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飛行艇を愛でていたら、砂漠の踊り子さんに愛でられることになったのです。熱砂の潜砂艦物語  作者: トウフキヌゴシ
アマテラス

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第二十六話、フィッダ

フィッダ:意味、アラブ語で”銀”

 潜砂艦、“アマテラス”は、アールヴの首都、“サーハリ”を目指して航行中である。 


 砂嵐だ。 

 砂嵐が近づいてくる。


「大きいっ」

 イオリが大声を出した。


「初めて見るの?」

 ファラクが聞いた。


「そうだよ、すごいっ」

 イオリが目を輝かせている。

 飛行甲板の上に、二人は出ていた。


「おーい、そろそろ中に入ってくれ」

「潜行するぞ」


「わかりました」

 二人は、飛行艇、“イザナミ”の格納庫の中に入った。

 分厚い扉を閉める。


「マクレガー女史」

 イオリは、自分の師匠ともいえる女性に声をかけた。


「よう、イオリ、砂嵐を見るのははじめてか?」


「そうです」


「そうか、初めて見たときはびっくりするよな」

「砂上船は砂嵐で船体が、半ば砂に埋まってしまうんだぞ」

 マリア・マクレガーは格納庫に、飛行艇、“イザナミ”を見に来ていた。 


「そうよ~」

 後ろにいた、ファラクが頷いた。


「あっ、それでですか、潜砂艦を作ったのは」

 イオリがマリアを見た。


「そうだよ、どうせ埋まるんならそのまま砂の中を移動できないかな~と思ってね」

 

 潜砂艦“アマテラス”の潜行が終わった。


 ザンザンザン


 スクリューが砂を切る振動が伝わってくる。

 前進を始めたようだ、

 少し傾いて揺れた。


「ふふ、だいぶ慣れたのね~」

 ファラクが横目でからかうようにイオリを見た。

 イオリは、砂の中に埋まるのを怖がって、布団を頭から被って震えていたのだ。


「いやあ~、メカニズムというか、仕組みが分かると不安が無くなって~」

 イオリが頭をかきながら言った。


「うんうん、そうだろう、そうだろう」

 マリアが、腕を組んで頷いていた。

 

 二人は、“イザナミ”について熱く語り始めた。

 

 同類??

 イオリとマリアの二人を交互に見ながらファラクは思った。

 似たもの同士の子弟なのだ。



 砂嵐が過ぎた後、快晴である。


「かわいそうな子」

 銀髪の踊り子が、飛行艇、“ヨモツヒラサカ“に手を当てて言った。

 キャラバン船の甲板だ。

 飛行艇、”ヨモツヒラサカ“がシートを被され、ロープで固定されている。


「おまえは……?」

 クルックが聞いた。

 

「フィッダ」

 深紅の瞳が、チラリとクルックを見る。

「とてもいびつ」

 視線を”ヨモツヒラサカ“に戻す。

「何か大事なものが欠けてる」


 手を当て続けている。

「……そう、探してるのね……」


「何を言ってる」


「船巫女は、船にとって”母“みたいなもの」

「この子は、”母“がわからない」

 だから、探しているの


 飛行艇”ヨモツヒラサカ“は、船巫女なしで魔紋を操ろうとして、失敗した機体だ。


「”母“がわからない」

 クルックの胸に深く突き刺さる。

 小さいころから母はいないと言われてきた。


「この子は、死んでもいないし、生きてもいないわ」

「……まるで、黄泉に通ずる道(ヨモツヒラサカ)の途中にいるみたい……」

 小さなつぶやきは、砂漠の風の中に消えた。



 その後、飛行艇、”ヨモツヒラサカ“から、シートとロープを外した。


 フィッダと名乗った女性は、何も言わず”ヨモツヒラサカ“の副操縦席に潜り込んだ。

 ここには船巫女なしで魔紋を操る為の魔術陣が、描かれているはずだ。


「おいっ」

 クルックが声を出した。

 

 フィッダは、瞑想するように目をつむり、何も答えなかった。


「気に入られたねっ」

 振り向くと、”ローズヒップ“が立っている。

 この船の船長だ。

 ちょいちょいと手招きした。


 クルックとローズヒップは、船長室に移動した。

 

「あの目の様な黒い魔紋を見てから、こうなるような気はしてたんだよ」

 

「うん」

 クルックは、渡されたコーヒーを一口すする。


「”イマワミ“って知ってるかい?」

 ローズヒップも自分のコーヒーをすする。


「船巫女が、船と船主を亡くす、だったっけ?」


「そう、魔紋の契約を解除せずにね」


 魔紋が漆黒に変わる。

 この状態を”イマワミ“という。


「フィッダはね、”イナホ“キャラバンの船の船巫女だったんだ」

「船主は、彼女の父親さ」

 コーヒーカップを見つめる。


「私が駆け出しのころお世話になってね」

「他に二隻、船を持ってた」


「でもっ、砂漠の盗賊に襲われたらしい」

「三隻の内、二隻は沈められたそうだ」

「で、一隻逃げてきた船に、”イマワミコ“になったフィッダが乗っていたよ」


「ここまではいいかい」

 

「ああ」

 コーヒーは冷めてしまった。 


「その残った一隻の船長が評判の悪い男でねえ」

「フィッダが虐待されてるってんで、慌ててうちに引き取ったんだよ」


「そこでだ」

 クルックに顔を寄せ、小声になる。

「この男は、フィッダの親父さんをはめたんじゃないかという噂がある」


()()()()をするかしないかで揉めていたそうだ」


「今は、”オチホ“キャラバンと名を変えて、違法の奴隷狩りをしてるらしいよ」


「なっ」

――”オチホ“


 クルックは、エンバー家の紹介状の手紙の内容を思い出す。


 奴隷売買の取引先は、”オチホ“キャラバンと書かれていたはずだ。

 

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