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飛行艇を愛でていたら、砂漠の踊り子さんに愛でられることになったのです。熱砂の潜砂艦物語  作者: トウフキヌゴシ
アマテラス

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第三十五話、カイセンゼンヤ

 天気は良いが、これから砂嵐の季節に入る。


 潜砂艦“アマテラス”とローズキャラバンは、“アールヴ”に帰っていた。

 国境の都市“モント”が見えてきた。

 

「もう、防壁を浮上させているのか」

 エルザードがつぶやいた。

 都市の周りに、砂上船の二倍くらいの高さの防壁が見えた。

 都市の周りを囲むように、半円状にそそり立っている。

 防壁は、細かく分かれており、いつもは砂の中に沈めている。

 二船は、防壁を大きく回り込むように都市に近づいた。

 防壁は三重になっていた。


 二船は都市に入港する。



 “アマテラス”艦内の会議室だ。

 主要な人物が集まっている。



「どうやら、モンジョとの開戦は避けられないようだな」


 砂漠地帯の南には、アイール山脈が横たわり“アールヴ”の国境線近くまで伸びている。

 モンジョが、ヘタリナ王国や、レンマ王国などの南の国に行くには、アイール山脈を直接越えるか、“アールヴ”の都市“モント”を通らなければならなかった。


 モンジョに取って“モント”は南の国に行く障壁なのである。

 


「モンジョがしびれを切らしたなあ」

 エルザードが、言った。

 最近の関係悪化に、“アールヴ”はモンジョの船の通行料を上げた。


「で、“アマテラス”に命令が出た」

「今、都市、“ミズラ”にモンジョの艦船が続々と集まっているらしい」

「潜砂艦“アマテラス”の隠密ステルス性と、飛行艇を生かしての偵察任務だ」

 エルザードが、腕を組んだ。


「それと、クルック君と“ヨモツヒラサカ”、いや“イザナギ”は“アマテラス”に乗ってもらう」

 モンジョの王都で起こったことは、アールヴ王にも説明した。


「わかりました」

 クルックが答えた。  


「それと、ローズキャラバンはこのまま都市にとどまってくれ」


「わかったよ」

 砂漠では、“砂漠で拾ったものは拾い主のものである”、という不文律がある。

 これは人間にも当てはまる。

 砂漠は、過酷だ。

 拾った人間分の水と食料の負担で、キャラバンが全滅することもあるのだ。

 クルックと“ヨモツヒラサカ”は、ローズキャラバンが拾ったことにしていた。

 事態が落ち着いてから話をするだろう。


「待ってくれ」

「フィッダはどうする」

 クルックが大声で聞いた。


「……行くよ……」

「クルックと一緒に」

「多分、奴隷狩り(マンハンター)とオチホキャラバンもいるんでしょう」

 フィッダがクルックを、じっと見つめた。


「……わかった……」

「必ず、俺がフィッダを守る」

 クルックが小さく言った。


「協力感謝する」

 フィッダは、軍に関係のない民間人だ。

 エルザードが、フィッダに頭を下げた。


 潜砂艦、“アマテラス”は偵察のため、都市“モント”を出港する。

 今まで来た道を、またすぐに戻ることになった。



 青い月明かりが奇麗な夜だ。

 砂漠の向こうに、国境の都市『ミズラ』の黒いシルエットが見えた。

 都市の周りには、船の窓から漏れていると思われる明かりが、沢山見える。


 潜砂艦“アマテラス”は、都市の近くに浮上していた。


「“イザナミ”、出撃します」

「行ってきます」

 イオリとファラクだ。

 夜間偵察だ。


「気を付けて」

「くれぐれも、無理をしないように」


「了解」

   

 シュパアア


 イオリは、なるべく音を出さないように、“イザナミ”を“アマテラス”から離艦させた。

 “イザナミ”で5分くらい飛ぶと、都市の上空まで来た。

 可変翼を全開にし、ジェット炎をなるべく出さないように飛行する。


「しっかり見よう」


「うん」


 二人は、艦船の大きさと数、補給物資の量などを、可能な限り確認した。

 



「んん、あれはなんだ?」

 見張り台の見張りが、隣の同僚に言った。

「鳥か?」


「こんな夜中の、しかも砂嵐の季節に鳥なんかいるもんか」

「気のせいだよ」

 同僚が答える。


「……そうだな」

 他にも飛行艇“イザナミ”に気付いた人間はいたが、飛行艇自体を知らないため報告には至らなかった。




 クルックの飛行艇“イザナギ”(元“ヨモツヒラサカ”)と交代で夜間偵察を繰り返した。


 潜砂艦“アマテラス”は、三日間滞在し、都市“モント”へ引き返した。 


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