第四十四話、ホウゲキオン
「潜砂艦”アマテラス“の徹甲弾で、敵三艦沈黙っ」
「むむむ」
サザル司令官が思わず唸った。
旗艦”クシナダ“のブリッジだ。
「…………」
サザルが一瞬考えこんだ。
敵の船足が重戦艦まで落ちた
敵は、重戦艦を盾にして前進している。
サザルが立ち上がった。
「アマテラスは、地中を進み、敵補給地を強襲せよ」
「クルック機は、アマテラスをフォロー、補給基地の場所を探せ」
「戦艦”クシナダ“と”イナダ“は、元第一防壁まで前進、防壁の代わりとなる」
サザルが一息に言う。
「勝負に出るぞっ、エルザード大佐っ、よろしく頼むっ」
大声を出した。
この海戦で、初めてアールヴ側が攻撃に出た。
「徹甲弾、残り三発っ」
「八十八ミリカノン砲収納っ」
「隔壁閉鎖っ」
「ランダ、ワルダ、潜るぞ~」
「りょうか~い」
「りょうかい」
「アマテラス、緊急潜航っ」
エルザードが、転輪を掴みながら言った。
潜砂艦”アマテラス“が魔紋を銀色に輝かせながら、砂に潜って行く。
「現在、深度、100(メトル)」
「潜行止め、両舷全速前進」
ザンザンザン
暗車の回る音が響く。
ブリッジ中央の置かれた周辺の地図の上に、小さなアマテラスの模型が動いていた。
大体の位置を表している。
「第二防壁の真下か」
エルザードが、小さくつぶやいた。
ズズズズズ
ズズズズズ
重低音が頭上から響く。
「頭上、敵艦隊、真下を通過します」
「ふううう」
気付かれるはずは無いが、クルーたちが固唾をのんだ。
「敵艦を通り越えた後、潜望鏡深度」
「”イザナギ“と交信する」
エルザードが命令を出した。
◆
「くっ」
トライヴ提督が、忌々し気に後ろを振り返る。
重戦艦”ヤタノカガミ“の真後ろが、一番安全な場所である。
その場所に、ドウホコクラスの三番艦が居座っているのだ。
重戦艦の盾からはみ出た、ドウケンクラスに被害が出ていた。
「イッザウめ」
違法な奴隷狩りの噂のある男だ。
「敵艦動きました」
戦艦が二艦、前に出てきた。
約三倍の敵艦の前にだ。
「その心意気やよしっ」
トライヴが、二艦の勇気を讃えた。
しかし、キイイイイインという甲高い砲音がしない
さっきまで、絶え間なく鳴っていたのだ。
「むむ」
「セッサカンか」
モンジョなまりの共通語。
ひこうていは、ヒッコウテイになる。
まさか、潜砂艦?
砂にもぐる?
トライヴは、腕を組んだ。
「……三番艦、後退して補給所を護衛せよ」
トライヴは、イッザウに命令を出す。
「若造がああ」
イッザウだ。
このままでは、”モント“で略奪が出来んではないか
どさくさに紛れて略奪するつもりである。
さらに、奴隷狩り(マンハンター)を呼んで、奴隷狩りもするつもりだった。
「独り占めする気かっ」
イッザウはいつでも略奪に出来るように、艦を後退させるふりをして補給所には戻らなかった。
◆
「行こう」
クルックが、フィッダに声をかける。
命令が出たとき、”キサラギ“に帰投していた。
「うん」
二人は、直ぐに飛行艇”イザナギ“の乗り込んだ。
離艦した後は、目立たないように高度を高めに飛ぶ。
「クルック、あれ」
「???」
中途半端な所に、敵重戦艦が一艦停泊していた。
イッザウの乗る三番艦だ。
――あんなところで何をしてるんだろう?
「ふむ」
クルックは、”イザナギ“を飛ばした。
しばらく飛ばすと、敵の補給所があった。
「敵の補給所を発見、アマテラスの位置を教えられたし」
アマテラスの位置がわからないと、測距できない。
「方位○○、艦橋深度まで浮上する」
「了解、補給所の護衛にドウケンクラス、一」
「クルック、見て」
フィッダだ。
「ああ、奴隷狩り(マンハンター)の艦だ」
その隣に、オチホキャラバンの船も見えた。
クルックが、”イザナギ“の機体を翻した。
「あっちよ」
フィッダが言った方向に、アマテラスがいた。
「アマテラスの位置を確認しました、測距可能です」
クルックが無線に言う。
「……護衛の艦(奴隷狩りの船)からつぶす」
「ドウケンクラスの位置を報せてくれ」
「了解、位置は、方位△△、距離□□です」
クルックが、フィッダに聞いた内容を伝えた。
その時、
キイイイイイン
キイイイイイン
キイイイイイン
キイイイイイン
甲高い艦砲音が、四発聞こえた。
◆
ガギギギギギ
ジンギクラスの重戦艦”ヤタノカガミ“は、クシナダ級戦艦の約二倍の重量を誇る。
ドウホコクラスも似たようなものだ。
今、戦艦”クシナダ“と”イナダ“を押しのけるように、”ヤタノカガミ“と、ドウホコクラス一艦が前進していた。
砲弾が飛び交う。
至近距離の殴り合いだ。
サザル司令官が、自分の艦をぼろぼろにされながらも耐えていた。
「行かせるなあ」
しかし、圧倒的な重量差に艦が押しのけられ、二艦に突破される。
「まずいっ」
第二防壁に向かう。
「行かせないわよ~」
辺り一面が影で真っ暗になる。
飛行艇空母『キサラギ』が、艦を横にして第二防壁の前に降りてきた。
装甲板を限界まで下におろし、巨大な壁となる。
「前後アンカー下ろせ~」
艦首と艦尾の錨が下ろされる。
ズドオオオオン
突破してきた二艦が”キサラギ“の横腹にラムアタック。
艦底の、倉庫や貯水槽が壊された。
大量の水が流れ出る。
しかし、堅牢なシタデル構造に守られたバイタルには、ダメージを与えられない。
「サイドスラスター、全開~」
反対側の、魔術式ジェットが全開になる。
ズズズ
”キサラギ“は、”ヤタノカガミ“とドウホコクラスを、横腹でゆっくりと押し返した。
その時だ。
キイイイイイン
キイイイイイン
キイイイイイン
キイイイイイン
特徴的な、八十八ミリカノン砲の砲撃音が、四発、連続で鳴り響いたのである。




