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飛行艇を愛でていたら、砂漠の踊り子さんに愛でられることになったのです。熱砂の潜砂艦物語  作者: トウフキヌゴシ
モント沖海戦

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第三十七話、バリスタ

「若造めえ、一艦や二艦、犠牲にして前へ進めえ」


 ドウホコクラス重戦艦、三番艦のブリッジで、”イッザウ”が大声を出した。

 イッザウは五十代前半。

 トライヴ提督は、二十代後半だ。

 これだから、南の奴らはっ

 トライヴ提督は、“ヘタリナ王国”出身である。


 

 あれから、モンジョ古王国の艦隊は、二度前進して二度引き返していた。

 アールヴ側の、大砲の集中砲火を受けてである。


 モンジョ側の国境都市”ミズラ”だ。

 

 都市の周辺では、左右一対の修理船が、戦艦の折れたマストを交換している。

 巨大なクレーンを備えた平たい船だ。

 二船が、船を左右に挟み、クレーンでマストを立てていた。


 その横を、補給艦が二艦、国境の都市”ミズラ”に入港した。

 

「やっと、きたか」


 トライヴ提督が、入港してきた補給艦を見ながら言った。 

 飛行艇対策に、あるものを大量に乗せている。

「すぐに改修しろっ」

 

 “タタラバ造船所”の船はモジュール式だ。

 サイズごとの艦体の造りは、共通である。


 艦の“表面構造物”で違いを出した。


 戦艦は大砲や武装、キャラバン船は貨物庫などである。

 その利点が、最大限生かされる時が来た。 



 アールヴの士気は高い。


「三度、追い払えた」

「モンジョの艦隊なんて大したことないなあ」

「いつでもこいっ」

 至るところで盛り上がっている。


「このままで終わると思いますか?」

 参謀が、サザル司令官に聞いた。


「いや」 

「後の二回の前進は、敵の被害は、ほぼないと言ってもいい」

 サザルが腕を組んだ。 



「はい」

 フィッダが、クルックにコーヒーを渡す。


「ありがとう」

 クルックが答えた。


「ほらほら、イオリも休憩にしましょ」

 ファラクが、飛行艇”イザナギ”の整備をしているイオリに声をかける。


「わかった」

 “イザナギ”の機体の影から、イオリが答えた。


 ”モント”の港の開けた広場だ。

 飛行艇”イザナミ”と”イザナギ”が、並んで着陸している。

 近くに、潜砂艦”アマテラス”も停泊していた。


 ”イザナミ”は、植物のつたのような銀色の魔紋で、女性的。


 ”イザナギ”は、目の形をした黒に近いびた銀色の魔紋で、男性的だ。

 

 イオリたち四人が、並んでコーヒーを飲んでいる。


「もう、慣れた?」

 ファラクがフィッダに声をかける。


 ファラクは、黒い髪と青い目、褐色の肌。

 フィッダは、銀髪と紅い目、白い肌が対称的だ。


「ん、大分」

 フィッダが言った。


「しかし、この二回はあっさり引き返したな」

 クルックだ。

 飛行艇で艦隊の動きを、一番見ている四人だ。


「ふーむ、一度、一番大きい船の司令官みたいなのと目が合ったような」

 イオリだ。


「三本マストの奴だな、俺もだ」

 クルックが答える。

 様子を見られている?


 ウウウウウ―


 少し高めのサイレンが、都市に鳴り響く。


「敵艦が動いた、全艦戦闘態勢っ」

 広域放送が都市に響き渡る。


 ズズズズズ


 潜砂艦『アマテラス』が、サイドスラスターを吹かし、港から離れ始めた。


「行くぞっ」

 クルックが、フィッダに言った。


「うんっ」

 二人は、飛行艇、”イザナギ”(元”ヨモツヒラサカ”)に飛び乗った。


「気を付けてっ」


「行ってらっしゃい」


 イオリとファラクが、手を振りながら大声で言った。


 シュパアアア


 飛行艇”イザナギ”は、可変翼を開きながら垂直上昇、敵艦の方へ飛び去った。 



 フィッダは、飛行艇”イザナギ”(元”ヨモツヒラサカ”)の()を通して遠くを見ることが出来た。 


 防壁を越えて、敵の艦隊が見えてくる。

 フィッダの頭の中に、艦隊の姿が浮かぶ。


「クルックッ」

 フィッダが声を出した。 


「どうしたっ」

 クルックが、聞いた。


「バリスタよ」


「艦に、バリスタがたくさんつけられてるっ」


 全ての艦にバリスタが、大量につけられていた。


 まるで、”砂漠ハリネズミ”のように見えた。


 飛行艇”イザナギ”が艦隊に近づく。


「むっ」

「一度、上空を飛び越えてみるっ」

 クルックが、可変翼を閉めながら、スロットルを最大まで開けた。


 艦隊の頭上を高速で飛びこえる。


 ババババシュッ


 大量のバリスタの矢が飛んできた。

 少しでも近づくとバリスタの矢が、雨のように飛んでくる。


「測距の邪魔をする気か」

 落ち着いて測距ができない。 

 アールヴ側の艦砲射撃の精度が格段に落ちた。


 モンジョの艦隊は引き返さない。


 じわじわと前進を、許すことになった。



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