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飛行艇を愛でていたら、砂漠の踊り子さんに愛でられることになったのです。熱砂の潜砂艦物語  作者: トウフキヌゴシ
アマテラス

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第三十二話、ケムリ

 周りは日が暮れて、薄闇になりつつある。


「前方、照明弾っ」

「ローズキャラバンのキャラバン船です」

「空から何かが下りてきました」

 部下が双眼鏡で確認する。


「ヨ、”ヨモツヒラサカ“だ」

「こ、壊せっ」

「早く、アレを壊すんだあ」

 カスマールが言った。

 目つきがおかしい。


「ふんっ」

 ”ヨモツヒラサカ“の襲撃の時に、魔紋に侵されて部下が十人、廃人になっている。

  奴隷狩り(マンハンター)のカシラである、”デスバト“も悪夢を見るようになった。


「……やはり、この航路にいたか」

 デスバトが言った。

 今はあまり使われない航路だが^アールヴ”には、最短距離で行ける。 


「ギールにも伝えろ」

「全艦、全速前進」

 デスバトは、ドウケンクラスの艦橋から命令を出した。

――オチホの船と船足は一緒だが、飛行艇分重くなる


「……“アールヴ”の国境までには追い付くか……」 

 デスバトが双眼鏡を覗きながらつぶやいた。





――やはり一緒に始末しておくべきだった

 ギールは、フィッダを思いうかべる。

――僕の船の船巫女になるのを断りやがった

 イナホキャラバンで見習いをしていた時から、フィッダに思いを寄せていたのである。

 結局、イナホキャラバンの代表である、父親の船に船巫女になった。


「前方にローズキャラバンがいます」

 無線で、デスバトから指示が来た。


「全速前進」

 何も荷物を載せず、軽くしてきた。

 ローズキャラバンより早いはずだ。


「……この航路か……」

 ギールがイナホキャラバンを、この航路を使うように言って、デスバトに襲わせたのだ。

「父親の元に送ってやるよ」

 ギールは考え込むように腕を組んだ。 



「うーむ、このままだと追いつかれるねえ」

 ローズヒップが地図を見ながら言った。

 ローズキャラバンのキャラバン船は、昼夜を問わず航行中だ。

 キャラバンである以上、盗賊や砂賊に対抗するための武装はある。

「でも、ドウケンクラスなんだよねえ」

 足が速い。

 ある程度距離を詰められたら、一気に前に出られてオチホの船と挟み撃ちにされる。


「煙玉はあるか」

 後ろから声がした。


「クルック、もういいのかい?」

 振り向くと、上着を肩から掛けたクルックが立っていた。

 フィッダが、腕を持って支えている。


「なんとかな」

「でだ、」

「飛行艇で飛んで、目くらましをして来てやろう」

 煙玉は、巨獣や魔獣から逃げるときに使う煙幕だ。

 

「飛べるのかい?」

 心配そうな声だ。


「無理はしない」

 隣のフィッダもうなずく。


「わかった、頼む、ドウケンクラスのバリスタに気を付けるんだよっ」

 ローズヒップは、答えた。



 クルックは、飛行甲板まで来た。

 飛行艇“ヨモツヒラサカ”の機体を優しく撫でる。

 手の甲に、鈍色の目の模様の魔紋が出ていた。


「クルック、多分だけど……」


「あなたがこの子の、“船主”で、私が“船巫女”よ」

 普通ならありえない 


 魔紋が限りなく黒に近いが、鈍く銀色に輝く。


「そうだな」

 クルックがうなずいた。


「嫌か?」

 そっとフィッダの頬に手を当てる。


 フィッダは、クルックの手に自分の手を重ね、ゆっくりと首を横に振った。


「行こうっ」

「うんっ」


 二人は、“ヨモツヒラサカ”に乗り込み大空へ舞った。



 可変翼を半ば閉じて、飛行艇“ヨモツヒラサカ”が砂の上を飛ぶ。

 砂上船では、距離は離れているが、飛行艇では一瞬である。

 キャノピーは、これからすることを考えて、開かれている。


「あそこっ」

 ケイヤクをしてから、フィッダは“ヨモツヒラサカ”の()()()()ようになった。


 二船がいた。

 上空をフライパス。

 船首に、落ち穂の意匠を確認した。 


 ビュウウウン


「むうう」

 クルックがうなる。

 ズキリと背中が痛む。


 1メトルくらいの鉄の矢が飛んできた。

 バリスタだ。

 そうそう当たるものではないが、被害は出るだろう。


 二船の後ろで“ヨモツヒラサカ”を旋回させる。


「(二船の)間を飛ぶ、合図したら落としてくれっ」

 後部座席のフィッダに声をかけた。


「わかった」

 フィッダは、両手に煙玉を用意した。


「いくぞっ」


「うんっ」


 二船の間を、ローパス。

 可変翼を全開にして横を向けた。


 ビュン、ビュビュン


 バリスタの矢が飛んで来る。


「今っっ」


 フィッダが、煙玉を落とした。


 バシュウウウウウ


 落ちた瞬間に、辺りの煙が立ち込める。


 二人はそのまま、ローズキャラバンの方へ飛び去った。

 

 

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