第三十六話、カイセン
イズモ級をクシナダ級に変えました。
「モンジョ古王国の艦隊が、国境を越えました」
通信士が大声で言った。
「そうか」
40代半ばの男性が声を出した。
男性の名は、“サザル”
サザル大佐は、国境の都市”モント”の防衛司令官である。
”モント沖海戦”が始まった。
◆
サザルは、戦艦”クシナダ”の作戦会議室にいた。
戦艦”クシナダ”は、アールヴ軍の色である、白に近い茶色に塗られている。
“カグツチ造船所”の“イズモ級戦艦”だ。
二本マスト搭載。
細身で、スマートな艦体。
武装は、四十ミリ砲二門、前後に搭載している。
こちらの戦力は、
クシナダ級戦艦、旗艦 ”クシナダ”
クシナダ級戦艦 ”イナダ”
アマツカミ級巡洋艦 “三艦”
潜砂艦 ”アマテラス”
計六艦。
対する、モンジョの艦隊は、
ジンギクラス、超重戦艦、“旗艦”ヤタノカガミ”
ドウホコクラス、重戦艦、“三艦”
ドウケンクラス 戦艦、“六艦”
計十艦。
アールヴの”カグツチ造船所”の艦は、装甲が薄くて足が速い。
モンジョの”タタラバ造船所”の艦は、重装甲で足が遅い。
砂嵐に強かった。
「戦力差が大きい」
「三重の防壁が頼りか」
奇襲攻撃を受けている。
サザルが腕を組んだ。
「出来る限り時間を稼いで、援軍が来るのを待つしかないですね」
参謀だ。
「”アマテラス”と飛行艇の測距があれば、かなり正確に射撃できるはずだ」
「大砲の集中攻撃をしよう」
エルザードが言う。
「ふうむ」
「よしっ、砲撃は”アマテラス”の指示に従おう」
サザルが、言った。
「わかりました」
エルザードが頭を下げた。
◆
砂漠らしい、快晴だ。
モンジョの戦艦、十艦が砂煙を上げながら前進している。
モンジョの艦は濃いこげ茶色である。
大きく、重く、がっしりしている。
巨大な壁が動いているようだ。
「全艦全速前進」
「防壁を壊せ」
モンジョ古王国、南方方面艦隊指令、”トライヴ”提督である。
二十代後半の男性だ。
斜め後ろには、肌に銀色の魔紋が描かれた女性が控える。
二十代半ばの肉感的な女性だ。
彼女は”ヤタノカガミ”の”船巫女”である。
”トライヴ”提督は、超重戦艦、”ヤタノカガミ”のブリッジにいた。
「ふむ、海が欲しいな、アイーシャ」
トライヴが、斜め後ろを振り向きながら言った。
モンジョには、湖はあっても海はない。
「ふふ、私に海を見せてくださいな、トライヴ」
アイーシャが、トライヴの手を取った。
繋いだ二人の手には、同じ魔紋が描かれていた。
ちらりと、並走するドウホコクラスの重戦艦を見た。
イッザウ士族の紋章が、艦体に描かれている。
「奴隷売買は気に入らねえんだがなあ」
今回の開戦は、イッザウの奴隷売買をしたいがためのごり押しだ。
トライヴは、元々ヘタリナの漁師町の出身なのだ。
◆
”ヤタノカガミ”の広いブリッジの天井には、丸い窓ガラスが複数開いている。
「んん?」
影が走った。
トライヴは、上を見上げた。
「鳥?」
確認しようと見上げた瞬間、
キイイイイイン
甲高い大砲の発射音。
ドゴオオオン
砲弾が一発。
その後、
ドドドドドドオン
砲弾が六発。
左翼で突出していた、ドウケンクラス四番艦が、集中砲火を受けた。
「こちら四番艦っ、マストと帆をやられ航行不能っ」
キイイイイイン
甲高い発射音。
ドゴオオオン
ドドドドドドオン
今度は右翼の、ドウケンクラス七番艦だ。
「なっ」
大砲の集中砲火だと
トライヴは、ブリッジ横のウイングデッキに飛び出した。
「提督っ、危険ですっ」
士官が止める。
トライヴの頭上を、可変翼を閉じた”イザナミ”が、猛スピードで飛び越していった。
「くっ」
報告にあった、ヒッコウテイというやつか
キイイイイイン
ドゴオオオン
ドドドドドドオン
もう一艦やられた。
幸い距離があるので、マストと帆以外、艦体には被害はないようだ。
「むうう」
正確な砲撃だ
「一旦ひくぞ」
「全艦、180度、回頭っ」
トライヴが叫ぶ。
「被弾艦を曳航用意っ」
「本艦とドウホコクラス重戦艦は、砲撃の盾になれ」
トライヴが大声で指示を出した。
◆
「敵艦隊、引いていきますっ」
ファラクが無線で伝える。
おおおおお
無線の向こうで歓声が上がった。
「こちら、イオリ、”イザナミ”帰投します」
イオリは、都市”モント”へ、”イザナミ”を飛ばした。
「しかし」
見事な引き際だ
サザルが低くうなる。
「ここで、ひき返しますか」
参謀がぼそりと言った。
サザルと参謀が顔を見合わせた。




