆっくりとなら、泳げるわよ」

 

「凄いなこれは」

 イオリが砂を手ですくう。

 小麦粉みたいだな


 イオリは、白い砂から上がろうとしているファラクの手を取った。


 潜砂艦”アマテラス“の補給が終わった。


「これより、”アマテラス“は”熱砂“に侵入する」

「最初は、西の海岸沿いを進んだ後、砂漠の奥へ向かうつもりだ」

「危険はいっぱいあるだろう」

「しかし砂漠の向こうには、素晴らしい何かが待っているはずだ」 

 エルザードが、艦内無線で言った。


「”アマテラス“、両舷全速前進っ」


 白い砂に入った瞬間、まるで水の中に入ったように、一度沈んで浮かび上がった。



 ”熱砂“に進入してしばらくたった。


 クルックとフィッダは、飛行艇”イザナギ“で砂漠の上を飛んでいる。

 砂漠に何かないか、空から探しているのだ。


「今の所、何も見えないな」


「うん」

 “イザナギ”の()でも見えない。


「アマテラス、方向指示器は作動していますか?」

 ”イザナギ“は指示水晶を持っている。


「こちらアマテラス、正常に作動している」

「もう少し、北西に飛んで、着地してくれ」

 ブリッジの矢印は、イザナギを指示しているだろう。


「こちら、イザナギ、了解」

 もう夕方が近い。

 危険な生物がいないかを確認して、砂漠に着陸した。


 目印も何もない広大な砂漠である。

 夜の星の位置と、指示水晶を持った”イザナギ“を目印に、砂漠の地図を作っていくのだ。

 ”アマテラス“が追いついてくるまで、ここで待つことになる。

 

 ”イザナギ“の可変翼を最大まで開いた。

 翼の一部を開くと、簡単なテントになる。

 二人は翼の上で寝ることになった。


 ジュウウウ

 

 フィッダが、簡易コンロの上にフライパンを置いてベーコンを焼いている。

 缶詰のスープを開けた。


 周りはすっかり暗くなってきた。

 キャンドルランタンの光が揺れる。


「コーヒーもいる?」


「ありがとう、もらう」

 降るような星空を見上げながら、クルックが答えた。

 両翼に一つずつテントを作っていた。


 二人で、パンと焼いたベーコンに缶詰のスープの夕食を食べた。

 コーヒーから白い湯気が上がる。 


「砂漠の夜は冷え込むから……」 

 フィッダが毛布をクルックに渡した。


「ありがとう」

 

 静かないい夜だった。


 次の日の昼前に、”アマテラス“が到着した。



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