第四十五話、ケッチャク
『百、千、万の~♪』
沢山の人の歌声が聞こえる。
『八百万の~♪』
「アールヴの国歌ですっ」
全周波数の無線だ。
モンジョの艦にも聞こえた。
『名を呼みなして~♪』
「どこからだ」
『とこしえに~♪』
「信号弾っ」
『砂漠に光、輝いて~♪』
「撃て~」
『アルヴの上にそそがれん~♪』
パンッ、パン、パン
「信号弾、赤っ、赤っ、白っ」
「アールヴで、赤色を使えるのはただ一人」
トライヴが唸る。
「「「ファテュマ王だあーーーー」」」
アールヴの陣営が沸いた。
「ははは、来たぞおお」
ファテュマが答えた。
王の座乗艦である、コノハナサクヤ級、戦艦”コノハナサクヤ“と、姉妹艦である”イワナガ“が到着した。
「なんか、中途半端な場所にいる、敵重戦艦(イッザウの乗る三番艦)を一斉射あ」
ファテュマが命令を出した。
二艦の前部に装備した、二連装八十八ミリカノン砲、計二門が、敵重戦艦を指向。
キイイイイイン
キイイイイイン
キイイイイイン
キイイイイイン
三番艦の横腹に全弾命中した。
ドカドカドカドカッ
「ウ、ウギャアアアア」
イッザウが叫ぶ。
通常砲弾とはいえ、八十八ミリカノン砲、四発を受けた三番艦は揺れに揺れた。
立っていたものは倒され、椅子の座っていたものは椅子から放り出された。
ガラスというガラスは砕け飛んだ。
とはいえ、装甲の厚い重戦艦である。
小破、というところだ。
「し、沈むう、あとはお前たちが何とかしろおお」
「イ、イッザウさま」
副官が声をかける。
イッザウは小型の避難艇に乗り、艦を放棄して逃げ出した。
補給所の方に逃げる。
◆
飛行艇”イザナギ“から、敵艦(奴隷狩りの艦)の位置を聞いた潜砂艦”アマテラス“は、急速潜行していた。
「全艦、これより砂中から、ラムアタックをする」
「目標、地上の護衛艦っ」
「方位よし」
エルザードが転輪を回す。
「仰角、三十度お」
「両舷全速前進」
ズザザザザザ
「全艦、対ショック姿勢」
「衝撃に備えろお」
潜砂艦『アマテラス』が、奴隷狩りの艦めがけて、斜め上に飛び出した。
「あ、あれだ」
命からがら逃げだしてきたイッザウは、奴隷狩りの艦を見て、ほっとした声を出した。
「回収しろお」
その時、
ズドオオオオン
砂中から巨大なものが飛び出してきた。
「うわあああ」
余波を受けて、イッザウが乗っていた避難艇が横転する。
バキバキバキイ
奴隷狩りの艦は、潜砂艦”アマテラス“のラムアタックを受け、真っ二つに折れた。
「な、何が起こったああ」
砂に投げ出された、イッザウが叫ぶ。
イッザウは過酷な砂漠に取り残される。
辛うじて、無事救出された時はボロボロになっていた。
ズズウウウン
飛び出してきた”アマテラス“が、砂上で水平になる。
「すげええ、真っ二つだぜ」
すぐに、八十八ミリカノン砲を展開した。
「非武装船は動くなっ、少しでも動くと砲撃を加える」
外部スピーカーで、周りに報せる。
周りには、修理船や補給艦が沢山いた。
「あ、あの時の私椋船っ」
「奴隷狩りの艦が一発でっ」
オチホキャラバンのギールだ。
「に、逃げろっ」
「船長、今動いたら撃たれますっ」
「相手は、私椋船だっ」
「急げっ」
オチホキャラバンのキャラバン船が、動き始めた。
「むっ、そこのキャラバン船、それ以上動くと砲撃する」
オチホキャラバンのキャラバン船は、奴隷狩りの艦と並んで停泊していた。
アマテラスのほぼ真横にいるのと変わらない。
「もう一度言う、動くと砲撃する」
キャラバン船は止まらない。
「通常砲弾、こめっ」
「逃がすな、発射っ」
キイイイイイン
逃げていた、オチホキャラバンのキャラバン船の横に命中。
船体を砲弾が貫通、砂に砲弾が刺さって止まった。
「こちら、アマテラス、敵補給地を占領したっ」
エルザードが無線で報告。
パンパンッ
信号弾で、占領を敵に報せた。
◆
「くっ、まだ戦力はこちらが上だ」
「四番艦に、集結」
トライヴが命令を出した。
元第一防壁の近くにいる重戦艦だ。
少し後退して立て直すつもりである。
”ヤタノカガミ“も含めて、モンジョの艦が集結し始めた。
「艦を敵に対して、斜めに向けろ」
後部砲塔が使えるようになる。
「つるべ打ち、始めえ」
”コノハナサクヤ“と”イワナガ“に装備された八十八ミリカノン砲計八門が、順番に絶え間なく火を吹いた。
現在の戦況は、
モンジョ艦隊、ジンギクラス、”ヤタノカガミ“
ドウホコクラス 重戦艦、二
ドウケンクラス 戦艦、三
計、6艦
アールヴ艦体、コノハナサクヤ級、”コノハナサクヤ“
”イワナガ“
クシナダ級、 ”クシナダ“
アマツカミ級、 巡洋艦、一
計、4艦
潜砂艦、 ”アマテラス“
飛行艇空母、 ”キサラギと飛行
艇である。
キイイイイイン
「まだまだいけるっ」
トライヴが気合を入れた。
その時だ。
「て、提督っ、補給地が落とされましたっ」
遠くの空に、アールヴの信号弾が見えた。
「イッザウは何をしていたっ」
護衛に回したはずだった。
この海戦の勝敗が決した瞬間であった。




