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飛行艇を愛でていたら、砂漠の踊り子さんに愛でられることになったのです。熱砂の潜砂艦物語  作者: トウフキヌゴシ
モント沖海戦

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第四十二話、サイヘン

「流石に“ヤタノカガミ”のマストは持ってきてないです」

 修理隊の隊長が答えた。

 ジンギクラスの超重戦艦“ヤタノカガミ”は、飛行艇空母“キサラギに、三本あるマストの内一本を折られている。



「修理は無理か」

 トライヴ提督がうなるように言った。


 今、モンジョの艦隊は、一時撤退し”補給物資の集積地“に集まっていた。

 前線が前に移動したので、“集積地”も前進している。


 補給艦の中には、軍に雇われた”オチホキャラバン“や、”奴隷狩り(マンハンター)“の船も混じっていた。


「とりあえず、第一防壁は壊した」

 トライヴ提督が腕を組んで考え込む。

 しかし、ほとんどのバリスタが燃やされたな

 飛行艇の焼夷爆弾によってである。


「報告します、燃やされたドウケンクラスは、マストや帆、バリスタは燃えましたが、艦体は無傷でした」

 整備兵の被害報告だ。


「そうか、ご苦労」

 ここからは総力戦だな 



「来てくださってありがとうございます」

「防衛司令官のサザルです」

 サザル大佐が頭を下げた。


「レンマ王国空軍、飛行艇空母“キサラギ”の艦長、メルル―テです~」

 メルル―テも頭を下げる。


 防衛隊旗艦、“クシナダ”の会議室だ。

 主要な人物が集まっている。


「状況は良くないです」

 参謀が言った。

 真ん中の机の上には、周辺の地図だ。

 第一防壁にバツ印が描かれている。


「第一防壁が壊されました」

「第二防壁まで壊されますと、敵の大砲が港に届くことになります」

 都市も含めて、大損害を受ける。

 事実上の敗退である。


「……艦の修理は?」

 アマツカミ級、三艦が損傷している。


「しばらくかかります、それよりも大砲が破壊されています」

 砲弾に余裕はあるが、壊された大砲の予備は置いていない。


「砲撃能力が、半減しています」

 整備体の隊長が言う。


「むうう」

 

「焼夷爆弾は、マストや帆は燃やしたが艦体には効いてないのう」

「あれなら、すぐ直ってしまうわ」

 ドワーフの整備士“ドワイト”が言った。

 “キサラギ”の整備長だ。 

「それと……」

「“キサラギ”の体当たりは、やめた方がいいぞ」

「さすがに、艦の竜骨(船の背骨みたいなもの)が歪むぞ」

 

「わかった~」

 メルル―テが答えた。


「一ついいだろうか?」

 潜砂艦“アマテラス”の艦長“エルザード”が、手を上げた。


「“アマテラス”は砂の中を、敵に気付かれず移動できる」


 周りの人がうなづく。


「砂の中を移動して、敵の補給場所を攻撃できないだろうか?」

 エルザードが、周りをを見回した。


「それは……」


「“アマテラス”の八十八ミリカノン砲が、前線から外れます」

「さらに、砲撃能力が落ちます」

 砲兵長が言った。

 ちなみに、ほかの艦は、四十ミリ砲だ。  


「“アマテラス”がいないと、敵艦の突撃を止められないのか」

 サザルだ。


「おそらく……」

 参謀が答えた。



「敵艦隊、動きましたっ」

 無線が会議室に響いた。


「くっ、全艦迎撃態勢に入れっ」

 全員、慌ただしく会議室から出て行く。


「エルザード艦長、敵補給基地攻撃の準備だけはしていてくれ」

 サザルがエルザードを見る。


「了解」

 エルザードが答えた。


 ウウウウウ


 都市に、警戒用のサイレンが鳴り響いた。



 砂嵐が過ぎた後、砂漠の風はないでいた。

 モンジョの艦は、送風の魔紋でおこした風を、帆に受けて前進する。 


「全艦、矢じり型陣形パンツァーカイルだっ」

「速度を落とすなあっ」

「第二防壁を破れば、こちらの勝ちだっっ」

 

「全艦突撃っっ」


 トライブ提督が吠えた。


 超重戦艦“ヤタノカガミ”を先頭に、左右をドウタククラスの重戦艦。

 その後ろを、ドウケンクラスが続く。 


 砂煙を上げながら、奇麗な三角形を描いて前進した。



 飛行艇“イザナミ”と“イザナギ”は、飛行艇空母”キサラギ“に着艦している。


 イオリとクルックは、“キサラギ”の飛行隊に仮再編される。


 第一小隊に、隊長、ヒイラギ中尉、飛行艇“ネコジャラシ”、飛行艇“ゲッカビジン”二機。

 

 第二小隊に、隊長、イオリ少尉、 飛行艇‘イザナミ“、飛行艇”ゲッカビジン“二機。

 

 魔紋の視界が優秀な、飛行艇”イザナギ“は、偵察部隊になった。 

 EWAC”イザナギ“という感じだ。


 しばしの休憩だ。


「ひさしぶりねっっ、イオリ少尉っ」

 ヒイラギ中尉だ。

「そうだ、そうだ」

 他の隊員も声をかけてくる。

 全員顔見知りだ。


「みんな、久しぶり」


 ガシッ

 一人の隊員が肩を組んだ。

「しかしっ」


 少し離れた所で、ふんふんとがファラクがこちらを見ている。

 隊員がちらりとそちらを見た。


「「「うまいことやりやがってっっ」」」


 周りに隊員が軽く脇や背中を軽くたたいてくる。


「いやいやいや」

 イオリだ。


 少し離れた所でクルックが、呆れたように見ていた。

 隣にフィッダが並んだ。


「……可愛い……」

「フィッダちゃんていうんだぜ」

「……俺はファラクちゃん派だっ……」


 異国情緒あふれる姿と、肌に描かれた魔紋が神秘的に見える。

 隊員の視線に気づいたのか、そっとフィッダがクルックと手を繋いだ。


「「「ああ~~~」」」

 落胆の声が聞こえた。


「……馬鹿ねえ……」

 女性の乗組員たちが、呆れた目で男たちを見ていた。


「事情は聞いたぜ」

 一人の隊員がクルックに言った。


「ああ」

 クルックだ。


「ふっ、これから、お前は俺たちの目だ、よろしく頼むぜ」

 クルックの肩を軽く叩いた。


「……ふふっ、こちらこそよろしく頼む」

 クルックが、片頬を歪めて笑う。


 ううっ、かっこいい

 手を繋いでいたフィッダが頬を染めた。


 周りの隊員が、色んな意味でざわめいた。


 ウウウウウ


 警戒用のサイレンが鳴り響いた。





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