第二話、ファラク
ファラク:意味、アラブ語で”丘”
少し離れた空を、”飛行艇空母”が飛んでいる。
”ハナゾノ帝国”の方から来たようだ。
◆
”新型飛行艇空母、如月級ネームシップ、キサラギ”
”ムツキ級飛竜空母“を元に新造された飛行艦である。
艦体横に、ティルトローターのプロペラが左右に四機。
後ろに魔術式ジェットを×字状に四機搭載。
王立工廠の特色である、大事なものを真ん中に集めて装甲で守る、シタデル構造。
しかし、飛行艇の格納スペースを確保するために装甲を減らされている。
5機の飛行艇を搭載可能になった。
◆
「カティサーク工廠、着艦許可を求む~」
艦長帽を被り、レンマ王国空軍教導部隊仕様の、侍女服を着た少女が言った。
少女のような姿だが、彼女はハーフエルフだ。
見た目通りの年齢ではない。
空母”キサラギ”の飛行甲板の、島型艦橋の艦長席に座っていた。
「2番ドッグに着艦どうぞ」
「おかえりなさい、メルル―テ大佐」
「魔術学園はどうでしたか」
”ハナゾノ帝国”にある魔術学園から、ある荷物を載せて帰ってきたのだ。
「おもしろかったよ~」
「艦長」
整備服を着た20代半ばの男が、声をかける。
「なに~、イナバ整備長」
「もうファラクさんは、こちらについてるんでしょう」
ちなみに、メルル―テとイナバは、夫婦である。
「別便で来てるはずだよ~」
「……やはり彼女は、イオリを選びますかね」
イナバが顎をさすった。
「ん~、多分」
「船巫女か~」
「まあ、彼は飛行艇に魅入られてますからね」
「機体には、魔紋はしっかり定着したから」
特殊な機体を、ハナゾノ帝国の”魔術学園”から運んできた。
”キサラギ”が二番ドッグに着艦した。
「ついていくと思う、砂漠に〜」
ファラクは、砂漠出身。
彼女に、選ばれると、一緒に砂漠に行くことになる。
「イオリ少尉は、確実に、飛行艇”イザナミ”について行くと思う」
イナバは、艦長席から立とうとするメルル―テの手を取り、優しく支えた。
◆
新型砂上用飛行艇、”イザナミ”
魔術学園から運んできた特殊な機体だ。
パイロットの候補者は二名いた。
一人は、”イオリ・ミナト”
レンマ王国空軍教導部少尉。
実家は、辺境伯である。
もう一人は、”クルック・エンバー”。
カティサーク工廠のテストパイロット。
”エンバー伯爵家”の令息だ。
二人は、飛行艇空母”キサラギ”の格納庫に呼び出された。
「ファラクの準備が出来たようだよ」
イナバ整備長だ。
「新型飛行艇は僕のものでしょ」
「ついでに、砂漠の女も貰っといてあげるよ」
クルックが、こ太りなお腹をさすった。
残りの三人を見下すように見る。
「そこの小娘え、案内しろお」
ちなみに、ハーフエルフであるメルル―テ大佐は、御年85歳になる。
メルル―テとイナバは、ぽかんとした表情でクルックを見た。
「えーと~」
「新型飛行艇?」
イオリは、上の言葉以外聞いていないようだ。
◆
格納庫には、踊り子の衣装をまとったファラクが、跪いていた。
褐色の肌に、銀色の模様、”魔紋“が描かれている。
背後には、飛行艇が、機首をこちらに向けて置かれていた。
”ホウセンカ”よりも大きめの機体。
複座式のコックピット。
機体とフロート部は、なだらかな曲線を描いて繋がっている。
フロート部は、前と後ろがなだらかなカーブを描いて、横に少し広がっている。
機体前部には、垂直離発着用の小型ジェット一機。
機体後部には、縦に魔術式ジェットが二機。(双発)
機首近くには、カナード翼。
垂直尾翼は装備されていない。
「か、可変翼後退機……っ」
イオリが、熱にうなされたような声を出した。
「熱砂漠用、可変翼飛行艇、”イザナミ”」
「これがこの船《私》の名前です」
ファラクは、うつむいたまま言った。
「”コトハジメノマイ”、ご照覧あれ」
シャララン
手首や腰につけた、小さな鈴がぶつかり涼やかな音を立てた。
メルルーテは前作の準主人公。
ハーフエルフの国シルルート出身。
シルルート空軍の共同部隊の創設に関わった、ウルトラエース。
近接格闘も強い。
イナバも前作の準主人公。
表の顔は、整備士だが、裏の顔は優秀な“オンミツである。
仲の良い夫婦。
子供は三人いる。




